「LINEヤフー」関連の記事の件数は、5月13日の206件をピークに急減し、6月23日には8件しかみられない。LINEヤフー問題の沈静の兆しだろうか。そうではない。終わるどころかより複雑化し、げんなりする長期戦となる公算が高まっている。
日本の毎日新聞の6月21日付の報道によると、日本の経済安保法の生みの親であり、自民党の実力者である甘利明・経済安全保障推進本部長が、3~4月ごろにLINEヤフーの日本側のパートナーであるソフトバンクグループの孫正義会長と会い、ネイバー側の持ち株の買い増しと、LINEを「すべて日本化」することを要請したことが明らかになった。総務省がネイバーに異例の株式売却要求を2回行ったまさにそのとき、甘利本部長と同じタイミングで、総務省もソフトバンクグループの宮川潤一最高経営責任者(CEO)に同じ要求をした。ソフトバンクグループの関係者は、日本政府がここまで踏み込むとはと、驚きを隠せなかったという。しかし筆者は、この記事の行間からにじみ出る利害関係者の全般的な無能さ、一貫性のなさ、そして無責任さに驚き、この記事を訴求する韓国社会とメディアの鈍感さにさらに驚いた。全てが厳しい局面に陥っているとしか言いようがない。
LINEは、ネイバー・LINEヤフー・ソフトバンクがつながる一種のグローバル・バリューチェーン(GVC)だ。いや、韓国と日本は価値と理念を共有する類似国であることから、一種のトラスト・バリューチェーン(TVC)だといえる。しかし、LINEの個人情報流出事故をきっかけに、日本政府は経済安保の次元から、自己完結性を持つドメスティック・バリューチェーン(DVC)に変えようと介入した。ここからこの問題をめぐる複雑な利害関係軸が形成された。しかし、この利害関係者らが一様に示した無能さ、一貫性のなさ、そして無責任さによって、LINEの前には険しい道が待ち構えているといえる。
まず、「政府」対「企業」の関係(「日本政府」対「ソフトバンクグループ」、「韓国政府」対「ネイバー」)上で明らかになった悪手だ。それまで総務省は、LINEヤフーに資本関係の見直しを言及したことはないと述べ、韓国側の反発にあった。しかし上記の記事が明確にしたのは、総務省の嘘だ。さらに衝撃的なことは、党の幹部が背後で不透明な慣行である「行政指導」を武器に、グローバル企業の経営者を呼び出して、トラスト・バリューチェーンをドメスティック・バリューチェーンに変えるよう脅したことだ。「経済安保」のためなのか。道理に合わないどころか、職権乱用の余地すらある「経済的強圧」だ。しかも、主務官庁である日本の個人情報保護委員会とは異なり、総務省はネイバー側の持分の売却まで要求した。省庁の間の違いにもほどがある。総務省の強引なやり方によって、韓国ではネイバーのセキュリティ事故自体が埋もれてしまったため、ネイバーとしては総務省に感謝すべきとでも言おうか。事がここまでくれば、韓国政府は不当な経済的強圧を行使した日本政府と与党に強く抗議するのが当然だが、ネイバーの背後に隠れてどこにも見当たらない。無能で無気力、無責任なことこの上ない。
上記の記事は、ソフトバンクグループの関係者の発言を通じて政府と企業の利害関係の衝突の余地も明らかにした。意図したかのように自国政府に対して戸惑いをみせたソフトバンクの本心は何か。実際のところ、ソフトバンクは会社法上はLINEの親会社として実質的な経営権を握っており、ネイバーの持ち株買い増しのインセンティブは大きくはない。これまでシステム開発と運用をネイバーに過度に依存しており、短期間で技術的に自立するのも困難だ。そのせいか、ソフトバンクグループは株式買い増しに関する質問については言葉を濁す。ソフトバンクグループも内心は複雑であろう。すべてのデータセンターを自国内に置くことが、経済安保の面で正解なのかも疑問だ。むしろソフトバンクグループは、2011年の大震災の際に、データのバックアップのために韓国にデータセンターを建設した。当時LINEが機能した理由はデータが分散していたためだという専門家の指摘を聞き流すべきではない。
上記の記事には書かれていなかったが、非政府・非企業の利害関係者である両国の国民の声が一方向に偏っている点も懸念される。韓国もいつ発生するかわからない個人情報流出事故を考慮するのであれば、ネイバー側の過失も厳しく問いただすべきだった。そしてこの際、データの持ち主は誰なのか、データとプラットフォームの主権をどのように保護するのかについてまで、考え方を広げなければならない。「自分側がするのは経済安保で、相手側がするのは経済的強圧」という考えではなく、条件の探求へと認識の地平を広げなければならない。しかしこのような議論のテーマは、データ保護主義とネイバー救済の話題に覆われてしまった。
昨今の状況に照らしてみると、LINEヤフーが確固たる再発防止策を立てれば済む問題ではないという蓋然性が高まった。日本の次の切り札は経済安保情報保護法になるかもしれない。全員がいま取り組まない限り、LINEの漂流は「予告された未来」となる。
キム・ヤンヒ|大邱大学経済金融学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )