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「双龍(サンヨン)自動車はもう一つのルツボ…23番目の犠牲防がねば」

原文入力:2012.05.06 21:02修正:2012.05.06 21:02(2278字)


 
←小説家コン・ジヨン(中央)と詩人トン・ギョンドン(右側)、そして双龍(サンヨン)自動車解雇労働者イ・チャングン氏が、双龍車報告書を一緒に書くことにして、去る1日夕方、大漢門(テハンムン)前の双龍自動車犠牲者合同焼香所の前でポーズを取っている。 写真チョン・テギョン提供


今月報告書出すコン・ジヨン氏
「敵の実体が不明解になるや、敵意を自らに向けて自殺」
ソン・ギョンドン、イ・チャングン氏と協同作業
執筆・製作全てがボランティア


 作家コン・ジヨンが、先月30日に22番目の犠牲者を生んだ双龍(サンヨン)自動車解雇労働者連鎖自殺事態を報告書として書く。 コン・ジヨンは詩人ソン・ギョンドン、双龍自動車解雇労働者出身のイ・チャングン氏とともに、第19代定期国会が開かれる今月30日以前に報告書を仕上げて単行本として出版する計画だ。

 去る1日のメーデー集会の行なわれているソウル広場で会ったコン・ジヨンは「2009年6月に出した<ルツボ>以後およそ3年ぶりに次に書く小説のために必要な国内外の取材をみな終えた状態だったが、双龍自動車の事態がまさにもう一つの“ルツボ”(訳注:聴覚障害児童の学校で起こった教師たちによる性暴行事件及びその裁判を告発したコン・ジヨンの小説のタイトルであり、映画化もされた)だという思いに、そちらはひとまず後回しにした」として「なんとしても23番目の犠牲者を未然に防がなければならないという思いにとても急かれます」と語った。


 『いったいその時彼らに何が起こったのか』(仮題)という題の報告書は、双龍(サンヨン)自動車の事態の直接間接の当事者三人の協同作業で準備される。 自らも双龍自動車解雇労働者である心理治癒空間「ワラク」のイ・チャングン企画チーム長は、双龍車労働者の視線で亡くなった人たちの身上と周辺環境、内部日誌などを提供する。 ソン・ギョンドン詩人は双龍自動車の事態に関するマスコミの報道と労働界全体の脈絡の中でこの事態が持つ意味と輪郭を整理し、このようにして作成された一次資料をコン・ジヨンが作家的感受性をもってドキュメンタリー形式で叙述する予定だ。


 コン・ジヨンは先月16日「双龍(サンヨン)自動車事態解決のための文化芸術家宣言」に参加するとともに双龍車事態に積極的に介入し始めた。 これに先立ち彼女は、2010年4月と昨年2月に双龍(サンヨン)自動車の解雇労働者夫婦が相次いで亡くなった後、残された子供たちを助けるために500万ウォンのカンパを送ったこともある。 彼女はソウル市大漢門(テハンムン)の前に設けられた双龍車犠牲者合同焼香所にほとんど毎日まるで出勤するように通って座り込みに参加する一方、喪主と座り込み参加者に食事を提供し必要な物品を供給するなど、自分の事のように一生懸命になっている。


 「私が見るには、双龍(サンヨン)車の事態は非常にモダンな側面を持っています。 敵の実体がないという点でそうです。 韓進重工業事態にしても、チョ・ナモ会長という相手がはっきりしていました。 ところが双龍(サンヨン)車の事態は資本の複雑な国際的流れ、そして労働者内部の葛藤と分裂の中で展開された状況なので、敵が誰なのかが不明確になってしまったのです。 犠牲者たちは始めは会社の救社隊を敵とみなし、それから闘争戦線から離脱したり警察に密告した同僚労働者へと敵意が移って行って、最後にはその敵意を自分自身に向け、その結果、自殺を選ぶことになります。」


 コン・ジヨンは「いわゆる偽装就業者として工場労働を体験した1987年以降、現場労働者にこのように近くで接したことは初めて」として「私の文章の長所を最大限生かして、最も分かりやすく双龍自動車の事態を伝えたい」と話した。 イ・チャングン チーム長は「双龍自動車解雇労働者にとってコン・ジヨン作家の参加は、季節が冬から春に変わったことくらいに心のときめきを感じさせると同時に、強い援軍を得たような心強さを与える」として「これまでチョン・ヘシンとキム・ジェドンのような社会的名望家が私たちの話を聞いてくれたとすれば、コン・ジヨン作家は私たちの話を代わりに伝える役割をしてくれると期待している」と話した。


 一方、今回の双龍(サンヨン)自動車報告書は執筆から製作に至る全過程をボランティアで充当することにした。 コン・ジヨンをはじめとする執筆陣が原稿料や印税を受け取らないのはもちろんのこと、編集とデザイン、印刷、製本、そして電子ブック製作までを全部ツイッターを通して募集したボランティアメンバーが引き受けることにした。 挿絵もやはり漫画家チェ・ギュソクが無料で描いてくれることになったとコン・ジヨンは伝えた。


 ソン・ギョンドン詩人は「韓進重工業の“希望のバス”以後にも双龍(サンヨン)自動車の事態とクロムビ破壊(チェジュの海軍基地建設強行)が続くのを見ると、この世から逃げてしまいたい気がするほどだ」と言い、「しかし、現実においては絶望しても歴史においては楽観しなければならないという確信でもって闘いを継いでいっている」と語った。


チェ・ジェボン先任記者bong@hani.co.kr


原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/531489.html 訳A.K