北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が3日午前、中国の習近平国家主席、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と並び、中国の戦勝節80周年軍事パレードが開催された天安門の城楼に上った。わずか3年前まで世界で最も孤立した国だった北朝鮮は、「多極化」が進む国際情勢の変化を鋭くとらえ、自身の「戦略的価値」を可能な限り引き上げることに成功した。金委員長は中ロとの戦略的連帯を強化し、米国との対話の可能性を模索し、「核保有国の地位」を認められるよう全力を尽くすものとみられる。韓国政府は決して有利とは言えない戦略的環境のもとで、「朝鮮半島非核化」という死活的国益を守るための根本的な課題に取り組まなければならない。
この日午前9時ごろ、天安門広場で始まった軍事パレードの間じゅう、金委員長の立ち位置は習主席の左側だった。右側を占めたのはプーチン大統領だった。プーチン大統領と同等の「外交儀礼」を受けるほど北朝鮮の戦略的地位が上がったことが一目でわかる。
北朝鮮が核開発による長年の孤立から脱し、朝中ロの連帯を誇示できるようになったのは、2022年2月のウクライナ戦争とともに本格化した世界の多極化の流れのためだと言える。北朝鮮は戦争の長期化で苦境に陥ったロシアに多くの兵士を派遣する決断を下し、朝ロ同盟を復活させることに成功した。今回の訪中をきっかけに、「唇亡歯寒」(唇亡びて、歯寒し)と呼ばれる北朝鮮と中国の伝統的な友好関係もまた回復するものと見込まれる。
この日の式典を計画した習主席は、米中戦略競争がますます激化する状況で、米国のドナルド・トランプ大統領と「個人的な親交」を持つ金委員長との関係回復を急ぐことを決意したとみられる。習主席はこの日の演説で、「人類は再び平和か戦争か、対話か対抗か、ウィンウィンかゼロサムかという選択に直面している」としたうえで、「われわれは平和の発展の道を堅持し、各国の人民と手を携え、人類の運命共同体を建設していく」と述べた。自国の利己主義に走るトランプ大統領に対抗し、「平和で秩序正しい多極化世界」という対抗軸を構築する意図が読み取れる。
北朝鮮は2023年末に南北関係を「敵対的な二つの国」と規定して以来、「韓国はわれわれの外交相手にはなりえない」とする立場を繰り返し表明してきた。このまま状況を放置すれば、北朝鮮の「韓国パッシング(素通り)」に押され、大きな損害を被ることになりうる。韓米日にだけ集中する「片側外交」では、この荒波を乗り越えることはできない。これまでよりはるかに柔軟かつ大胆な外交が必要だ。