「Kプレミアム」に支えられ、2020年代以降、韓国の流通・電子商取引(Eコマース)業界が世界市場進出に一層拍車をかけている。過去の海外進出が一部の大企業や伝統的な流通企業の話だった一方、今はコンビニやEコマースなど多種多様な企業が市場を広げている。各企業は地理的隣接性や消費者購買力、現地インフラなどを総合的に考えて進出しており、これに合わせた差別化戦略を展開している。ある企業にとっては機会だった市場が他の企業にとっては失敗になったり、特定の企業とっては潜在力の低い国が、他の企業にとっては有望な市場になったりもする。国内企業が進出した日本や台湾、中央アジア、東南アジアなど国別に進出の背景と戦略を見てみよう。
■韓国ファッションを最も多く参考にする日本
日本はMUSINSA(ムシンサ)やAbly(エイブリー)のような韓国のファッション・バーティカル・プラットフォームが早くから進出していた国。日本のショッピングモール「楽天ラクマ」の調査でも、多様な年齢層の日本女性たちは「韓国のファッションを最も(多く)参考にする」と答えるほど、韓国ファッションが好まれている。AblyとMUSINSAはそれぞれ2020年と2021年に日本市場に進出した。Ablyの関係者は「流行に敏感な若年層の間で韓国アイドルとコンテンツ、ファッショントレンドがソーシャルメディアを通じて急速に広がった」とし、「これに伴いKファッション、Kビューティーに対する関心も自然に高まった」と進出の背景を説明した。
最近はデパート業界まで日本市場に先を争って進出している。新世界百貨店は23日、日本東急グループの子会社東急リテールマネジメントと業務協約(MOU)を結んだ。東京渋谷の代表的な建物「渋谷109」で「新世界ハイパーグラウンド」のポップアップストアを来月オープンする予定だ。現代百貨店は19日からパルコ渋谷店に「THE HYUNDAI GLOBAL」の正規売場をオープンした。今後5年間にわたり5つの店舗をさらにオープンする計画だ。
日本は韓国と地理的に近いため、物流費用の負担が少なく、韓国ブランドの服を消費できる購買力を備えた国。東南アジアはこれを消費する余力が不十分であり、米国と欧州諸国は物流費用が多くかかるだけでなく、人種による体型の違いが壁になっている。MUSINSAが日本に続き、中国などアジア諸国を先に攻略するのも、その点と関係がある。MUSINSAは12月、中国上海に店舗をオープンし、5年以内に中国の店舗を100店以上に増やす計画だ。
一方、2021年に日本に進出したCoupang(クーパン)は、日本市場で「苦杯」を飲んで撤退した後、台湾攻略へと方向を変えた。対面配送と現金消費が好まれる日本ではCoupangの「クイックコマース」(早い配送)が定着しにくかった。その代わりに、Coupangは韓国と市場環境が似ている台湾に目を向けた。台湾は高い国内総生産(GDP)と情報技術(IT)インフラを備えており、コロナ禍以後、Eコマース市場が急速に成長した。その上、人口密集度が高く、物流網を構築してロケット配送をするのに有利な環境だ。台湾に韓国モデルをそのまま導入したCoupangは、第2四半期の台湾事業の売上が直前第1四半期より54%増加した。
■コンビニとスーパーは市場開拓のため、中央・東南アジアへ
ファッション・Eコマース企業にとって日本と台湾が「機会の地」だった一方、コンビニ業界にとっては二つの市場がすでにこれ以上成長の余力がない「レッドオーシャン」だった。日本は現代的なコンビニのモデルを作った国であり、台湾は日本のコンビニシステムを受け入れてコンビニ文化を発展させた国であるからだ。このような理由で、国内のコンビニ業界はまだコンビニが発達していないうえ、地理的にも近い中央アジアに目を向けた。中でもモンゴルは韓国のコンビニ業界が注目するほどの特殊性を持った市場だった。韓国に留学する人が多く、仕事で行き来する人口がかなり多いなど、韓国との交流が活発なうえ、かなりの人が2000年代の韓流ブームで韓国語を上手に駆使しているからだ。
コンビニ業界の中で真っ先にモンゴルに進出して市場開拓に乗り出したのは、BGFリテールが運営するコンビニ「CU」だ。CUは2018年にモンゴルに最初の店舗をオープンした後、今年までに500戸を突破した。昨年はモンゴルでの成功を土台にカザフスタンに1号店を出すなど、隣接国家に進出範囲を広げている。BGFリテール関係者は「コンビニの自主ブランド(PB)商品の中で90%以上は国内中小企業が生産している」とし、「コンビニという消費チャンネルが他の国に進出することにより我が国の製造業商品も共に輸出される」と説明した。
スーパー業界の東南アジア進出も同じ脈絡だ。依然として在来市場が中心であるため、大型流通ネットワークが本格的に定着していないため、初期市場を開拓するという戦略だ。emart(イーマート)は昨年12月、初めてNo Brand(ノーブランド)1号店をオープンして以来、最近まで3号店に拡大するなど、ここ数年間、フィリピンとラオスへの進出に拍車をかけている。韓国では「コスパが良い」ものとして知られるとしてNo Brandの製品は、現地では中産層以上が消費できる中価格以上の製品として受け止められている。emart関係者は「韓国のプレミアム商品をこれらの国で販売することになれば、一部富裕層だけが買えるだろうが、No Brandの自主ブランド商品は中産層以上が購買可能な価格帯であり、市場性がある」と語った。また、No Brandは大型スーパーマーケットのように他のメーカーの製品を集めて販売する方式ではなく、自社ブランド商品中心であるため、商品開発と輸出を主導できるという点もメリットに挙げられる。
■韓国人社会を中心に生鮮食品の需要が確認された米国
多くの流通企業たちがアジア市場に集中する中、大陸を渡って米国市場を選んだ企業もある。生鮮食品専門配送企業のKurly(カーリー)は8月から米国の逆直接購入サービスを始めた。Kurlyは昨年、Hマートなど米国内の韓国専門マートにB2B(企業間取引)方式で韓国簡便食を供給した。その結果、明確な需要が確認されたこと受け、物流費用を考えても十分勝算のある市場だと判断した。Kurlyの関係者は「米国は全世界最大の消費市場であるうえに、生鮮食品を早く配送できる全国単位の配送ネットワークがよく備わっている国」だと語った。
国によって消費者の性と環境が異なるが、韓国企業は共通して韓国コンテンツと商品の人気を前面に出し、各市場に合わせた進出を試みている。今後も国別の特性を反映した戦略、現地競争力確保がカギになるものとみられる。