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[特派員コラム]「ニューマッカーシズム」の時代

登録:2023-03-24 06:05 修正:2023-03-24 07:57
先月28日、米下院の「米国と中国共産党の戦略的競争に関する特別委員会」が開催した聴聞会で、ハーバート・マクマスター元大統領秘書官(国家安全保障担当・前列左)が発言する中、傍聴客が「中国は我々の敵ではない」と書いた紙を持って抗議し制止されている。=ワシントン/EPA・聯合ニュース

 「一生共産主義のために戦う!」

 習近平国家主席兼中国共産党総書記が腕を振り上げて先唱すると、後列の共産党指導部が一緒に叫ぶ。続く映像で習主席は「マルクスは歴史上最も偉大な思想家」だと述べる。

 米下院の「米国と中国共産党の戦略的競争に関する特別委員会」(中国特委)が先月28日に開いた初聴聞会で上映されたシーンだ。この映像はゴールデンタイムに放送された。マシュー・ポッティンガー元大統領副補佐官(国家安全保障担当)は映像を見せながら、中国共産党は「真の共産党」だと強調した。他の映像では毛沢東の姿と中国の人権侵害状況がパノラマ式に流れ、「人類史のこのような汚点は中国共産党という妄想的かつ暴力団のようであり虐殺を日常的に行う組織によって作られた」というナレーションが添えられた。米中の対立がついに「自由陣営対共産陣営」の戦いに「発展」していることを示した聴聞会だった。

 新冷戦の扉が開かれたことで、このように冷戦時代の用語と観念も復活を果たしている。米国では中国側を非難する際、中華人民共和国の英文イニシャルのPRCではなく、中国共産党を意味するCCPが使われることが増えている。これまで米国は、中国と「民主主義対権威主義」または「自由主義対全体主義」の対決を繰り広げると述べてきた。しかし、権威主義や全体主義は共産主義ほど即座に強烈な反感を引き起せない。共産主義だけが冷戦ヒステリーを呼び覚ますことができる。

 習主席はこのような時期に、戦犯の烙印を押されたロシアのウラジーミル・プーチン大統領に会って反米連帯の強化に乗り出した。60~70年前に舞い戻ったかのような雰囲気だ。

 奇妙な再現はほかにもある。冷戦初期のマッカーシズム狂風の主人公であるジョセフ・マッカーシー上院議員と、ケビン・マッカーシー現下院議長の名前だ。状況によって卑怯にも前言を翻しながらトランプ元大統領の機嫌を取ったとして、「ニューマッカーシズム」のレッテルを張られたこともある人物だ。そのようなマッカーシー議長が、下院議長になったら真っ先に着手すると公言したのが、中国特委の設置だった。先輩のマッカーシーもかつて、中国共産党が(米国の支持する中国国民党を追い出し)大陸を奪ったという意味の「中国の喪失」の衝撃の中で行政府を攻撃し、政界のスターに浮上した。

 ところで、習主席は「真の共産主義者」だろうか。改革・開放以来、他の指導者よりは理念志向的ともいわれている。しかし、形式的な共産党宣誓ではなく、政策と行動をみる限り、民族主義者に近いようにみえる。骨の髄まで共産主義者というニキータ・フルシチョフ元ソ連共産党第1書記は、ツァーリ(ロシア皇帝)を処断しその代わりとなる何かが必要だったがために繰り出したのが共産主義だと、冷笑的に語ったことがある。理念は本来、本音と建前が違う場合が多い。

 国際政治専門家のファリード・ザカリア氏は、最近の「ワシントンポスト」への寄稿で、米国が道徳論を前面に掲げ、硬直した態度を取ったことで、敵を量産し、彼ら同士を近づけていると指摘した。また、世界を白と黒、敵と味方で単純に二分する外交エリートたちの慢性的な欠陥がひどくなったと批判した。

 対立は、相手を共存できない悪と規定する時、最悪へと突き進む。米国が「中国指導部は世界征服を夢見る真の共産主義者だ」と非難すれば、中国は「米国人たちは帝国主義者だ」と罵倒するだろう。米国は共産主義が妄想だというが、相手の本質でもない共産主義に対抗しようと叫びたてるのも、妄想の産物に他ならない。

//ハンギョレ新聞社
イ・ボニョン|ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1084935.html韓国語原文入力:2023-03-24 02:35
訳H.J

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