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[社説]「捜査権防衛」疑われる国情院が民主労総を家宅捜索

登録:2023-01-19 02:33 修正:2023-01-19 09:12
国家情報院と警察は18日午前、ソウルの民主労総事務総局と一部の産別労組に対する家宅捜索を行った。写真は警察がソウル中区の民主労総ソウル事務所の入り口を規制している様子=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 国家情報院と警察は18日、民主労総と全国保健医療労組の事務所を家宅捜索した。国家保安法違反の疑いが持たれている各1人の幹部が家宅捜索の対象者だった。国情院は最近、済州・慶尚南道地域の民主労総の活動家の北朝鮮工作員会合疑惑を捜査しているが、全方位的に捜査を拡大しているとみられる。事件の実体は捜査結果を見守ったうえで判断しなければならないが、国情院が国情院法改正によって来年警察に移管される「対共捜査権」を守るために過度な捜査を行うことに対しては警戒せざるを得ない。

 民主労総と保健医療労組は直ちに、過剰な家宅捜索だとして反発した。逮捕令状の執行や労組全体に対する家宅捜索でもなく、1人の幹部の机やキャビネットなどを捜索するために、数百人の警察官と消防公務員、墜落防止用のエアマット、はしご車まで動員したことは「見せるための」捜査ではないかというのだ。実際、労組側は弁護士の立ち会いのもと捜索に協力している。また、国情院の捜査はまだ拘束令状の請求などの身柄確保段階に至ってもいないのに、一部メディアに詳しく報道されていることも、通常の対共捜査とは異なる様相を呈するものだ。

 市民社会団体からは、国情院の対共捜査権の維持に向けた「示威の性格を持つ」捜査ではないかとの指摘が出ている。民主社会のための弁護士会、参与連帯、カトリック人権委員会などからなる国情院監視ネットワークはこの日、声明を発表し、その中で「民主労総に対する見せるための家宅捜索とメディア利用によって、国情院改革の核心である対共捜査権の移管を逆戻りさせようとの『企画』ではないかと疑われる」と指摘した。国情院の同時多発的な捜査がメディアに流出した時期とあいまって、与党内で対共捜査権維持論が頭をもたげていることも、このような懸念を高めている。国民の力のチョン・ジンソク非常対策委員長は12日に「スパイは国情院が捕えるのが正しい」と述べており、大統領室も国情院と警察の常設合同捜査団の設置を推進しているという。

 このような動きは、文在寅(ムン・ジェイン)政権の国情院改革を覆す退行だ。国情院は過去に数多くのスパイ事件をでっち上げており、それほど昔ではない朴槿恵(パク・クネ)政権時代にもソウル市の公務員ユ・ウソンさんをスパイに仕立て上げるために証拠の偽造まで行っている。国情院改革は、反人権的なでっち上げ捜査と国内政治への介入という悪弊を根絶するための時代的な要請だ。これを逆戻りさせようという試みは、それ自体が改革の必要性を改めて確認させるだけであることを、国情院は肝に銘じるべきだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1076271.html韓国語原文入力:2023-01-18 18:14
訳D.K

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