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[コラム]尹大統領夫妻の「確定的重犯罪疑惑」対処法

登録:2023-09-27 00:53 修正:2023-09-27 07:21
ソン・ウォンジェ|論説委員
NATO首脳会議を終えた尹錫悦大統領が夫人のキム・ゴンヒ女史とともに7月13日(現地時間)、ポーランドのワルシャワ・ショパン国際空港に到着し、手を振っている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 「イ・ジェミョン問題」の後ろに隠れてしまっている重要な事が一つある。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫妻こそ、共に重犯罪の疑惑が持たれているということだ。大統領夫妻が共に重犯罪の疑惑を持たれているという、憲政史上初の事態が目の前で繰り広げられているのだ。尹大統領は大統領候補だった2年前、大庄洞(テジャンドン)疑惑についての検察の捜査結果も出ていないのに、野党「共に民主党」のイ・ジェミョン候補(当時)を「確定的重犯罪候補」と称している。だから今、尹大統領夫妻に「確定的重犯罪夫婦」という表現を突き返しても、不当だとは思わないだろう。しかし、ここではジャーナリズムの原則に則って「疑惑」という語は外さないでおくことにする。

 株価操作は資本市場秩序をかく乱して企業活動を妨害するとともに、一般投資家を餌食にする重大犯罪だ。米国では懲罰的罰金と長期の懲役刑で断罪する。キム・ゴンヒ女史は、まさにこの株価操作に介入した疑惑が持たれている。ドイツモーターズの株価操作の共犯者たちに対する2月10日の一審有罪判決で、キム女史の疑惑はさらに深まった。裁判所は、キム女史の2つの口座が株価操作グループによって運用されていたと指摘した。有罪とされた102件のなれ合い売買と仮装売買のうち「キム・ゴンヒ口座」による取引は48件にものぼった。

 裁判所は、これらの取引をキム女史が自ら行ったかどうかは確定できないとしながらも、他の共犯者たちに一任されるか、少なくとも彼らの意思や指示に沿って運用された口座とみることができると述べた。先立ってこの事件の公判検事は、キム女史が中心的な共犯者たちから連絡を受けて自ら取引する構造だったことを、裁判の過程で示している。検事と裁判所はいずれもキム女史の介入疑惑を、公判での陳述と判決で指摘しているのだ。

 尹大統領本人は、海兵隊のチェ上等兵死亡事件の捜査に外圧を行使した疑いが持たれている。海兵隊第1師団長に業務上過失致死容疑を適用した海兵隊捜査団の調査結果に激怒し、国防部長官を叱責したという疑いだ。その前日に「捜査がうまくいった」として快く決裁のサインをした国防部長官が、わずか20時間後にこれを覆し、「容疑を特定するな」と指示している。他でもない国防部の検察団が、海兵隊の前捜査団長の抗命罪容疑による拘束令状で指摘している内容だ。すでに決裁も終えていた国防部長官の決定を変えられるのは、長官より強い大統領をおいて他にない。このような見方は常識的なものだ。

 海兵隊の前捜査団長は「大統領の激怒と叱責」について海兵隊司令官から直に聞いたと述べている。その海兵隊司令官は、国家安保室第2次長、安保室に派遣されている海兵隊の大佐らと電話で話したことを認めている。海兵隊司令官と安保室、国防部関係者の秘密通話をフォレンジックすれば、難なく大統領の外圧疑惑の実体に近づけるだろう。

 大統領は軍の統帥権者だが、具体的な事件捜査への介入は犯罪だ。「特定の人物の容疑を外せ」と国防部長官を怒鳴りつけたとすれば、捜査機関の独立性と中立性を侵害し、長官に不当な指示を遂行させた国紀ぶん乱級の職権乱用だ。最近の国会での対政府質問では、これほどの重大な法律違反は事実であればそのまま弾劾事由になりうると、複数の民主党議員が警告している。

 このような深刻な疑惑すら、「尹錫悦師団」が掌握する検察は傍観している。国会による国政調査と特検などの中立的な捜査が唯一の代案だ。そして、それを可能にする責任は結局、野党第一党の民主党にある。

 だが、今の民主党の状況は暗うつだ。キム女史の株価操作疑惑の特検法案は4月、与党「国民の力」と野党「時代転換」のチョ・ジョンフン議員の反対を勝ち抜いて、辛うじてファストトラックに乗った。だが、12月の本会議で可決されるかは不確実性が高まっている。民主党が7日に発議した尹大統領の捜査外圧疑惑についての特検法案も、現国会の任期満了前にファストトラック指定と表決にまで進めるかは断言が難しくなっている。イ代表の逮捕同意案の採決をめぐる対立に触発され、民主党が分裂する可能性があるからだ。

 民主党が内紛を迅速に収拾できなければ、支持層の分裂と中道層の離反が重なり、総選挙にも暗雲が立ち込める恐れがある。大統領夫妻の重犯罪疑惑の究明と審判も遠ざかりうる。

 今は沈黙している合理的な声が党内からあがるべき時が来ている。強圧的な報復主張はもう静まらなければならない。イ・タンヒ議員のような端正で理性的な意見が噴出しなければならない。責任と権限のいずれも最も大きいイ代表も、この決定的な局面だけは国民の多数が共感しうる包容と献身のリーダーシップを示さなければならない。正義を示すことができるのは分裂ではなく、統合と協力だけだ。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ウォンジェ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1110202.html韓国語原文入力:2023-09-26 16:44
訳D.K

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