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中ロと密着の金正恩委員長…複雑化した李大統領の「ペースメーカー」方程式

登録:2025-09-04 00:34 修正:2025-09-04 08:12
3日に戦勝節80周年を記念する軍事パレードが行われた北京の天安門の城楼上に、中国の習近平国家主席(中央)、その両脇にロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長が立っている=北京/新華・聯合ニュース

 3日、中国・北京の天安門広場で戦勝節(中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利記念日)80周年を祝う軍事パレードが開かれた。中国中央テレビ(CCTV)の中継を通じてその場面を眺める韓国政府関係者たちの心境は複雑に見えた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が中国の習近平国家主席、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と城楼の中央に並んで立ち、朝中ロ3カ国の関係を誇示したのは、いつか表面化するかもしれない朝米交渉に歩調を合わせ、南北関係改善の突破口を作ろうとしてきた李在明(イ・ジェミョン)大統領の構想にも、重大な影響を及ぼさざるを得ないからだ。

 この日、韓国大統領室と外交部は言葉を選びつつ、「期待半分、懸念半分」の視線で金委員長の動向を注視した。大統領室のカン・ユジョン報道官は、金委員長の中国での軍事パレード出席に対する見解を記者団に問われ、「特に評価することはない」としつつ、「国境を接している周辺諸国に対しては、朝鮮半島をはじめとする国際情勢の複雑な状況に関し、当然鋭意注視し、綿密に目を配っている」と述べるにとどまった。極めて乾いた原則的な言葉だった。

 その一方で、このかん核武力の強化と朝ロ密着のみに注力してきた金委員長が初めて多国間外交の舞台に登場したことに対する期待もうかがわれた。外交安保系の当局者は「金委員長の外交の場への登場は、ひとまず『コップの半分』は満たされたということ」だとし、「2019年のハノイ・ノーディール以降中断された北朝鮮との対話再開の流れへと向かう余地は生じた」と述べた。金委員長が朝中関係を回復した後に朝米対話へと向かうことで、朝鮮半島情勢の安定化への転換点が作られることを願っていることがうかがわれる。実際に政府は、10月31日~11月1日に慶尚北道の慶州(キョンジュ)で開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議にトランプ米大統領が参加するなら、これを契機に朝米または南北米対話を推進しようと努力してきた。

 ただ、朝米対話と南北対話の早期再開への過度な期待は抑えようとしているようだ。北朝鮮の対外関係の改善が予想よりも進まなかった場合、今の早すぎる楽観論がその後の南北関係改善に必要な政治的動力に悪影響を及ぼす恐れがあるという懸念のためとみられる。先月29日の放送に出演したウィ・ソンラク国家安保室長が、「今の北朝鮮は、韓国はもちろん米国とも対話しようという意志を示していない」とし、「われわれが期待値を高め過ぎて語るのは、北朝鮮の呼応を誘導するうえで役立たない可能性もある」と述べたのも同じ脈絡だ。

 韓国政府のこのような複雑な反応には、北朝鮮が「韓国パッシング(素通り)」の意図を明確にしているという点も作用しているとみられる。北朝鮮は、対話が再開されても韓国を徹底して排除したうえで、非核化ではなく米国が核保有国の地位を認めることを前提に米国との話し合いのテーブルにつく、との意思を表明してきた。

 ひとまず政府は、韓米首脳会談に続き、韓中関係の改善を通じて突破口を見出そうとする可能性が高い。政府の当局者たちはこのことに関連して、中国が今回の軍事パレードで金委員長を手厚くもてなしつつも、朝中ロ3カ国首脳会談は行わなかったことに注目している。中国は最近、韓米首脳会談で韓米日協力が強調されるとともに、李在明大統領が「安米経中(安保は米国、経済は中国)の態度はもはや取れない状況になった」と述べたことに不快感を示してはいるが、韓国や米国などとの関係を取り返しのつかない水準にまで悪化させるつもりはないというシグナルだととらえているのだ。

 政府は、10月末の慶州APEC首脳会議と来年に中国で開催されるAPEC首脳会議をも念頭に置き、李大統領と習主席の首脳外交を打診しつつ、韓中関係の管理と改善の機会を探っていくとみられる。

パク・ミンヒ先任記者、シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1216785.html韓国語原文入力:2025-09-03 17:35
訳D.K

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