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[コラム]韓国もルビコン川を渡ったのか

登録:2024-04-19 06:20 修正:2024-05-07 07:18
キル・ユンヒョン|諭説委員
2021年4月16日(現地時間)、米国のジョー・バイデン大統領と日本の菅義偉首相がホワイトハウスのローズガーデンで開かれた共同記者会見に臨むために歩いている=ワシントン/AFP・聯合ニュース

 恥ずかしい話だが、「台湾有事」が韓国人の日常にまで影響を及ぼしかねない重大な問題だと考えるようになったのは、わずか3年前の2021年の今頃だった。同年4月16日、米国のジョー・バイデン米大統領と日本の菅義偉首相が共同声明に「台湾海峡の平和と安定を強調する」という文言を入れたのが始まりだった。以後、日本のマスコミは米日首脳がこのような言及をしたのは52年ぶりだと大騒ぎした。資料を見ると、1972年5月に沖縄返還を控え、米国のリチャード・ニクソン大統領と日本の佐藤栄作首相が1969年11月に発表した文書に、似たような内容を盛り込んだことがあった。

 米日首脳が半世紀前にあえて台湾(朝鮮半島も言及した)に言及したのは、ベトナム戦争が真っ最中の状況で沖縄が返還されれば米軍の対応態勢が揺らぐ恐れがあると、当時の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領と蒋介石総統が懸念したためだ。朴正煕元大統領は、その年の6月1日付のワシントンポストのインタビューで、「済州島(チェジュド)を米軍基地として提供する用意がある」とまで述べた。冷戦が終わった後、しばらく忘れ去られていたが、大陸と海洋の間に位置する台湾、沖縄、朝鮮半島は一つの大きな「共同運命体」と言える。

 このような考えは、2日後の18日付の朝日新聞7面に掲載された竹内行夫元外務省事務次官の短いインタビューを読んでから、一種の恐怖へと変わった。「中国の強権主義による自由民主主義的な国際秩序への挑戦が、国際社会全体の課題だ。東アジアには北大西洋条約機構(NATO)のような同盟の枠組みはない。今回の会談は米国にも(東アジアで日米同盟を通じてNATOのような役割を果たす)『足元固め』の意味があった。菅義偉首相に覚悟があったかは不明だが、今回の中国への意思表明は『ルビコン川を渡った』とも言える。今後、中国の『報復措置』も考えられる。確固とした覚悟としたたかな対応が必要だ 」

 驚いて米日共同文書を読み返すと、「日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した」という内容が含まれていた。その後、安倍晋三、麻生太郎のような日本の有力政治家たちが「台湾有事は日本有事」などの発言を次々と行った。米日同盟がこのように変化すれば、その余波は直ちに韓国にも及ぶことになるはずだった。

 日本政府はその後、2022年12月に安全保障関連3文書を改正し、防衛予算(国防費)を2027年までに国内総生産(GDP)の2%水準(5年間で2倍)に引き上げることにした。米日は竹内元次官が予言した通り、東アジアにNATOのような同盟の枠組みを作るために全面的に協力している。昨年8月のキャンプデービッドでは韓国を引き入れて韓米日3カ国同盟に進む第一歩を踏み出しており、今月11日にはワシントンで米国と日本、フィリピンの首脳による会合を開き、南シナ海で進められている中国の攻撃的行動を一斉に非難した。

 日本の岸田文雄首相が米連邦議会上下両院合同会議での演説で、「日米のグローバル・パートナーシップ」を掲げた11~12日、韓米日3カ国は台湾が面した「東シナ海」で共同海上訓練を行った。米国のインド太平洋司令部と日本の海上自衛隊が出した報道資料によると、米海軍からは空母「セオドア・ルーズベルト」と3隻の駆逐艦が、日本の海上自衛隊からは護衛艦「ありあけ」、韓国海軍からはイージス駆逐艦の「西厓柳成龍」などが参加し、「対潜水艦作戦」などを行った。6~7日には南シナ海で、米国、日本、オーストラリア、フィリピンの4カ国が共に訓練した。台湾有事が発生すれば韓米日3カ国同盟、南シナ海有事の際には米日豪比の4カ国が連帯する枠組みを活用して対処しようという米国の意図が読み取れる。このすべての変化の中心には、インド太平洋地域で米国を支える主要な同盟に生まれ変わった日本がある。米日同盟はもはやスローガンではなく、実際に軍事的な「グローバル同盟」としての地位と役割を拡大させている。今後韓国にとって負担になる多くの要求をしてくるだろう。

 振り返ってみると、日本は覚悟を決めてからルビコン川を渡った。ならば、韓国はどうか。この重大な問題の前で、いつにも増して「バランス取り」と「世論聴収」が重要であるにもかかわらず、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は自分が何をしたのかも分からないまま、すでに片方に押し流されたようにみえる。ここから後退すれば国際的な恥さらしになり、さらに踏み込めばやがて付いていけなくなるだろう。進退両難である。韓国が危うい。

//ハンギョレ新聞社
キル・ユンヒョン|諭説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1137212.html韓国語原文入力:2024-04-18 20:07
訳H.J

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