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[コラム]尹錫悦大統領、「月一外遊」の外交大統領?

登録:2023-11-20 06:31 修正:2023-11-20 08:35
尹錫悦大統領の月一の外遊=キム・ジェウク画伯//ハンギョレ新聞社

 日本で在任期間が最長の首相だった故安倍晋三元首相の外交スローガンは「地球儀を俯瞰する外交」だった。米日同盟を強化すると同時に、日本を中心に世界各地を結び、影響力を拡大した。現在、米国のアジア政策の設計図である「自由で開かれたインド太平洋」とクアッド(Quad)が安倍氏の構想から始まったことはよく知られている。安倍氏は米国と密着しながらも、中国の「一帯一路」に参加する意思を明らかにし、ロシアやイランなどとも独自の外交を追求した。安倍元首相は2012から2020年の8年間、81回の外遊を行った。年に約10回に割合であり、日本はもちろん世界的にも珍しい記録だ。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はその記録を上回る勢いだ。先週はアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に出席するため米国のサンフランシスコを訪問し、18日に帰国した。20~25日には英国とフランス訪問に乗り出す。12月にはオランダを国賓訪問し、他の欧州諸国への訪問も進めている。昨年5月10日の就任から今年12月までの19カ月間で16回の外遊を行なった。ほぼ「月一」の割合で海外を訪問したということだ。訪問国は18カ国で、米国(5回)、日本(2回)、英国(2回)、フランス(2回)などは数回にわたり訪問した。

 今年予定されていた首脳外交の予算249億ウォン(約28億7300万円)をはるかに上回り、予備費329億ウォン(約37億9700万円)を加えた578億ウォン(約66億7千万円)を使ったが、大半が外遊に費やされた。朴槿恵(パク・クネ)政権時代に年平均182億ウォン(約21億円)、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に年平均163億ウォン(約18億8100万円)だった首脳外交の予算が大幅に増えた。来年にはさらに増額されるという「豪華外遊予算」をめぐり、国会でも議論になっている。

 外交専門家らは外遊予算をめぐる疑問点が多すぎると指摘する。厳格な計画と国会の審査を経て策定した予算が2倍以上増える状況は前例のないことだ。同じ地域はまとめて訪問すべきなのに、英国・フランスへの訪問から帰国して数日も立たないうちにオランダを訪問するなど、予算を無駄にする動線も極めて異例のことだ。「無理な外遊」日程を決めたという意味だ。韓国の地位が高まり、国賓訪問の招待が増えたというが、実際には大統領室の指示に従い、現地公館が国賓訪問に格を上げて実現させる場合が多いというのが外交関係者の常識だ。「贈り物」などに策定された予算が具体的にどのように使われたのかも検証できない。多くの税金を使いながら外遊のたびに同行する夫人のキム・ゴンヒ女史の日程については、マスコミ取材も遮断される。大統領室が「写真集」並みの写真を提供するだけだ。

 大統領室は「1年間で地球を2周半回った」とし、「第1号セールスマン外交」と自画自賛する。ところが、国際的な評価は全く違う。国際通貨基金(IMF)は今年の韓国成長率見通しを1.4%に下方修正しており、韓国の輸出と製造業の危機に対する警告音が鳴り続けている。大統領室は苦しまぎれに、外遊による武器輸出の成果を大々的に広報している。どんな国も首脳自らが武器輸出を自慢したりはしないという常識を覆している。きちんとした戦略も立てず、頻繁に海外訪問に出かけるからといって「外交大統領」とはいえない。国の未来がかかった研究開発(R&D)予算を16.6%も削っておいて巨額の税金を使っている「外遊カルテル」にも厳しい目を向けるべきだ。

パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1116879.html韓国語原文入力:2023-11-19 18:41
訳H.J

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