仕事と家庭の両立を考慮しない退歩的な労働環境が変わらないことで女性たちが負う「出産ペナルティー」が、韓国の合計特殊出生率の低下に大きな影響を及ぼしている。このような分析結果が発表された。子を産むと雇用上の不利益を甘んじて受け入れなければならない環境において、出生率の上昇を期待するのは筋が通らない。
韓国開発研究院(KDI)が16日に公開した「女性のキャリア断絶の懸念と出生率の低下」と題する報告書は、子を産んだ女性とそうでない女性が経験するキャリア断絶の確率について分析している。子を持たない30代の女性のキャリア断絶の確率が2015年の28%から2023年には9%にまで低下しているのに比べ、同じ期間の子持ち女性は低下幅(29%→24%)が小さかった。これは、女性が子どもを持つことを諦めればキャリア断絶のリスクを大幅に軽減できるということを意味する。
韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、合計特殊出生率が1を下回る唯一の国だ。2015年(1.24)以降、毎年約0.07ずつ低下し、昨年は0.72にまで下落した。OECD加盟国の出生率はほぼ同じ期間(2015~2021年)に毎年約0.017ずつの低下にとどまっており、それと比べると大きな差だ。研究者たちは、女性の雇用の拡大と共に出産ペナルティーが重くなるに従って、女性が出産を拒否する現象が深刻化していることに注目する。2013~2019年の出生率下落に及ぼした影響は40%ほどにもなるという。
結果的に、今のように依然として家事や子育ての負担が女性に偏っている環境では、出生率の上昇は期待しがたい。男性と女性が同等に分担する構造が作られなければ、事実上子を持たないことを前提に無限競争が繰り広げられる職場は変化しえない。女性家族部の「2023年家族実態調査」によると、家事労働を担うのは「主に」または「概して」妻だと答えた人の割合(73.3%)は、3年前(70.5%)よりむしろ高まっている。今後、政府の少子化対策がどこに焦点を合わせるべきかについて、大きな示唆を与えてくれる。
まず、他の先進国に比べて低調な男性の育児休職使用率を引き上げなければならない。「育児休職自動開始」などの実効性を高めうる政策を打ち出すべきだ。何より政策当局者は、デパートのように机上の政策を乱発する前に、ジェンダーの不平等に起因する少子化問題を深刻に検討しなければならない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の少子化対策はジェンダー平等基調が抜けていると指摘されてきた。現実の診断がきちんと行われなければ、良い政策は生まれない。