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すでに「衛星打ち上げ」に成功したのに、北朝鮮が新たなロケットを打ち上げたわけは

登録:2023-06-05 06:37 修正:2023-06-05 07:54
[ハンギョレS] 来週の質問
北朝鮮が先月31日、平安北道鉄山郡東倉里の新発射場で打ち上げた初の軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載した衛星運搬ロケット「千里馬1型」の打ち上げ場面を「朝鮮中央通信」が1日付で公開した。同ロケットはエンジン異常で西海に墜落した/聯合ニュース

 北朝鮮が先月31日、軍事偵察衛星の打ち上げに失敗した。北朝鮮が直ちに失敗を認めたことに驚いたという意見もあるが、金正恩(キム・ジョンウン)体制で失敗を認めたのは今回が初めてではない。むしろ注目すべきなのは、なぜ失敗したのかかもしれない。

 北朝鮮はすでに2012年12月と2016年2月の2回、衛星の打ち上げに成功した経験がある。衛星情報提供サイト(n2yo.com )によると、当時打ち上げられた「光明星3号機(KMS-3-2)」と「光明星4号機(KMS-4)」は今も軌道に乗っている。光明星3号2号機は372~388キロメートルの高さから92分に1回、光明星4号機は309~318キロメートルの上空で90.7分に1回のペースで地球を一周している。もちろん、これらの衛星が正常に作動しているかどうかは別の問題だが。

 にもかかわらず、北朝鮮はこのような成功事例を捨て、失敗するリスクを冒してまで今回の打ち上げに新型ロケットを使用した。なぜだろうか。正確には分からないが、金正恩体制になってから新たな弾道ミサイルを相次いで開発する過程で蓄積した技術を活用し、7年前より効率的な衛星用ロケット作りを目指しているものとみられる。

 韓国当局は、北朝鮮が2012年12月に光明星3号2号機を宇宙に打ち上げた「銀河3号」ロケットの残骸を西海(ソヘ)から引き上げたことがある。その結果、銀河ロケットの1段推進体がノドンミサイルのエンジン4基を束ねて120トンの推力を出すように設計されたことを明らかにした。韓国軍は今回も「万里鏡1号」衛星を打ち上げた「千里馬1型」ロケットの残骸の一部を西海から回収した。今回はどんな技術を適用したのか、気になるところだ。

 北朝鮮は今回の発射失敗直後、「できるだけ早いうちに2回目の打ち上げを断行する」とし、再び打ち上げを行う意志を示した。「できるだけ早いうち」がいつなのか特定できないが、失敗原因の分析および欠陥の補完などには時間がかかるものとみられる。北朝鮮は2012年に「光明星3号」を打ち上げた時も、1回目の失敗から8カ月後、2回目の打ち上げに成功した前例がある。

 今回の打ち上げについて、韓国や米国など国際社会が「国連安全保障理事会決議違反」と非難したことに対し、キム・ヨジョン朝鮮労働党副部長は「弾道ロケット(ミサイル)技術の利用を禁止した国連安保理の『決議』は、我が国の宇宙利用権を深刻に侵害し、不当に抑圧する極悪非道なもの」だと強く反発した。北朝鮮に対する弾道ミサイル発射禁止は、2009年6月に採択された国連安保理決議第1874号で初めて導入された。直前に光明星2号を打ち上げ、2回目の核実験を強行したことに対する国連安保理の制裁だった。弾道ミサイルが核を運ぶ手段であるため、核開発とともに遮断しなければならないという米国の主張が受け入れられた。今のような国際情勢なら、このような決議案には常任理事国の中国が拒否権を行使し阻止したはずだが、当時中国は、北朝鮮のために唯一の覇権国である米国との正面衝突の危険を冒す意志がなかった時代だった。

 いずれにせよ、国連安保理決議で「弾道ミサイル技術を利用したいかなる発射」も厳しく禁止されているのは地球上で北朝鮮が唯一だから、当事者としては不当に思えるかもしれない。だが、国際社会の反対にもかかわらず、核拡散防止条約(NPT)を脱退し6回も核実験を強行したのは、ほかでもなく北朝鮮ではないか。

パク・ピョンス国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1094458.html韓国語原文入力:2023-06-03 00:59
訳H.J

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