本文に移動

[社説]コロナ隔離義務がなくなっても「体調悪ければ休む権利」保障を

登録:2023-05-11 02:25 修正:2023-05-11 09:24
傷病手当のモデル事業が始まった2022年7月4日、ソウル鍾路区の国民健康保険公団鍾路支社にそれを知らせるバナーが設置されている/聯合ニュース

 韓国政府は11日に、新型コロナウイルスの危機警報を「深刻」から「警戒」に引き下げる。コロナ感染者に対する隔離義務の勧告への変更も当初の予定より繰り上げ、早ければ今月末ごろに実施する方向で調整される。このような措置は、国内外の流行状況などを考慮し、エンデミック(感染症の周期的流行)局面へと転じる過程とみられる。ただし懸念されるのは「体調が悪ければ休む権利」が依然として制度化されていないということだ。一部の事業所ではコロナの確定判定を受けても休めず、職場に行かなければならない状況が発生する可能性があるため、企業規模などの条件によっては感染症の診断と治療で差が大きく広がりうる。

 コロナ禍初年の2020年3月、チョン・ウンギョン疾病管理本部長(当時)は「『具合が悪くても出てくる』という文化が『具合が悪ければ休む』に変わるよう、勤務環境を改善することが必要だ」と述べている。新たな感染症の拡散の遮断が求められる緊迫した状況でなされたこの発言は、韓国社会で大きな反響を呼び、認識と行動の転換点となった。韓国の労働時間は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも最長水準だが、「体調が悪くて休んだ日数」(年間2日、2018年)は最低水準だ。2021年の韓国保健社会研究院の調査によれば、体調の悪い労働者の約30%は適時に十分な治療を受けられておらず、その理由は「職場の雰囲気」(43%)、「所得減少が心配だから」(18%)などだった。大企業が福祉の観点から限定的に運用している有給病気休暇や、OECD加盟国のほとんどが導入している傷病手当(業務外の疾病や負傷にともなう治療期間の所得補填)などが制度化されていないことが大きく影響している。

 防疫措置が緩和されれば、政府が支給してきたコロナ感染者に対する生活支援費や中小企業に対する有給休暇支援費などは断たれる。さらなる感染の広がりと症状悪化を防止するため、隔離は引き続き必要だが、体調が悪くても休むことが難しい人々に対する最小限の支援策はなくなってしまうのだ。傷病手当導入の必要性に共感する声が高まって3年がたつが、政府はまだモデル事業水準にとどまっている。2025年7月以降の全面導入が目標だが、適用対象、給与水準、保障期間、財源の調達方法など、制度設計に向けた議論は始まってさえいない。傷病手当の運営方式は社会的合意の水準に影響され、国によって様々だ。ほとんどが社会保険給与のかたちで保障しており、一部は低所得層に対する租税からの援助のかたちをとる。先送りしてばかりはいられないだけに、政府はこの機会に傷病手当導入に向けた社会的議論を急ぐべきだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1091281.html韓国語原文入力:2023-05-10 18:13
訳D.K

関連記事