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私たちの願いは統一ではなく平和【コラム】

登録:2024-10-07 01:51 修正:2024-10-07 09:34
イ・ジョンエ|政治チーム長
文在寅前大統領の秘書室長として2018年の南北首脳会談準備委員長を務めたイム・ジョンソク元議員が先月19日、光州の金大中コンベンションセンターで開催された9・19共同宣言6周年記念式に出席し、基調演説をおこなっている/聯合ニュース

 「このままだと本当に戦争が起きるんじゃないの?」

 中学高校の友人のKからメッセージが送られてきた。およそ5年ぶりだ。Kがこのような内容のメールを送ってきたのは。Kは2017年の文在寅(ムン・ジェイン)政権の発足直後、毎日のようにショートメッセージを送ってきた。北朝鮮が短距離、中距離、大陸間弾道ミサイルを連日発射していた時だった。不妊治療でようやく双子を授かったKにとって、北朝鮮のミサイル挑発は「現実の恐怖」だった。移民すべきかと考えていると言っていたKのメッセージは、平昌(ピョンチャン)冬季五輪を経て、南北首脳会談、朝米首脳会談が実現して途切れたが、昨年から再びはじまった。

 「統一、やめましょう」

 イム・ジョンソク元議員の挑発的な一言が「汝矣島(ヨイド=国会のある場所)」に波紋を広げた。「北朝鮮の指令を受けたのか」というような、どうしようもないイデオロギー攻撃をふるいにかけたとしても、批判の方が多いようだ。悪いことに、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と共に民主党のイ・ジェミョン代表の口から同じく「反憲法的発想」だとの言葉が飛び出した。民主党からも「統一の放棄」だとの批判が相次いだ。イム元議員は突如として、自らの信念であり憲法的価値である統一を、破れた靴のように捨てた人間になってしまった。

 私の知識が足りないからかもしれないが、「統一の価値と指向は憲法精神に残し、未来世代に託そう」というイム元議員の発言と、「統一は指向するものの、暫定的な二つの国家という現実を認めよう」と批判する方々の主張が、大きく異なるとは感じられなかった。大枠として「平和的な共存が必要だ」に集約されるものに聞こえた。もちろん、同じ主張でも「物は言いよう」だし、目的地が同じでも行き方が違えば到着する時間も風景も変わりうるもの。だから、憲法に統一をどのように明記するのか、憲法3条の領土条項を廃棄(あるいは改正)するのか、などのディテールは、非常に重要な違いではある。ただ、イム元議員の言う通り、これからきちんと討論し、接点を探っていけば済むことだと思った。率直に言って、食べていくことが急務なのだから「同性婚を認めること」や「差別禁止法の制定」(差別されずに生きること、それもまた憲法上の権利だ!)は後回しでもよいという方もいるのに、統一はやめようという主張がそれほど大ごとなのだろうか。

 北朝鮮が「敵対的な二つの国の関係」を語っているのに、あえて「統一やめよう。二つの国家を受け入れよう」と言う必要があったのか、という指摘に少し動揺したのは事実だ。だが考えてみれば、あれほどのことを言ったからこそ、化石化していた統一が、平和が、改めて語られるようになったのではないのか。政治的人気を狙いすぎたイム元議員の行き過ぎな発言だったと批判しているが、彼は政治家として自らのなすべきこと(アジェンダの提示)をしたのではないか。

 イム元議員の爆弾発言は、「私たちの願いは統一」という歌は今も有効なのかという問いを投げかけている。国民の10人に3人以上(35%)が「北朝鮮との統一は不必要」と考え、50%以上が「近いうちに統一するのは難しいだけに、北朝鮮を別の国として認めるべき」(54%)と答える時代だ。「統一に伴う経済的負担」(33.9%)が嫌だというのが最大の理由だ。(10月2日の「2024統一意識調査」と9月25日に発表された全国指標調査の結果より。中央選挙世論調査審議委員会のウェブサイト参照)。小学校の教師をしている友人に聞いたところ、近ごろは学校も「私たちの願いは統一」の歌を教えることは義務ではないという。

 今、私たちの願いが統一なのかを問わなければならないのは、逆説的に「統一というやつ」がむしろ戦争のリスクをさらにあおる要因になっているからだ。北朝鮮は今日も「7回目の核実験」予告で韓国を脅かしており、「大韓民国が現在謳歌(おうか)している自由を北の地に拡張する」と主張する尹大統領は、「北朝鮮が核兵器の使用を企てるなら、政権終末の日となるだろう」と警告してばかりいる。南北がこのようにブレーキなしに互いに向かって突っ走っているうちに、小さな局地戦でも発生すれば、誰かが負傷したり死んだりすることもありうる。手遅れの仕返しや報復に何の意味があるのか。私の友人Kが望んでいるのは、偶発的な衝突を防ぐ方法だ。Kは、今は「私たちの願いは統一」ではなく「私たちの願いは平和」という歌を切に求めているのだ。

//ハンギョレ新聞社

イ・ジョンエ|政治チーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1161246.html韓国語原文入力:2024-10-06 18:00
訳D.K

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