内乱罪被疑者の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領、キム・ヨンヒョン前国防部長官らの「12・3内乱事態」の首謀者たちが、戒厳前から「不正選挙陰謀論」に関心を示していたことが続々と確認されている。尹大統領とキム前長官が陰謀論的世界観を共有し、非常戒厳に突き進んだ、その全体像があらわになりつつあるのだ。
尹大統領の「不正選挙陰謀論」は、少なくとも昨年末から側近たちの間で共有されていたとみられる。内乱の中心的な実行者であるヨ・インヒョン防諜司令官は最近の検察の取り調べで、尹大統領やキム前長官らが昨年末から最近まで非公式の場で不正選挙疑惑をしばしば語っており、「非常措置が必要だと言っていた」と証言したという。
とりわけ与党が惨敗した4月10日の総選挙は、陰謀論が戒厳へとつながる重要な契機となった。ヨ司令官は総選挙後の今夏ごろ、自身の秘書室長を呼び、「ユーチューブで主張している選管の不正選挙の話はどういうことか」と述べ、極右ユーチューバーの主張をまとめるよう要求した。これは、尹大統領がキム前長官とヨ司令官に会い、「総選挙後、時局を心配している途中で戒厳の話を切り出した」(ヨ司令官の供述)時と重なる。
非常戒厳時に中央選挙管理委員会(選管)への出動が命じられた防諜司令部すらも、不正選挙陰謀論については否定的な立場だったという。ヨ司令官は、秘書室長に不正選挙に関する資料を頼んだ理由について、「尹大統領が(不正選挙疑惑を)抱いていたため、いったい何のことなのか理解するために資料を確認してみた」と検察に供述したという。尹大統領が不正選挙に高い関心を示したため、陰謀論の「研究」が必要だったというのだ。資料を確認したヨ司令官は、不正選挙だとの保守ユーチューバーの主張は話にならないと判断したという。
にもかかわらず、戒厳宣布の1カ月前から「選管委奪取」企画は具体化しはじめた。ノ・サンウォン前情報司令官は、このような試みの中心人物と目される。情報司令部のJ大佐は警察の取り調べで、ノ前司令官が先月初めに自身に自ら電話してきて、「予備役将軍の教育に使う」として不正選挙に関する映像をまとめてくれと要求されたと供述した。また、戒厳2日前の今月1日の、いわゆる「ロッテリア謀議」では、ノ前司令官がムン・サンホ情報司令官とJ大佐に「中央選管の電算サーバを確認すれば、不正選挙の証拠が確保できるだろう」と強調したという。
不正選挙陰謀論は、非常戒厳宣布後の実際の兵力動員にもつながった。ノ前司令官の情報司令部は戒厳宣布の直後、実際に果川(クァチョン)にある選管に兵力を投入して占拠し、サーバを撮影している。ヨ司令官は3日の戒厳宣布後、傘下の防諜司の兵力に選管のサーバの確保を指示したが、違法性を懸念した要員たちの反対で実行できずに終わっている。
尹大統領は非常戒厳の失敗後も、不正選挙論を信じていることを隠していない。尹大統領は12日の国民向け談話で、「民主主義の要である選挙を管理する電算システムがこのようにでたらめなのに、どうして国民が選挙結果を信頼できるのか」と強弁している。