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[寄稿]北朝鮮非核化の段階論と並行論…韓国の外交はどこに

登録:2024-03-18 06:28 修正:2024-03-18 10:31
朝鮮半島の周辺国すべてで外交が動き始めた。韓国の外交はどこにあるのか。理念を追い求め情勢の管理をおろそかにすると、やがて外交の時間が到来した時に孤立し、非核化交渉の障害になるだろう。2000年代初め、6カ国協議の局面で拉致問題の沼にはまり、外交を放棄した日本の屈辱を思い出す必要がある。 

キム・ヨンチョル | 元統一部長官・仁済大学教授
米国家安全保障会議(NSC)のミラ・ラップフーパー上級部長が4日、米戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ首席副所長との対談で、北朝鮮と非核化の中間段階について話し合う用意があると明らかにした=CSISホームページより//ハンギョレ新聞社」

 ジョー・バイデン政権の北朝鮮非核化段階論を歓迎する。非核化という最終目標に先立ち中間措置を検討するのは、外交の時間が近づいていることを意味する。あまりにも遠くなり、もう忘れていた交渉の言語を聞けたことは嬉しく、軍事的緊張で消えた外交の言語を幸いに思う。しかし、これだけでは足りない。米国内部的に非核化段階論をめぐり論議が起きているが、この程度では外交の時間を開くことはできない。

 段階を否定し、一気に非核化を達成すべきという主張は武力であり、交渉ではない。交渉はギブアンドテイクだ。何も与えることなく相手から譲歩を引き出す方法などない。2月のミュンヘン安全保障会議で、中国の王毅外相が言った「当事国の合理的な安全保障上の懸念」を考慮せず交渉を進めるのは難しい。非核化に相応する措置を提示してこそ、交渉を始めることができる。非核化交渉は関係を改善することであり、関係とは一夜にして良くならない。30年間の非核化交渉の失敗で深まった不信感も根強い。当然、信頼を築いていく過程が必要だ。

 非核化交渉の初期段階は凍結で、中間段階は軍縮だ。交渉のメリットは、それを進める間は北朝鮮の核能力の高度化を止めることができるという点だ。交渉期間にも北朝鮮は核(開発)活動を止めなかったという批判もあるが、交渉中断期間の北朝鮮の核開発の速度には比較にならない。凍結とは車のギアを後退(R)から前進(D)へとシフトする前に欠かせない段階だ。中間段階は核兵器の数を減らすことだ。当然、脅威削減(threat reduction)は相互主義で進められなければならない。核軍縮をするからといって、非核化という最終目標を放棄する必要はない。軍縮と非核化は選択の問題ではなく、一つの過程であるからだ。

 段階論は交渉の常識であり、あえて言う必要までもないことだ。バイデン政権が外交を展開するためには、すなわち交渉を始めるためには、段階論ではなく並行論を掲げなければならない。段階的な非核化に向けた段階的な相応措置を示す必要がある。ウクライナと中東の2つの戦争により、バイデン政権にとっては朝鮮半島の緊張を管理する必要性が高まった。しかし、脅威を解消する意志がない限り、脅威を管理することは難しい。現状維持は努力してこそ得られるものであり、放置の結果ではない。

 米国に交渉の意志があるなら、中国も動く可能性がある。中国は過去と違い、もはや朝米両国の仲裁者ではない。朝鮮半島が軍事分野における米中戦略競争の舞台になると、中国は当然、北朝鮮の非核化よりも米国との戦略競争をより重要に考慮するだろう。ただし、米中ともに戦略競争の速度を調節しようとしている。北東アジアの秩序において北朝鮮の非核化に対する米中の共感もまだ有効だ。非核化交渉の扉が完全に閉ざされる直前の今が、おそらく北朝鮮の非核化に向けた米中協力の最後のチャンスだ。

 日本も動いている。両国から流れている朝日首脳会談の可能性に関する発言からして、水面下で調整が行われていることが分かる。この20年間、朝日関係を後退させた拉致問題の出口を水面上で見つけることができるかどうかは見守らなければならない。水面下で調整しても、水面上の課題、すなわち北朝鮮に対する嫌悪と不信感という世論の沼から、果たして抜け出せるかは疑問だ。しかし、日本の外交が動き出しており、北朝鮮がそれに呼応しているのは新たな現象だ。米大統領選挙後に状況が変われば、日本も仲裁者になる可能性がある。

 ところで、南北関係なくして非核化交渉が可能なのだろうか。一言でいうと、不可能だ。非核化に相応する措置の中核となるのは平和体制であり、その中の核心が軍事的信頼の構築だ。その当事者は言うまでもなく南北だ。誰にも代えられない課題だ。南北関係が現在のままであれば、平和体制は一歩も進まず、当然、非核化の段階も前進できない。非核化交渉は朝米2カ国間関係では不可能だ。朝米ジュネーブ合意があった1994年に比べ、軍事的信頼構築の当事者である韓国軍の地位と役割が変わったためだ。

 朝鮮半島のすべての周辺国で外交が動き始めた。現在の外交の目的は、脅威の削減ではなく、脅威の管理にある。まだ交渉の意志を確認することは難しく、この程度で局面を転換することも難しい。しかし、外交には不可能なことを可能にする政治の力がある。韓国の外交はどこにあるのか。理念を追い求め情勢の管理をおろそかにすると、やがて外交の時間が到来した時に孤立し、非核化交渉の障害になるだろう。2000年代初め、6カ国協議の局面で拉致問題の沼にはまり、外交を放棄した日本の屈辱を思い出す必要がある。

//ハンギョレ新聞社
キム・ヨンチョル | 元統一部長官・仁済大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1132624.html韓国語原文入力:2024-03-17 18:42
訳H.J

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