本文に移動

奇跡を待たない朝鮮半島の外交・安全保障【寄稿】

キム・ジョンソプ|世宗研究所長
有事の際の朝鮮半島防衛のための定例の韓米合同演習「乙支フリーダムシールド」が早期に終了した先月21日、京畿道平沢市のキャンプ・ハンフリーズに米軍のヘリ「チヌーク」と「アパッチ」が待機している/聯合ニュース

 1961年8月12日の夜、東ドイツは極秘裏に兵力を投入し、西ベルリンとの境界に鉄条網とバリケードを設置しはじめた。翌朝、市民が目を覚ました時、昨日まで自由に行き来できていた道は塞がれていた。鉄条網はすぐに高さ3.6メートルのコンクリートの壁に変わった。冷戦とドイツ分断を象徴するベルリンの壁はこうして築かれた。自由を渇望する人々を閉じ込めた巨大な監獄であり、社会主義体制の失敗を象徴するものだった。

 しかし時がたつにつれ、壁に対する別の視点も登場した。米国の外交官であり経済学者であったジョン・ケネス・ガルブレイスは、ベルリンの壁を「デタントの柱」と呼んだ。「私は、壁は良いものだと思う。いずれにせよ、それによって平和が保たれている」というのだ。

 1961年のベルリン危機と翌年のキューバ危機を経て、米国のケネディ政権はソ連との関係をデタント基調に転換した。冷戦を安定的に管理するため、東西ドイツの分断の固定化を受け入れる「現象の凍結」に重点を置いたのだ。西ドイツでもこのような現実的な考え方をする人物がいた。その代表的な人物が、後に「東方外交」を展開したブラント首相の側近、エゴン・バールだ。バールは「憎むべき東ドイツ政権と交渉しなければならないという現実」を受け入れ、分断の苦しみをやわらげコストを抑えるために「接近を通じた変化」を追求すべきだと主張した。

 東ドイツ政権の合法性を認めない「ハルシュタイン原則」に固執していた西ドイツのアデナウアー政権は、これに反発した。東ドイツの外交的承認と東ドイツとの和解は統一を難しくする、というのがその理由だった。しかし、西ドイツとワシントンの対立が深まる中、アデナウアーが目指していた「力による現状変更」政策は西側のデタント基調と衝突し、力を失った。それに取って代わったものこそ、分断の現実を認めながら変化を模索する東方外交だった。

 朝鮮半島情勢も、ここ数年で根本的に変化した。北朝鮮は「敵対的二国家論」を掲げ、休戦ライン一帯を実質的な国境線へと変えつつある。軍事境界線一帯に鉄条網や防壁を設置し、地雷を埋設するなど、恒久的な要塞化作業を進めている。南朝鮮の革命と統一を放棄し、防衛用の壁を築くという北朝鮮の態度は、敵対的であるという点では懸念されるが、国際政治的な観点からみれば、本質的には現状維持を選択したものだ。

 非核化をめぐる環境も大きく悪化した。ロシアは北朝鮮の核問題のことを「終結したイシュー」だと主張しつつ、北朝鮮をあからさまに擁護しており、中国も北朝鮮の核問題への言及を控え、事実上黙認する態度を示している。加えて米国のトランプ大統領も、北朝鮮が核兵器を保有しているという現実を認めるようなシグナルを何度も発している。「57発の強力な核兵器」を保有する北朝鮮と仲良くやっていくことは良いことだと述べつつ、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に融和的なメッセージを送っている。

 韓米合同演習の突然の縮小にも当惑させられる。開始日に、トランプ大統領の一言で、計画されていた演習が半分に減ったのだ。同盟国に対する尊重がないのはもちろん、米国の朝鮮半島防衛公約に対する疑念を刺激する行為だった。

 では、韓国はどうすべきか。統一と非核化は朝鮮半島の問題であると同時に国際的な問題でもある。国際情勢や大国の利害関係から切り離されたアプローチは成功が困難だ。「北朝鮮の核をひとまず凍結」することを強調する李在明(イ・ジェミョン)政権の段階的アプローチは、この点でより現実的だ。しかし、凍結という第一段階も決して容易な課題ではない。北朝鮮に核物質の生産と核弾頭の増強をやめさせるためには、原則的な構想にとどまらず北朝鮮を引きつける具体的な戦略が必要だ。韓米合同演習の縮小も、ため息をついたり懸念したりしてばかりはいられない。米国は明らかに変わりつつある。今や通常兵器による抑止に関しては韓国がほぼ全責任を負う覚悟で、能力と体制を再整備しなければならない。

 朝鮮半島の統一、北朝鮮の非核化、鉄壁の韓米連合防衛はいずれも重要な価値だ。しかし、現実の変化の中で理想的な目標と過去の政策ばかりに固執するのは、責任ある姿勢ではない。エゴン・バールは前任のアデナウアー政権の政策を批判しつつ、「奇跡を待つべきだという話だが、それが政策だと言えるのか」と問うている。今、韓国にも同じことが問われている。今こそ、現実を認めつつも、その中で変化を生み出そうという意志と知恵が必要だ。

//ハンギョレ新聞社

キム・ジョンソプ|世宗研究所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1276670.html韓国語原文入力:2026-09-07 19:11
訳D.K

関連記事