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「きれいな言葉」米国ドラマをめぐる断想【寄稿】

登録:2026-03-05 07:48 修正:2026-03-05 09:49
ロバート・ファウザー|言語学者
ゲッティイメージズバンク//ハンギョレ新聞社

 今年の冬、私が住む米国のロードアイランドは例年より寒さが厳しく、降雪も多かった。道路には雪が厚く積もり、散歩などの屋外での活動も難しかった。おかげで、ため込んでいた昔の映画やドラマを思う存分に視聴することができた。

 あるドラマの時代背景は1960年代初頭だった。主人公が高校教師だったため、学校の場面が頻繁に登場した。男性の校長は教師を呼ぶときには、名前の前に「ミス」または「ミスター」を付け、教師たちは男性の校長には「ミスター」を付けて呼び、「サー」(sir)を文末に添えることで、目上の人に対する礼儀を示した。校長と教師の間だけでなく、他の場面でも登場人物の間で「ミス」「ミセス」「ミスター」がよく使われていた。

 1990年代~2010年代半ばに制作された映画やドラマでも、言語の格式はおおむね守られていた。互いを呼ぶときには名前だけを使うが、格式を重んじる態度は残っており、悪口や俗語は強調するためにまれにしか使用されなかった。2010年代後半になると様相が一変した。職場から格式を重んじる呼称はほとんど消え、会話でのスラングが全般的に増えた。このような傾向は、2020年代の作品でより顕著になった。アメリカ英語はなぜこのように変化しているのだろうか。

 一般的な社会言語学の理論では、格式を重んじる表現と謙虚な表現は相互に関係がある。すなわち、格式が必要な状況の場合は、見えない社会的規範に従い、謙虚な表現を用いなければならない。そうしない場合は無礼となり、攻撃の対象になりうる。謙虚な表現は社会的規範を守ることであると同時に、本人の体面を守ることでもある。反対に、あえて格式張らなくてもいい状況において過度に謙虚な表現を使うと、それ自体が互いの間の距離を示したり、攻撃的な意味があるようにみなされたりすることがある。

 どのように表現するのかについては、結局のところ、社会的規範に従うことになる。たとえば、英語では格式を重んじる必要がある状況で、緊張をやわらげるために、多少格式を崩した表現を含むジョークを交わすことがある。イギリス英語では、ジョークを巧みに用いる人を高く評価することがある。

 しかし、格式を重んじなければならない場合とそうでない場合を正確に二分化することは難しい。二つの状況が混在する場面はよくあることだ。そのため、社会的規範に応じ、そのたびに調整しながら対話することになる。時代とともに生じてきた英語の変化は結局のところ、言葉ではなく、社会が定める規範の変化に起因する。ならば、この間に米国社会ではどんなことが起きたのだろうか。

 2010年代の米国社会の最大の変化は世代交代だ。第2次世界大戦直後に生まれたベビーブーム世代が引退し、1980年代に生まれたミレニアル世代が社会に大きな影響を与え始めた。世代が変わり、社会的規範が変わった。

 ベビーブーム世代は、20世紀半ばのブルジョア的価値観が社会的規範に影響を及ぼした時代に生まれ育った。家の外で格式を重んじなければならない場合はもちろん、家のように格式をあえて気にする必要がない場合まで、格式が必要だった。家族間でも呼称をはじめとする言葉に気をつけ、いわゆる「きれいな言葉」を用いた。

 1960年代、ベビーブーム世代が成長するにつれてこのようなブルジョア的価値観は次第に変化し始めた。美徳とみなされていた格式に対する拒否感が次第に生じ、むしろ格式にこだわらないほうが気さくで率直だという認識が広がった。そのころに生まれ育ったミレニアル世代が2010年代に社会に出て世代交代が起きると、社会的規範は急速に格式からはずれた。姓を呼んだり尊称を付けたりせず、名前で呼ぶようになり、スラングを使っても問題にならない世界へと変わった。これに対して、単に言葉が荒くなったと評価するのは浅い考えだ。ブルジョア的価値観の代わりに、包容性の価値観を反映しているようにもみえるからだ。

 アメリカ英語だけでなく、すべての言語の変化は若い世代から始まる。韓国語の社会的規範はどのように変化しているのだろうか。それが知りたいのであれば、今の若い世代の言葉の下に流れる価値観を観察しなければならない。はたして韓国の若い世代は、どのような言葉を使っているのだろうか。その変化は、はたして何を含んでいるのか。彼らが交わす言葉の変化はどこへ向かうのか、それが気になる。

//ハンギョレ新聞社

ロバート・ファウザー|言語学者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1247666.html韓国語原文入力:2026-03-04 18:37
訳M.S

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