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[寄稿]MBC記者の死と放送通信委員長の復活

登録:2023-08-23 00:40 修正:2023-09-04 14:16
イ・ジンスン|財団法人ワグル理事長
イ・ドングァン放送通信委員長候補と文化放送(MBC)の故イ・ヨンマ記者/聯合ニュース、文化放送

 4年前の今日(8月23日)、文化放送(MBC)の前で路上葬儀があった。働き盛りで腹膜がんとの診断を受けて闘病していたイ・ヨンマ記者が、若い妻と双子の息子を残してこの世に別れを告げた日だった。サムスンの不正を粘り強く暴いた根性ある記者であり、権力エリートの横暴を一歩も引かずに告発したジャーナリストだった。彼は労組の広報局長として2012年に公正な放送を守るためのストライキを率い、「社内秩序を乱した」との理由で解雇された。解雇期間中に病を得た彼は、5年9カ月ぶりの復職時にはすでに手の施せない末期がん患者となっていた。彼の願いは「MBCニュース、イ・ヨンマです」と再び力強く叫ぶことだったが、その夢はついにかなわなかった。

2012年の文化放送ストライキ当時に解職され、2017年に復職したイ・ヨンマ記者=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 イ・ヨンマ記者を死地に追いやったのは、緻密で組織的なメディア瓦解工作だった。李明博(イ・ミョンバク)政権時代の2010年、国家情報院は「MBC正常化戦略および推進策」という文書を作成したが、これには「(1)人的刷新と番組からの退出(2)労組の無力化(3)MBC民営化」という3段階の放送掌握戦略が含まれている。この文書を作成するよう指示した人物は、当時の大統領府の広報首席だと記録されているが、当事者であるイ・ドングァンは「知らない」と否定している。「私がもしメディアを掌握するために何らかの指示、実行そして明確な結果が出ていたとしたら、私は今日この場に立てたでしょうか」と問い返す彼の表情には、いかにも余裕があふれている。

 実際のところ、私もそれが知りたい。どうしてイ・ドングァンは再び公職に指名され得たのか。2017年に広報首席の指揮の下、国情院の企画案どおりにメディア掌握プロジェクトが執行されたという事実を暴き出したのがソウル中央地検だ。当時の地検長だった尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、彼を放通委員長に指名したのだから、イ・ドングァンのメディア掌握の前歴は犯罪的欠陥ではなく、むしろ大統領が必要とする「専門性」だったと考えるべきなのだろうか。

 日帝強占期に独立闘士を逮捕、拷問していたノ・ドクスルが解放後は首都警察庁の捜査課長に起用され、李承晩(イ・スンマン)政権の下で大手を振るったのと似たような脈絡だとみられる。李承晩は権力を安定させるために「赤狩り」を必要としていたし、その仕事を任せるに足る「技術者」を欲していた。義烈団団長のキム・ウォンボンですら、解放された祖国で親日警察ノ・ドクスルに連行されて頬を殴られるという屈辱にあったと伝えられている。

 李承晩の忠犬として寵愛されたノ・ドクスルは、1949年に反民族行為特別調査委員会(反民特委)に逮捕されたものの、「国に緊要に使われる技術者」だとの理由で釈放され、叙勲の根拠も不詳のまま花郎および忠武武功勲章を3つも授与された。華麗な復活だ。処罰してしかるべき旧時代の人士を要職に起用し、その専門性を再利用する「指導者の見識」には驚かされるばかりだ。

 昼ドラのような政治はレトロなレパートリーを無限に繰り返す。尹錫悦大統領は光復節の祝辞で「共産全体主義勢力は民主主義運動家、人権運動家、進歩主義行動家に偽装し、虚偽扇動と下品で破倫的な工作を日常のように行っている」とぶちあげた。人権と民主主義を論じたり、尹錫悦政権を批判したりすれば共産党、全体主義者、果ては倫理破壊者になる。尹錫悦の自由主義の中では、ただ一つの意見のみが自由だ。「この政権のすべては完璧だ!」

 イ・ドングァンは大統領の思想的パートナーとして遜色ない。東亜日報の政治部長時代に「ニューライト」特集によって新たなイデオロギーブームを巻き起こした自称「スピンドクター」らしく、イ・ドングァンは古びた反共主義の骨組みに自由主義のアクセサリーをつけて昔の物をリフォームする名人だ。問題は、その論理が実際と合わないため、自己矛盾でしばしばステップがもつれるところにある。

 イ・ドングァンは「検証し疑い確認することで、客観的で公正な真実を伝える」のがメディアの本領であり、党派的な論理を無責任に広めるのは「共産党機関紙」だと述べているが、それが本心なら彼は朝鮮・中央・東亜日報のことを共産党機関紙だと宣言すべきだ。民主言論市民連合がイ・ドングァンの指名から人事聴聞会直前までの報道を分析した報告書によると、イ・ドングァンに関する報道量が最も少ないメディアこそ朝中東であり、「検証、疑い、確認」の手続きなしに候補者の立場ばかりをそのまま広めている記事の割合が最も高いメディアもやはり朝中東だ。イ・ドングァンの言う共産党機関紙とは、権力を批判しけん制するメディアのみに当てはまる言葉なのか。それは自由主義ではなくマッカーシズムだ。

 改めてイ・ヨンマ記者のことを考える。彼が幼い2人の息子が成人後に読んでくれることを願って、闘病期間の最後に魂を込めて記した本のタイトルは『世の中は変えられます』だ。イ・ヨンマを死に至らしめた放送掌握の総司令官イ・ドングァンがカムバックする混乱した世の中。それでも落胆するのはやめよう。彼の息子たちに、あなたのお父さんの言ったことは正しかったと言えるその時まで、気をしっかり持って耐えなければ。

//ハンギョレ新聞社

イ・ジンスン|財団法人ワグル理事長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1105292.html韓国語原文入力:2023-08-22 15:08
訳D.K

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