「今日、私は確信を持って核なき世界の平和と安全保障に対する米国の誓約について明確に述べたいと思います」
2009年4月5日、午前10時21分。チェコ・プラハのフラッチャニ広場で、バラク・オバマ米大統領は「核なき世界」に向けた人類の夢を力説する重要な演説を行った。核という「絶対的な兵器」を開発し使用した米国の現職大統領が「核なき世界」に向けた強力なビジョンを示すと、広場には拍手と歓声が鳴り響いた。
それから14年後、人類はオバマ大統領が掲げた「バラ色の未来」とは全く違う「厳しい現実」に直面している。昨年2月24日にウクライナを侵攻し、人類を「新冷戦」へと導いたロシアのウラジーミル・プーチン大統領は21日(現地時間)、2年ぶりの施政方針演説で、米ロ間に残っている唯一の核軍縮協定である「新戦略兵器削減条約(新START)」の履行を停止する方針を明らかにした。演説直後、プーチン大統領は同条約の履行を含むロシアの外交指針を破棄する大統領令に署名した。
激しい冷戦の対立構図の中でも、米国とソ連(ロシア)は互いを絶滅に導く核戦争を防ぐため、中距離核戦力(INF)全廃条約(1987年)や戦略兵器削減条約(START・1991年)などいくつかの軍縮条約を結んできた。INF条約を通じて両国は射程500~5500キロメートルの中・短距離の弾道・巡航ミサイルの生産、実験、配備を禁止し、欧州の安全保障環境を劇的に改善した。また、STARTを通じて実戦配備した核弾頭と運搬手段の数を制限することで、無謀な核競争を防いできた。2011年2月に発効した現在の条約(新START)では、両国は実戦配備戦略核弾頭をそれぞれ1550基、大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、重爆撃機の3大核運搬手段をそれぞれ700基以下に制限しなければならない。
冷戦を終わらせたこの時代の精神は「信ぜよ、されど確認せよ(Trust, But Verify)」だった。この信頼に基づいて両国は、相手の条約履行を監視するための訪問査察を受け入れた。この相互査察は、最初はコロナ禍によって、その後はロシアの非協力によって、2020年3月以降3年間再開されていない。
ロシアは自ら下した「無謀な決定」の責任を米国に転嫁した。ロシア外務省は21日、長文の声明を発表し、「米国は激しい敵がい心を燃やし、対立を煽っており、ウクライナ内外で悪意的な軋轢を助長している。これにより、我が国を取り巻く安保環境が本質的に変わった」と主張した。プーチン大統領が同日の演説で明らかにした通り、「ロシアの戦略的敗北」を防ぐため、米国の前に「核カード」を突き付けるしかなかったということだ。
ポール・ウルフォウィッツ元米国防副長官は同日、ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、プーチン大統領の宣言が「軍事的というより政治的な宣言」だと説明した。実際、ロシア外務省は2026年2月までに定められた条約の期限まで「量的制限は厳格に守る」とし、この「決定が変わるかもしれない」として「全般的な緊張緩和に向けた善意の努力」を米国に求めた。米国がウクライナでロシアに「戦略的敗北」を強要してはならないと要求したわけだ。しかし、20日、キーウへの「電撃訪問」で揺るぎない支援を約束したジョー・バイデン米大統領がこれを受け入れる可能性は高くない。
アントニー・ブリンケン米国務長官は同日、ロシアの決定について「非常に不幸で無責任なもの」だと怒りをあらわにした。しかし4年前、米ロ間の戦略バランスを維持していたもう一つの軸であるINF条約を一方的に破棄したのは、中国の急激な軍事的浮上を懸念した米国だった。
米国は昨年10月、「核態勢の見直し(NPR)」で、「2030年頃には、史上初めて戦略的ライバルである2つの核大国と向き合わなければならないだろう」という暗い見通しとともに、これに立ち向かう決意を示した。米国はロシアを追い越す勢いで核弾頭を急激に増やしている中国(300基→1500基)を牽制するため、核能力を拡大していくだろう。そのような意味で、この日の決定は米国と中国、ロシアという「3大国」が本格的な核競争に入る長期的なターニングポイントとして記憶される可能性が高い。「核軍縮」を導いた信頼の時代は過ぎ去り、不信と憎悪が支配する「核競争」の時代が到来した。