10日に任期の折り返し地点を迎えた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領のこの2年6カ月間は、対決と確執、国政の私有化と要約できるだろう。就任演説で強調した公正と常識は、尹大統領夫妻の疑惑を前にして無力化しており、傲慢とコミュニケーション不在のせいで国政の乱脈ぶりは深刻化している。
かつて検察総長を務めた尹大統領は、文在寅(ムン・ジェイン)政権との対立を政治的資産として大統領の座に就いた。だが、政界入り宣言からわずか9カ月での「成功神話」は、国政哲学とビジョンについて悩んだ時間がそれだけ短かったということでもある。それは政策の混線、人事の失敗、独断的で即興的な国政運営として現実化した。
政権初期に突如発表した「小学校入学年齢の満5歳への引き下げ」をはじめ、週最大69時間勤務制の導入、科学技術界カルテル主張および研究開発(R&D)予算の削減などは国中をめちゃくちゃにし、後に撤回された代表的な政策だ。最近では年金、教育、労働、医療の4大改革の完遂を強調しているが、政権初期にゴールデンタイムを逃したり労働者ばかりを違法な集団扱いしたりするにとどまった。根拠の明確でない「医学部増員2千人」は医療の空白の長期化につながり、国民は不安を募らせている。
また少数与党国会において野党の協力を求めるのではなく、再議要求権(拒否権)を伝家の宝刀のように振り回してきた。この2年半の間に11回にわたって24の法案に拒否権を行使し、民主化以降、最も多く拒否権を行使した大統領となった。37年ぶりに国会の開院式に出席せず、予算案の施政方針演説への出席も拒否した。人事はずさんな検証と不適格者任命の問題を抱えたため、国会人事聴聞会を無力化する方向へと戦略を変更した。尹錫悦政権の2年半の間に、国会人事聴聞経過報告書が採択されていないにもかかわらず任命が強行された公職者は、29人にのぼる。自転車操業、回転扉人事は日常化した。
何よりも、キム・ゴンヒ女史に関する疑惑が現政権の最大の危険要因になっているにもかかわらず、尹大統領はそれを「政治攻勢」とみなし、女史をかばうのに忙しい。尹大統領は今月8日(現地時間)に公開された米国の週刊誌「ニューズ・ウィーク」とのインタビューで、「前政権の大統領夫人も疑惑に包まれた」と述べた。株価操作、国政介入などの国民的疑問を解消するどころか、今も「何が問題なのか」という認識だ。
尹大統領のこの2年6カ月間に対する国民の評価は、支持率17%(韓国ギャラップによる11月第1週の調査)という無残な成績表で確認された。尹大統領の残りの任期もこの2年半と変わらないなら、国民の審判は避けられないだろう。