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[社説]トップ企業は撤退、「石油ボーリング」まず国民的疑問を解くべき

登録:2024-06-07 09:24 修正:2024-06-07 10:19
慶尚北道浦項の迎日湾一帯に最大140億バレルの石油やガスが埋蔵されている可能性があると分析した米国アクトジオのビトール・アブレウ博士が、鉱区有望性評価などのコンサルティングを行うために5日、仁川国際空港第2旅客ターミナルから入国し、取材陣の質問に答えている/聯合ニュース

 3日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が「東海(トンヘ)の迎日湾(ヨンイルマン)には莫大な量の石油やガスが埋蔵されている可能性が高い」として探査ボーリング計画を承認したことを発表して以降、今回の政策決定の信憑性に対する疑問が日増しに高まっている。特に屈指のエネルギー企業であるウッドサイドが2023年1月に事業性が低いとの理由で同区域から撤退していたことが明らかになったことで、疑惑は膨らんでいる。1954年の創業以来、資源開発を専門におこなってきたウッドサイドは、2007年から15年間にわたって韓国石油公社とともに探査を実施してきた。ウッドサイドはその後、もはや将来性がないと判断される区域からは撤退するとの方針を立てたが、それらの区域に韓国の東海8鉱区や6-1鉱区北部地域なども含まれていたのだ。政府は、ウッドサイドは企業買収・合併の過程で既存事業の再調整に入ったものだとして拡大解釈を警戒したが、同鉱区の事業性が高かったとしても撤退していたのかは疑問が残る。

 このような疑問は、埋蔵の可能性が高いという分析結果を韓国政府に提示したアクトジオの信頼性に対する疑問と相まって、いっそう強まっている。大統領による発表の当日から、本社の所在地が一般住宅になっており、年平均売上が3000万ウォン(約342万円)ほどに過ぎないということが知れわたったことで、同社の検証力を疑う人々が現れているのだ。エクソンモービル出身であり、米国堆積地質学の会長も務めた創業者のビトール・アブレウ顧問の専門性は、低いと考えることはできない。政府は、ウッドサイド撤退後、これまでに蓄積されてきた探査資料などを請求し、アクトジオの分析で新たな結果を得た、との立場だ。しかし、政府の大型プロジェクトに対する判断を、業歴が短く認知度の低い小規模な会社に任せてもいいのか、という疑問は依然として残る。

 石油公社は7日に、アブレウ顧問とともに記者会見を行う予定だという。最も大きな関心事は、最大140億バレルの埋蔵可能性があると判断した根拠と、ボーリング成功率を20%と見なした根拠だ。大統領が述べた通り「莫大な量」の石油やガスが適正な危険度の範囲内の採掘成功率で埋蔵されているのなら、探査ボーリングに反対する理由はない。ただし、そのような判断が信頼できる根拠にもとづいて、きちんと検討されて行われたのかが、まず究明されなければならない。今回の探査は水深1000メートル前後の深海で行われるため、1回のボーリングに1000億ウォン(約114億円)以上の費用がかかる。経済性が担保されるためには、埋蔵量が十分でなければならない。尹大統領のいいかげんな発表のせいで、まだ可能性の段階である油田探査に対する国民の関心と懸念は日々高まっている。外国企業と実務ラインばかりに押し付けることなく、政府は責任を持って呈された疑問を解消すべきだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1143812.html韓国語原文入力:2024-06-06 19:13
訳D.K

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