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ウクライナの雪原、シリアの砂漠、そして朝鮮半島【コラム】

登録:2025-01-10 06:00 修正:2025-01-10 08:53
ロシアとの関係を回復し、中国との関与を拡大するとともに、北朝鮮との対話を再開しないのであれば、韓国はトランプ氏の中国との対決の道具に利用されるだけだろう。
米国のドナルド・トランプ次期大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が先月7日(現地時間)フランス・パリのノートルダム大聖堂で会談して握手をしている=写真記者団/ロイター・聯合ニュース

 新年の国際情勢の舞台はウクライナの雪原で始まる。その後、シリアの熱い砂漠を経て、朝鮮半島に移ってくるだろう。

 ドナルド・トランプ氏の20日の米国大統領への再就任で、ウクライナの終戦をめぐる米国とロシアの動きは強まるだろう。トランプ氏は7日に行った当選後2回目の記者会見で「終戦には6カ月ほしい」と述べた。ウクライナの終戦交渉は、ロシアが現在激しい攻勢をかけているクルスク州を完全奪還した後にでも本格化するだろう。

 ロシアは、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が終戦交渉のためのチップとして使おうとしているクルスクの占領地を完全に奪った後、戦力を完全に失った現実を認めるまで、終戦交渉のための接触を急がないだろう。トランプ氏も同じだ。トランプ氏はウクライナを欧州の問題とみなしている。欧州に防衛費などを押し付け、ロシアとの妥協を達成するためのカードに過ぎない。

 終戦を通じてロシアは現在の占領地を固め、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を排除するものとみられる。この必要条件が満たされないのであれば、ロシアは決して交渉に応じないだろう。残されたのはウクライナの安保を保障することだ。すでに領土問題をあきらめたゼレンスキー大統領はNATOへの加盟や保障を主張し、西側からの安保の確保を最大化しようとしている。トランプ氏はこれを基本的に欧州が責任を負う構図にしようとするだろう。

 トランプ氏にとってさらに重要なのは、その過程で実現可能なロシアとの妥協だ。実際、米ロ関係の回復は、バラク・オバマ政権期から米国の官民の戦略家が求めていた大戦略だ。トランプ氏がウクライナの終戦によってウラジーミル・プーチン大統領との関係を構築できれば、米国は中東や中国の戦線において、はるかに大きな裁量を確保できるのは明らかだ。

 まずは、アサド政権が崩壊したシリアの安定が米国にとっては急務だ。アサド政権の崩壊は米国やイスラエルなどの西側にとっての戦略的勝利だ。しかし、シリアで勢力の空白が長引けば、第2のアフガニスタンやイラクにならないとも限らない。トランプ氏は12月7日、「米国はシリアとは関係ない。われわれの戦いではない」としたうえで、ロシアにも「(アサド政権を支援したのは)オバマがばかな目にあったこと以外には何の役にも立たなかった」と述べた。シリアをめぐって争うことはやめようという話だ。

 シリアに駐留中の二つの超大国である米国とロシアが妥協できれば、トランプ氏やプーチン大統領の両方にとってウィンウィンのゲームだ。トランプ氏はこの妥協を通じて、シリアなどのイランの「抵抗の軸」の勢力も制御できる。プーチン大統領もシリアで影響力を維持するためには、米国との妥協が不可欠だ。

 シリア問題で米国の戦略家が最も恐れるのは、中国・ロシア・イランに北朝鮮まで加勢する「ユーラシア連帯」が作られる可能性だ。ウクライナ戦争後、中ロは米国の一極体制に代わる多極秩序を唱えている。両国はBRICSと非ドル貿易を拡大している。さらに、ロシアは北朝鮮と「包括的な戦略的パートナー関係」である軍事同盟を復活させた。これと類似の包括的協定を17日にイランと締結する。しかし、シリア問題はロシアを媒介としたユーラシア連帯の可能性を制約している。

 トランプ氏がウクライナとシリアにおいてロシアとイランに対する負担を減らせれば、自身が豪語する金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長との良好な関係を現実化させる機会を得ることになる。北朝鮮はウクライナの終戦交渉にすでに深く関わっている。ウクライナ戦争が朝ロ同盟の復活を触発したためだ。トランプ氏がウクライナ戦争の終戦に成功すれば、北朝鮮も同様に影響を受け取るのは明らかだ。

 問題は、北朝鮮はもはや米国などの西側に関係正常化をもの乞いする弱者ではないことだ。核兵器とロシアとの同盟を両手に握った北朝鮮は、米国と強者同士の関係としてのみ会おうとするだろう。しかも北朝鮮は、統一を放棄して「敵対的な二国家論」を宣言し、韓国とは共存もしないと公言した。朝米交渉が進展した場合、韓国の位置づけは小さくなる。トランプ氏がウクライナの雪原、シリアの砂漠、朝鮮半島で相手と妥協して米国の位置づけを広げるならば、対外政策の究極的な目標である対中国抑制のための条件を、急激に好転させることができる。

 韓国は、局地戦まで企てて戒厳を宣言した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が自爆し、機会と危機に同時に直面した。過去1年の間に戦争の寸前まで進んだ状況は避けられた。しかし、尹錫悦大統領の凶悪さによって、韓国の対外訴求力は急激に墜落した。ロシアとの関係を回復し、中国との関与を拡大するとともに、北朝鮮との対話を再開しないのであれば、韓国はトランプ氏の中国との対決の道具に利用されるだけだろう。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1177004.html韓国語原文入力:2025-01-08 19:37
訳M.S

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