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[コラム]冷酷な半導体戦争、超格差をリードする人材はどこに=韓国

登録:2024-03-03 19:41 修正:2024-03-04 07:41
インテルのパット・ゲルシンガー最高経営者が先月21日(現地時間)、米カリフォルニア州サンノゼで開かれた「インテル・ファウンドリフォーラム」(Direct Connect)で先端工程のロードマップを発表している=サンノゼ/オク・キウォン記者//ハンギョレ新聞社

 「過去50年間は石油埋蔵地が地政学的覇権を決定した。これからは半導体生産基地がどこにあるかがさらに重要になるだろう」

 米国の半導体企業インテルの最高経営者パット・ゲルシンガーが最近言った言葉だ。彼の言葉通り、半導体をめぐる最近の競争は経済論理を超える。韓国の半導体産業は国際分業構造に乗って成功の機会をつかんだが、今は風が逆に吹いている。

 米中覇権競争が始まってから、半導体は電子部品を超えて戦略物資となった。人工知能(AI)チップのような先端半導体のみならず自動車用汎用半導体にいたるまで安定的に確保することは、企業と政府が「二人三脚」で繰り広げる国家対抗戦になった。自由貿易の規範などは眼中にないかのように政府は莫大な補助金を投入し、企業は自国の企業を誠心誠意後押しする。

 米国は最先端半導体の研究・開発、設計、生産が自国で行われる圧倒的な地位に戻ろうとしている。1980年代、日本の半導体が衰えても米国は独走せず、国際分業の枠組みを作ったが、今回は違う。これまでうまくいっていた非メモリー半導体だけでなく、最先端のメモリー半導体も生産し、AIの発達で重要度がさらに高くなったファウンドリ(委託生産)でも強者になるという。

 インテルが先月末、ファウンドリで1.4ナノ(ナノは10億分の1メートル)工程を2027年までに達成するという計画を打ち出したのは、ファウンドリ2位のサムスン電子を追い抜くという宣言だ。シェア1%の後発走者であるにもかかわらず、マイクロソフトのような米国企業は150億ドルの注文を集中させ、米政府は近いうちに100億ドルの補助金を出す計画だ。DRAM3位の米マイクロンの動きも尋常ではない。マイクロンは、韓国のSKハイニックスとサムスン電子が開発し未来の主要製品にしようとしているHBM(高帯域幅メモリー)市場に、韓国に近接した技術水準の製品で挑戦状を出した。マイクロンが脅威的なのは、補助金と自国企業への支援を背負って出てくるためだ。

 日本も官民が総力戦を繰り広げている。先月末に竣工した熊本県のTSMCファウンドリ工場が象徴的だ。日本政府が投資額の半分近くを補助金として支給し、50年間縛っていたグリーンベルトまで解除するという行政上の便宜を提供し、5年かかる工場をその半分で建設した。自国の持つ半導体素材・部品・装備の強みをTSMCの製造能力と結合させ、国内の生産能力を拡大し、半導体強国復帰のエンジンをかけようというのが日本の夢だ。その過程で日本と台湾の密着が目立ち、韓国は相対的に疎外されている。

 皆が積極的に乗り出しているため、競争へのプレッシャーは日増しに大きくなっている。最近火がついたAI半導体競争で韓国が後れを取っているのは、連日新高値を更新する米国、日本にくらべ低調な韓国の株価が示している。何よりサムスン電子が揺らいでいるようで残念だ。サムスンはメモリーでHBM市場の展望を過小評価した結果、SKハイニックスに先手を奪われた。先端工程を微細化するのには優れた能力を見せたが、パッケージングのような後工程は疎かにし、NVIDIAやアップルのような大型取引先をTSMCに渡してしまった。

 まだ挽回する時間は残っている。その道は技術力をつけることだ。他国のように数兆ウォン(数千億円)の補助金を財政で支援することも、行政便宜を果敢に提供することも難しいのが韓国の現実だ。2位に圧倒的な差をつける「超格差」戦略は、サムスン電子が約30年間にわたりメモリー1位を維持した方法でもある。

 超格差を作り出すためには、人材が基礎科学と工学分野で育成されなければならない。半導体覇権の回復を宣言した米国は、10年間で半導体専攻者を3倍に増やすとし、これを1960年代に月に行く計画だった「ムーンショットプロジェクト」に例える。しかし、韓国は依然として優秀な理工系人材の医学部偏重が続いている。今年の韓国の入試で、上位圏大学の自然系列や半導体関連の学科の未登録学生の割合が昨年よりも高くなったという。彼らは大半が重複して合格した医薬学系列に入ったとみられる。医学部の定員が拡大されれば、今後数年間、医学部への偏りはさらに激しくなるだろう。

 大統領の一言で研究開発予算が削減され、大学院生の研究員のポストがなくなるのが韓国だ。進むべき道とは反対となる腑抜けたシグナルを、これ以上若者たちに与えてはならない。私たちはAIが主導する巨大な変革の入り口に立っている。半導体はその中核だ。ここで後れを取れば、長く二流で暮らさなければならないかもしれない。

//ハンギョレ新聞社
イ・ボンヒョン|経済社会研究院長兼論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1130661.html韓国語原文入力:2024-03-03 14:44
訳J.S

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