韓国政府が来年度の予算増加率を2.8%に抑えた。景気低迷にもかかわらず、非常に低い伸び率だ。ところが、外交統一分野の予算はなんと19%も増やした。12分野の中で最も大きい増加幅で、17%ほど減った研究開発(R&D)予算と対比を成している。緊縮基調の中で、外交統一分野がなぜこれほど増えたのだろうか。統一分野の予算が増加したはずがないため、答えは外交にある。外交分野予算の半分以上を占める対外援助(ODA)が前年に比べてなんと45%、金額では1兆8千億ウォン(約1980億円)ほど増えた。予算編成で緊縮基調を強調した尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が、なぜ援助予算はこれまで類を見ないほど大幅に増やしたのだろうか。
一般的に保守政権は援助には消極的だ。実際、尹錫悦政権の120大国政課題のどこにも対外援助規模の増額に関する言及はない。だから、今年6月、首相室が来年の援助を大幅に増額すると発表した時、この分野の専門家たちは皆驚かざるを得なかった。この謎が解けたのは、釜山万博誘致失敗のエピソードを読んでからだった。オイルマネーをばらまきながら万博の誘致に積極的だったサウジアラビアに対応するため、韓国も発展途上国への援助を熱心に約束していたという。これを裏付けるため、来年度の援助予算を増やすしかなかったのだ。
対外援助の中でも人道支援予算の大幅な増加がこのような心証を裏付けている。一般的に援助が予算に反映されるためには、2~3年前から準備し発展途上国政府と合意が行われなければならない。ところが人道支援予算はこのような準備なしに、そして特定事業に縛られることなく、政府が自由に使うことができる。首相室の発表によると、この予算が今年4千億ウォン(約440億円)から来年1兆1千億ウォン(約1200憶円)に増加する。増加額は7千億ウォン(約760億円)、増加率は188%だ。通常、全体援助の10%に過ぎない人道支援がこれほど急速に増えるとは、極めて異常だ。
韓国の援助規模が経済規模や国際社会の地位に比べて小さいのは事実だ。今後も増やしながら、途上国の貧困脱出と発展に貢献し、また国際社会で韓国の国格と非可視的な力、すなわちソフトパワーも高めなければならない。このような目的を達成するためにも、万博のような国際行事誘致のために援助予算を使うことは望ましくない。しかも、競争相手がサウジアラビアなら、資金支援で票を得るという戦略は大きく間違っていた。サウジアラビアをはじめ中東の産油国はすでに20年余り前から膨大な規模の国富ファンドを利用し、海外プロスポーツ球団の買収とW杯など国際行事誘致に乗り出し、世界を牛耳っている。韓国はそのようなオイルマネーを持っているわけでもなく、その資金を国家指導者が自由に使える王政国家でもない。
韓国政府は常に自由と人権、人道主義のような普遍的価値実現のための外交を強調する。ところが、国際行事誘致のために相当な規模の援助資金を使ったという事実を他の援助供与国が知ったらどう思うだろうか。どの国も発展途上国に援助する際、自分たちの利益も考慮する。しかし、その利益は国際行事の誘致や自国商品の輸出のような直接的利益ではない。そんな利益と結び付ければ、援助をしてもソフトパワーが上がるどころか、むしろ下がるだろう。長期的な支援計画と準備のない一回限りの支援は発展途上国にとっても役に立たない。
韓国の対外援助政策には改善すべき点が多い。規模が小さいという点は長期的な目標を立て、それに応じて着実に増やしていけば良い。さらに大きな問題は他のところにある。まず、対外援助の戦略的目標がなく、これに責任を持って管理する政府省庁もない。貸付で提供される資金には、韓国製品の購入だけに使わなければならないという条件がついており、発展途上国がむしろ受け取ることを敬遠している。半世紀前、援助を輸出支援の手段として利用していた遺産を、世界10位の貿易大国になった今も捨てられず、国際的にひんしゅくを買っている。
グローバル中枢国家を目指す政府が、今回を機にこのような問題を解決していくことを期待する。対外援助が本来の位置を取り戻すためには、何よりも国会の関心が必要だ。他の先進国では援助政策が政権のアイデンティティを規定する重要なイシューであるため、議会で激しい論争が繰り広げられる。しかし、韓国では与野党いずれもこの問題に関心がない。韓国はすでに国際外交の辺境にとどまることのできない、そして留まってはならない国になった。