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[コラム]ウクライナ侵攻から2年、金正恩委員長の「ロングゲーム」

登録:2024-02-19 06:39 修正:2024-09-24 07:23
北朝鮮の金正恩国務委員長とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が昨年9月13日、ロシアのアムール州のボストーチヌイ宇宙基地を視察している/ロイター・聯合ニュース

 2年前の2月24日、ロシアがウクライナに侵攻した。この日を基点に、私たちの見慣れた世界は消えた。ウクライナとガザ地区で続いている残酷な戦争は、国際秩序を崩壊させ、世界各地でさらなる戦争の危険性を高めている。

 秩序の亀裂を最も果敢に活用しているのは、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長だ。ロシアの侵攻直後、金委員長は真っ先に「ロシア側」に立つことを選んだ。2022年2月28日、国連総会はロシアのウクライナ領土と主権侵犯を批判し、ロシアが直ちに、完全に、無条件に撤退することを求める決議を採択したが、これに反対票を投じた7カ国のうちの一つが北朝鮮だ。中国は棄権した。

 それから2年が経った今、金委員長は、自分が戦略の天才だと思っていることだろう。2019年2月、ハノイで開かれた当時のドナルド・トランプ米大統領との朝米首脳会談が物別れに終わったことで、絶体絶命の危機に陥っていた金委員長は、今や北朝鮮史上最も有利な国際情勢のもと、勝つゲームをしていると考え、いつになく大胆になった。核とミサイル能力を大胆に強化し、韓国は「同族ではなく永遠の主敵」だと宣言して威嚇を続けている。

 先月「金正恩が戦争をする戦略的決心をした」という米国の専門家であるミドルベリー国際問題研究所のロバート・カーリン研究員とジークフリード・ヘッカー博士の警告が出てきたうえ、北朝鮮が西海(ソヘ)の延坪島(ヨンピョンド)と白ニョン島(ペンニョンド)一帯で砲射撃をしたことで、戦争危機論が急速に高まった。金融市場も揺れ動いた。それまで北朝鮮の挑発に「即時に、強力に、最後まで報復する」と自信満々だったシン・ウォンシク国防長官は、あっという間に前言を翻し、「吠える犬は噛まない」として、北朝鮮が戦争をするはずがないと豪語した。北朝鮮が戦争に必要な砲弾数百万発などをロシアに輸出しているため、戦争が起きるはずがないという主張だ。シン長官をはじめとする韓国政府当局者らが北朝鮮の戦略を過小評価し、直ちに戦争が起きない限り何も問題がないかのように狭い視野と単純な論理に閉じ込もっているのは、実に無責任と言わざるを得ない。

 北朝鮮は10年以上にわたり、未来を見据えた「ロングゲーム」をしている。ハノイ首脳会談の失敗後、金委員長の戦略は「米国を大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射ミサイルに搭載した核で威嚇して朝鮮半島への介入を困難にし、韓国を戦術核で威嚇して武力占領、または従属国家にする機会を待つ」ということだ。現在の韓国と米国の圧倒的な軍事力と経済力を考えれば、正気ではなく虚勢に過ぎないとみられても仕方がない。

 ところが、金委員長は今年1月に40歳になったばかりだ。任期もない。10歳の娘、ジュエさんに20年後に富強になった国を継承させるという「強国夢」を膨らませている。金委員長は2021年1月の労働党大会で、新型戦術核兵器の開発を指示し、戦術核運用部隊を編成して韓国の主要施設を狙った戦術核攻撃訓練を続けた。2022年9月8日には核武力政策法を制定し、核先制使用の条件を明示した。

 このような状況で、ウクライナを速戦即決で占領して親ロシア政府を立てようとしたロシアの初期戦略が失敗し、長期戦の泥沼に陥ったウラジーミル・プーチン大統領が北朝鮮と手を組んだ。北朝鮮だけがロシアに大規模に兵器を供与できる国家であり、米国に共に対応するという戦略的必要性も大きかった。2023年から北朝鮮はロシアとの戦略的協力を急速に強化し、軍事・経済・外交的に非常に有利な立場に立った。兵器販売と労働力の派遣などで経済状況も改善しており、先端軍事技術も提供してもらえる。

 朝ロ密着で大胆になった金委員長にとって、引き続き国際情勢は北朝鮮に有利な流れに変わりつつある。ウクライナとガザ地区で米国は秩序を回復できずにいる。米国主導の国際秩序に亀裂が深まっている。「金をきちんと払わないNATOの同盟はロシアが勝手に(侵攻)するように煽る」と宣言したドナルド・トランプ前大統領が今年11月の米大統領選で再選を果たせば、米国の同盟構造の将来は危うい。韓米同盟も、在韓米軍防衛費の分担金の大幅な引き上げの要求、在韓米軍撤退の脅し、米戦略兵器展開の巨額の費用請求などで大きく揺れるだろう。ジョー・バイデン大統領が再び政権に就けば同盟は時間を稼げるかもしれないが、米国内で高まる孤立主義世論のため、米国の安全保障の傘に対する疑念は消えないだろう。

 北朝鮮の考えるもう一つの重要なポイントは、中国をどれだけ引き入れられるかだ。今のところ、中国は朝ロ密着をそれほど快く思っていないが、「北朝鮮の管理」を米国との交渉でカードとして使う姿勢を見せている。だが、台湾問題が危うくなるほど、中国で北朝鮮の戦略的重要性は大きくなるだろう。

 金委員長は日本にも門戸を開いている。日本が北朝鮮との対話の名目として「拉致問題解決」を掲げるのは国内政治的必要性のためだが、その裏には北朝鮮の核・ミサイルが日増しに脅威を増す状況で、北朝鮮と対話チャンネルを開いて日本の安全保障における危険性を減らそうとする思惑がある。米国も北朝鮮管理のために日本の対話の試みを支持している。北朝鮮は、韓国を孤立させるために日本に対話のシグナルを送り続けるだろう。

 北朝鮮はユーラシア東西の情勢、国際秩序の長期的流れを総合的に読みながら「ロングゲーム」を繰り広げている。今年、延坪島と白ニョン島の北方海域での挑発を予告しており、韓国に対する挑発と脅威を引き続き強めていくだろう。韓国が国際情勢を正確に読み取り、精巧な戦略を立て、自強能力を育てていくならば、それに備える時間と能力はある。金委員長の計画を「平和的共存」に変えさせる精巧な戦略が必要だ。しかし、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が北朝鮮を過小評価する時代遅れの「北朝鮮崩壊論」から抜け出せず、「(米国の)力による平和」だけを叫び続けるなら、韓国に残っているチャンスと能力まで消えてしまうだろう。

//ハンギョレ新聞社
パク・ミンヒ│論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1128759.html韓国語原文入力:2024-02-18 18:40
訳H.J

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