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憲政堕落の時代を終わらせるためには【寄稿】=韓国

登録:2025-03-28 05:55 修正:2025-03-31 10:33
キム・ジョン・ヒウォン|米国アリゾナ州立大学教授
24日ソウル市鍾路区の憲法裁判所の前で、与党「国民の力」のキム・ジョンジェ議員らと最大野党「共に民主党」の関係者らがそれぞれ尹錫悦大統領弾劾反対と賛成のデモを行っている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の当選とともに心配事が増えていった。憲法裁判所長と裁判官の全員が彼の任期中に交替させられるとは。憲法裁判官の構成が及ぼす長期的な影響を考えれば、不安は並大抵のものではなかった。いったいどうして、タイミングがこのように合わさってしまったのだろうか。国家人権委員会も人事の混乱によって性格が急変したが、憲法裁判所ははたして安全だろうか。9人の裁判官のうち3人は大統領が任命し、3人は最高裁長官が指名した後、大統領が任命する。これらの人たちは、国会の承認議決がなくても大統領が任命すれば、ただちに任期を始められる。残りの3人は国会が選出する。手続きがこうであるため、天秤の重心が移ることは明白だった。

 もちろん、尹錫悦大統領が弾劾されれば、このようなことは起きないだろう。しかし、私たちの不安は、より根本的な問題を意味している。米国の憲法学者ジャック・バルキンが「憲法的時間の周期」と呼んだ問題だ。もし憲法が常に一貫して解釈され適用されるのであれば、憲法裁判官の構成は問題にはならない。誰が任命されようが中立的に解釈するはずだ。しかし、バルキンによると、憲法的時間の周期は保守と進歩のスペクトルに従って動く。彼は2つの周期が政権・政党の興亡と連動していると説明するが、常にそうだとは限らないと信じている。

 バルキンは3つの質問を投げかける。「憲法裁判所」を代入してみることもできる。1つ目は、あなたは、司法府がその権力を活用して憲法を解釈し判決を下す方式に同意するか、あるいは、司法府の権力はより統制されるべきだと考えるか。2つ目は、司法府は憲法に誠実に従う推論をもとに決定を下すと考えるか、あるいは、法の名のもとで論理を組み立てて政治的偏向を介入させていると考えるか。3つ目は、憲法的原則を守るために、司法府は政治過剰を防ぐべきだと考えるか、あるいは、司法府はエリート的かつ非民主的であり、民意を反映できないため、意思決定は政治に任せるべきだと考えるか。

 あなたの答えはどうだろうか。もちろん正解はない。しかし、一つ明らかな点は、現時点では人々の答えが明確に分かれるということだ。同じ事件をめぐり人々の答えは彼らの政治的立場によって両極端に向かうだろう。与党「国民の力」は弾劾棄却を主張し、最大野党「共に民主党」は弾劾容認を求めるように。戒厳が憲法的に正当な統治行為だと信じている人たちと、戒厳は当然違憲だと信じる人たちが、互いに一歩も引かないように。私たちははたして、激怒せずに対話することができるのだろうか。大韓民国の国民は現在、深刻に分裂している。

 このような分裂があるのは、韓国社会に政治が存在していないためだ。巨大両党が政治ではなく政争に没頭し、相互に暴力を扇動するのだから、人々の分裂と憎しみは当然ではないだろうか。国会は合意形成の能力を喪失したまま、力比べの場に転落し、各政党の支持者は極端な結果に感情的な刺激を受け、よりいっそう怒りをつのらせている。そして、政治的立場によって、事案の有利不利によって、司法府に対する態度も同様に変わる。これらの人たちは、自身の信念に反する宣告結果を決して認めないだろう。

 さらに重要なのは、政治の不在が司法府の機能自体に影響を与えていることだ。政治的交渉が消え、両極化が激化すれば、司法機関も憲法を守る意志と能力を失うからだ。憲法精神や法治よりも政治的利害が先行し、政治的対立が尖鋭なほど負担はさらに重くなる。裁判官が政治的対立と党派争いをめぐり対立する可能性が高まり、政権の政策基調を意識することになる。法理と手続きに対する解釈も、政治指向によって変わることになりうる。つまり、私たちが憲法裁判官の構成を心配して不安に感じるのは、結局のところ、熟考と交渉を可能にする成熟した政治が存在していないためだ。

 各種の政治的要求を突きつける両党の暴走を制御できず、最小限の規範が軽く無視され、相反する結論を下したとして敵とみなす社会では、司法府はまともに機能できない。極端な対立が消え、様々な政党の声が尊重され、公益のために党派を越えた合意を引き出すべきだ。それでこそ、司法府が政治路線に振り回されることなく、権力の顔色をうかがわずに済む。憲政堕落の時代を終わらせるためには、政治の回復が切実に求められる。憲法が政治を支えるように、政治も憲法を守らなければならない。

//ハンギョレ新聞社

キム・ジョン・ヒウォン|米国アリゾナ州立大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1189093.html韓国語原文入力:2025-03-26 19:08
訳M.S

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