このような文章を福祉国家の専攻者が書いてもよいのだろうか。韓国社会はタイトルが権威の根幹となる社会だ。どの大学を出たか、何が専攻なのかによって、同じ発言であっても重みが変わる。そのためか、進歩であれ保守であれ、果ては進歩派のメディアや学者までもが、外国の大学者に韓国の直面する危機の解決策を問うことがよくある。その外国人がノーベル賞受賞者なら、その発言はすなわち真理となる。このような社会において福祉国家の専攻者が成長を論じるのは生意気にみえる。しかし、問いを投げかけることは知識人の本業であり、市民に対する知識人の責務だと信じる。
私の問いは単純だ。韓国は輸出で成長する国なのかというものだ。大半の人は、韓国が輸出で暮らせている国だということをまったく疑っていない。しかし、このような考えは韓国銀行によって発表された資料とはかなり距離がある。「支出項目別の成長への寄与度」をみると、純輸出(輸出額から輸入額を引いた数値)の実質成長率に対する寄与度は、民間消費や投資より概して低い。純輸出の成長への寄与度が最も高かった年は、過去70年で11回に過ぎない。1990年代後半から輸出の重要度は高まったが、民間消費と投資よりは低い。
もちろん、2024年の成長率に対する純輸出の寄与度は実に90%(実質成長率2%に占める純輸出の比重は1.8ポイント)に達し、輸出が成長をけん引した。しかし2024年は内需が深刻な沈滞に陥った例外的な時期だった。相対的に純輸出の成長への寄与度が大きかった李明博(イ・ミョンバク)政権時代も、純輸出の平均寄与度は33.1%で、民間消費は34.3%だった。これに投資と政府支出を加えれば、内需の成長寄与度はさらに高くなる。
李承晩(イ・スンマン)政権から尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に至るまで、各政権の平均純輸出の成長への寄与度が民間消費より高かったことはなかった。韓国経済は民間消費と投資、すなわち内需が引っ張っているということだ。すべての支出項目で輸入の占める比率を差し引く「輸入調整成長寄与度」方式で計算しても、結果は同じだった。韓国人が信頼する(?)外国の学者の研究も似たようなものだ。通念とは異なり、韓国は輸出主導型経済ではなかったのだ。
私の考えでは、問題はここから生じている。成長をけん引しているのは内需であるにもかかわらず、政府の経済政策が輸出中心だったらどうなるだろうか。比較政治経済学において、製造業中心の輸出主導型経済は輸出競争力を確保することが最も重要な政府の課題だ。輸出品が製造業の高品質の製品であっても、輸出は価格に敏感なため生産コストの節減が必要不可欠だ。
熟練労働者の賃金を調整しなければならず、熟練労働者は賃金が調整されても安定した生活ができなければならない。そのためには食堂、清掃、美容などの一般生活サービス、そして保健医療、ケア、住居、福祉などの社会サービスに対する支出を抑えなければならない。サービス業が低賃金雇用であればこそそれは可能となる。彼らに対する福祉も、コスト節減のために資産・所得調査で対象者を選別する公共扶助が中心となるのが一般的だ。財政政策は均衡財政が優先されるため、(価格競争力を脅かす)インフレを抑えるために賃金引き上げと福祉支出が抑制される。中央銀行は物価の安定を図るとともに、実質為替レートを管理して輸出競争力を強化する。産業政策も、内需が中心の中小企業よりも輸出を主導する大企業の支援に集中する。
輸出は重要だ。食糧やエネルギーはもとより部品、素材、設備を輸入してこそ生きていける国で、外貨が稼げる輸出は必要不可欠だ。内需も輸出なしにはまともに回らない。しかし、輸出が必要不可欠だということと、輸出そのものを目的とする経済の政策の方向性はまったく異なる。
この30年間、韓国社会が直面している危機の根源は、内需が中心の経済構造と輸出中心の政策がすれ違ってきたことにあったのかもしれない。内需が中心の経済においては、成長のためには賃金を引き上げ、福祉支出を拡大して平凡な人々の所得を高めなければならないが、輸出中心の政策がそれを抑制してきた可能性があるからだ。良質の雇用が減り続けてきたのも、普遍的福祉の実現が遠いのも、成長率が潜在成長率を下回るようになったのもすべて、経済は内需中心なのに、政策は輸出主導型だからだった可能性がある。
トランプの時代だ。李在明(イ・ジェミョン)大統領の言うように「民生のために肝臓や胆のうも差し出せる」なら、韓国が本当に輸出で成長する国なのか、根本的な問いを投げかけるべき時に来ている。輸出競争力を高めるために低賃金雇用を増やす産業・労働政策、福祉を抑制する財政政策、輸出企業中心の通商政策は、根本的に再検討しなければならない。
ユン・ホンシク|仁荷大学社会福祉学科教授・福祉国家再構造化研究センター長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )