ヘンリー・キッシンジャーは20世紀の偉大な外交官の一人になる前に、オーストリアの政治家、クレメンス・フォン・メッテルニヒに関する論文を書いた。キッシンジャーは、メッテルニヒのような欧州の外交官がナポレオンの敗北後にどのように新たな地域秩序を構築したかを綿密に研究した。メッテルニヒはかつて「猫の群れを集める」(扱いにくい集団をコントロールすること)といった高度な外交的手腕の専門家であり、ここで猫たちとはまさに強力な欧州の指導者たちだった。
キッシンジャーはこの洞察に基づき、リチャード・ニクソン大統領のもとで国家安全保障顧問として在任中に、中国とのデタントやソ連との多数の軍備管理条約の締結を率いた。また、中東の敵対感を和らげるために「シャトル外交」を導入した。ベトナム戦争の終結に向けた交渉に貢献した功績により、ノーベル平和賞も共同受賞した。
キッシンジャーは決して平和主義者ではなかった。多数の軍事介入や道徳的に正当化できない行為にも関与した。大物外交官であると同時に、戦犯でもあった。
米国は長年にわたり、次の二つの方式で世界を運営してきた。圧倒的な軍事力を投入することと、外交的手腕で平和協定を仲介することだ。この二つの戦略は、キッシンジャーの場合と同様に、しばしば連携して機能してきた。ところが、この手法は今や荒々しく、透明なほど残忍なものへと変わってしまった。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がドナルド・トランプ大統領のイランに対する和平提案を支持するかという質問に、首相の外交政策顧問であるオフィール・ファルク氏は簡潔に答えた。「我々は爆弾で交渉している」
この短い発言からネタニヤフ首相とトランプ大統領双方のアプローチがうかがえる。彼らは交渉の価値を語るときでさえ、外交には関心がない。時間とある程度の繊細さが求められる交渉は、彼らにとってエネルギーの無駄にすぎない。
イスラエルは優れた交渉者や機敏な仲裁者を標榜したことがない。一方、米国は、長年にわたり交渉を成立させる経験、関係、経済・軍事的影響力を有していると主張してきた。米国は北アイルランド、旧ユーゴスラビア、エジプトとイスラエル間の紛争などで、紛争解決の中心的な役割を果たしてきた。トランプ大統領は表向きにはその伝統を継ぐと約束しているように見える。
しかし実際、トランプ大統領は決して優れた交渉者ではなかった。事業パートナーを騙して利益を得ることで悪名が高かった。その経歴にはトランプ航空、トランプ大学、トランプ・マガジンといった失敗した事業が後を絶たない。
トランプ大統領の外交交渉が事業同様に虚構であることだけが問題ではない。むしろ米国外交全体を事実上、企業回生状態に追い込んでいる。トランプ大統領がイランとの交渉中に攻撃を決めてから、いかなる国にも米国外交官の言葉を信頼する理由がなくなった。外交とは信頼がすべてだ。
トランプ大統領は、(米国を)以前の状態にある程度回復させることができたはずの外交官集団さえも完全に崩壊させた。昨年7月、トランプ政権は約250人の外交官を含む1300人の国務省職員を解雇した。彼らの中にはホルムズ海峡が封鎖された場合のシナリオを研究していた中東の専門家たちも含まれていた。同時にトランプ大統領は軍事支出を1兆ドルに増やし、さらに50%増の1兆5千億ドルを要請した。これは財政面で「爆弾で交渉する」ことに当たる。今や米国が外交を遂行するために残された唯一の手段は、事実上「爆弾」のみになった。
米国がもはや外交的選択肢を追求しない限り、最後の手段ではなく、最優先手段として武力に依存し続けるだろう。それは外交的知識を欠いたキッシンジャーのようなものだ。アメではなく、ムチだけが残ることになる。残された唯一の質問は、残りの世界が外交的手腕をいかに保ち、爆弾で交渉する現在の傾向を回避できるかだ。