政府による日帝強制動員の被害者に対する賠償金の「第三者弁済」のための供託は、裁判所で相次いでブレーキがかかったにもかかわらず、止まっていない。裁判所の決定は、債権者である強制動員被害者の意思に反する供託はできないという、極めて当然の法理的判断だ。にもかかわらず政府は、元最高裁判事の弁護士まで選任して抗告するなど、日本の戦犯企業の弁済の肩代わりを推し進めている。日本企業が負担すべき訴訟費用すら韓国政府が負担するという、理解できないことまで起きている。一体どこの国の政府なのか分からない。
行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団は22日に故パク・ヘオクさん事件、23日にヤン・グムドクさん、イ・チュンシクさん事件について、各々抗告状を提出した。全州(チョンジュ)地方裁判所と光州(クァンジュ)地方裁判所が政府の供託を不受理としたため異議を申し立てたが、それさえも棄却されたため抗告したのだ。異議申し立て事件で政府の代理人を務める弁護団は「憲法が保障する良心の自由に則り、何人たりとも謝罪を強制することはできない」という荒唐無稽な論理を展開したかと思えば、「債務者(日本企業)が直接弁済しようが第三者(財団)が弁済しようが、何の違いもない」という強引な主張を行ってもいる。強制動員被害者の要求を「金銭的満足」にわい小化する分別なき認識であるばかりか、被害者に対する最小限の礼儀もないものだ。これに対して全州地方裁判所民事12単独のカン・ドングク判事は「加害者(日本企業)が賠償すべき損害は精神的苦痛に起因する慰謝料であるため、債権者(強制動員被害者)が明示的に反対しているにもかかわらず利害関係のない第三者(財団)による返済を認めることは、損害賠償制度の趣旨と機能の無視を招く恐れがある」と一喝した。光州地裁民事44単独のカン・エラン判事も「政府の供託を認めれば、日本の戦犯企業に対して免罪符が与えられる可能性がある」と指摘した。
政府はヤン・グムドクさん事件の弁護人にミン・イリョン元最高裁判事を含む大手法律事務所の複数の弁護士を選任した。この事件は政府が抗告しても裁判所の判断が変わる可能性はほとんどない。それでも政府が抗告手続きを継続するのは、最高裁まで引っ張ることを意図したものとみられる。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の任期中に最高裁長官をはじめ、保守に優位な構図へと再編される最高裁において、何かを企てようというのか。市民たちは先日、第三者弁済を拒否した強制動員被害者と遺族を応援するために、4億ウォンの寄付金を渡した。政府は市民に対して恥ずかしくないのか。