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[社説]尹大統領、夫人に対する特検法への拒否権は権力私有化批判を強めるだけ

登録:2024-01-05 08:35 修正:2024-01-05 09:23
尹錫悦大統領が4日、京畿道龍仁市の中小企業人材開発院で「国民と共にする民生討論会」のかたちで行われた企画財政部の2024年新年業務報告で、冒頭に発言している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 韓国の国会が4日、「キム・ゴンヒ特検法」を政府に移送した。先月28日に国会本会議で可決されてから1週間。大統領室は5日、直ちに臨時国務会議を招集し、大統領による拒否権行使の手順を踏む方針だという。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は2日にもキム・ゴンヒ特検法の政府移送の可能性に備え、新年最初の国務会議を午前から午後に先送りし、即時の拒否権行使を準備している。新年の国政の方向性を議論すべき最初の国務会議を「キム・ゴンヒを守るためのもの」にしようとしたとは、あきれてものが言えない。そして今回もだ。これが毎週火曜日に開かれる定例の国務会議を繰り上げなければならないほど急を要する国政事案なのか。まるで「キム・ゴンヒ女史のご機嫌」を不快にさせる時間を最大限短縮しようとしているかのように映るだけだ。また、キム女史に対する捜査を阻止するために、国政にまい進すべき国務委員を単なる挙手機械として使うということではないか。しかし、このように必死に妻の防衛にしがみつけばつくほど、このように無理な手を使わざるを得ないのではないかという国民的疑惑が膨らむばかりだ。

 すべての国政懸案に優先して配偶者を守るための拒否権行使を推し進める尹大統領の姿は、国を率いる大統領というよりは、妻を守るために全力を傾ける一家庭の夫にしか見えない。これには、国民が委任した大統領の権限を私的に乱用する反憲法的行為だ、との批判の声があがっている。糧穀管理法など、尹大統領がこれまでに行使してきた拒否権が政策的法案に限られていたのとは異なり、今回は家族の犯罪容疑を捜査する特検法案が対象だ。このような明らかな利害衝突事案に対しては、権限使用を回避・自制するのが妥当だ。しかし今、尹大統領は公的事案に例外的に行使すべき大統領の権限を、単なる配偶者の防衛のために私的に使おうとしている。尹政権発足後、すでに殻だけとなっている「常識と公正」を完全に破壊するものだ。

 また、特検を望む大半の民意にも反する。特検法可決後に実施された新年の各種世論調査では、特検賛成および拒否権反対の回答は例外なく65%前後に達している。検察が2020年4月の最初の告発から4年近く手をつけずにいたキム女史の疑惑について、今や特検によって結論を下すべき、というのが圧倒的な民意であることを物語っている。尹大統領は昨年10月、「国民は常に正しい」と述べている。今になって民意に背を向け、配偶者の防衛に血眼になっている。この国の主権者である国民がいつまでそれを許すと思うのか。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1123051.html韓国語原文入力:2024-01-04 18:49
訳D.K

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