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韓国の若者たちの「盗まれた最初の怒り」【コラム】

パン・ジュンホ|イシューチーム長
統一地方選挙の投票用紙不足事態をきっかけとした蚕室の「開票所封鎖デモ」が続く今月17日午後のソウル市松坡区のオリンピック公園ハンドボール競技場前。太極旗を掲げた市民が「不正選挙再選挙」、「当日投票手開票」などのスローガンを叫んでいる=チェ・ヒョンス記者//ハンギョレ新聞社

 「言いたい気持ちと自分の存在を表現したい気持ちがあって、普段よりあまり恥ずかしさを感じない」

 イタリアの作家エレナ・フェッランテの小説『ナポリの物語』四部作の第2巻『新しい名前』だったか、主人公レヌーが社会に対する「初めての怒り」を語る瞬間が描かれている。後日談を描いている同作は、多少の冷笑を交えてかつてを振り返るが、かといって価値のない記憶であるはずがない。誰もが、そして私もまた、初めての怒りをそう語った。表に出したいという欲望が話の内容よりも先走って焦ったし、どこかで聞いたような話を組み合わせた文章がまとまっていないような気がして緊張したものだ。そして私の話に誰かがうなずいてくれた瞬間、世界の主演の座を射止めたような気持ちになった。うなずき合いながら、怒りは共に育まれていった。そんな初めての怒りが集まって、ある時、本当に世の中をひっくり返したと聞いた。実際には、ほとんどが空虚なこだまに終わってしまった記憶だ。

 「初めて」だという人が非常に多い。オリンピック公園のデモを取材する記者たちは、怪訝(けげん)な表情でそう語ってくれた。インスタグラムには顔に太極旗を描き、スケッチブックに記した手書きのスローガンを掲げた「感度の高い」写真が投稿されている。それまでのストーリーが日常と旅行の一面を伝える美しいものばかりなのを見ると、今回が世に対する初めての怒りであることは疑いようがなかった。フィルターのかけられた写真と洗練された服装は異質に感じられたが、語りたい、存在を示したいという気持ちは、よく知っているそれと変わりない。「自由大韓民国を守りたい」という訴えの下には、#民主化運動、#滅共、#不正選挙といったタグが主に付いている。

 民主主義の最も重要な手続きである投票の権利の侵害は、初めての怒りに火をつけるに値する対象だった。不平等が固定化した2010年代以降、若者が一貫して叫んでいたスローガンが「手続きの公正」だったことを考えると、それなりの文脈と拡大、ある意味では飛躍の余地もあった。言説の中で常に脇役にとどまってきた若者に少しでも心を寄せてきた人であれば、喜んでそばでうなずくべきだった。残念ながら、初めての怒りはすぐに見当違いの方向へと向かっていった。

 怒りが立たされた場は複雑だった。その場をまず占領したのは、たった1年6カ月前に若者はもちろんすべての市民を危機に陥れた妄想だった。「本投票で用紙不足が発生し、一部の市民が投票できなかった」事態が、「中国共産党がコンピュータを操作して事前投票に介入」した不正選挙の証拠へと、あっさりとすり替わってしまっていた。選挙管理委員会、投票、不備や不正といった似たような単語があれよあれよという間にごちゃ混ぜにされていった。そのさなかに、論理的な飛躍をさらに荒唐無稽な陰謀論(中国人のために作られた投票用紙が急きょ回収されたため、不足事態が発生した)で埋める話まで出回ったという。

 初めての怒りは盗まれた。無能さをさらけ出した既得権勢力、けん制されることのない腐敗に対して怒りをぶつける機会を、ある若者は失った。先進国だというこの国には、なぜこんなにもあきれるほど多くの穴があいているのか。手続きすら公正でないのに、何を期待して努力しろというのか。それが問えなかった。「スパイ」だと攻撃され、「全羅道、民主労総は嫌いです」(カカオトークのグループチャットルームのあるメンバー)という絶望的な言い訳を繰り返すしかなかった。与党は真っ当な初めての怒りを陰謀論と区別しようと苦悩してすらいないようだし、野党はこの混乱を楽しんでいるようにみえる。

 オリンピック公園デモが始まって、いつの間にか1カ月がたとうとしている。その間にうなずいてくれる人を見つけたある種の初めての怒りは、さらに猛烈になっていることだろう。「ストップ・ザ・スティール」を世の中で最も重要な使命だと心に決めているかもしれない。オリンピック公園で警察官を暴行して拘束されたある女性(彼女は40代だった)は、法廷に入ってくる瞬間でさえ「不正選挙再選挙」を叫んでいた。認められた怒りは社会的にも、1人の人間の人生においても、それほどしつこいものなのだ。

 怒りはまた、限りなく弱い。ある初めての怒りは、一緒にうなずいてくれる誰かを見つけられず、再び縮こまってしまっていることだろう。慣れ親しんだ場所、世界の脇役へと戻っていったのだろう。混乱したオリンピック公園で、私たちはどんな危険を育み、どんな可能性を失ったのか、真剣に振り返る声は、まだ小さい。

//ハンギョレ新聞社

パン・ジュンホ|イシューチーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1265730.html韓国語原文入力:2026-06-28 18:52
訳D.K

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