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[寄稿]ソウル消滅論

登録:2022-04-25 03:16 修正:2022-04-25 08:33
【ニューノーマル-未来】パク・ソンウォン|国会未来研究院研究委員
ソウル63スクエアから眺めた市内のマンション群/聯合ニュース

 『美しさは守るものだ』の作家キム・タクファンさんに会いに全羅南道谷城(コクソン)に行った。キム・タクファンさんは様々な生命と混じり合って生きるため、谷城のある廃校(今は発芽玄米に適した品種を研究、生産する農業会社「ミシルラン」のあるところ)の2階に作業室を構えた。彼はここで小説を書いたり、エコ書店を経営したり、農業をやったり、土と木をテーマに学生たちに教えたりしている。『不滅の李舜臣(イ・スンシン)』、『許筠(ホ・ギュン)最後の19日』などの数十冊の小説を都会で書いたキムさんは、農村で新たな人生を歩みはじめた。

 谷城は人口消滅の危険性が高い地域だ。20年前には3万9千人だった谷城郡の人口は減少が続き、今は2万7千人。通念上、人口減少は住民の超高齢化、十分な生産業の不在、雇用不足などが原因とされる。

 心配から、キムさんに将来の谷城の消滅可能性について意見を聞いた。だが彼はソウル消滅論を提起した。人中心ではなく多様な生命の視点から見れば、消滅についての心配はソウルこそすべきだというのだ。ソウルのような大都市に住む人々は生命と共存する方法を知らず、他の生命とは一定の距離をとらなければならないという基本も知らないエコ音痴だ。私もソウルに住んでいるが、他の生命の消滅を心配したことはない。

 ソウル消滅論を聞いた後、私は韓国の各地域ごとに生物多様性の増減を調査した資料があるかどうかを調べてみた。環境部は1986年から4回にわたって全国単位で自然環境を調査しており、今は5回目の調査を行っている。環境部と国立生態院が発行した「全国自然環境調査30年史」によると、「韓国は経済成長と産業化により山林と緑地地域が減少しており、生態系が断片化して生物多様性が弱化」している。

 例えば1987年の自然環境調査では京畿道、忠清南道、全羅北道でキタサンショウウオ(東北アジア固有種)が発見された。それまでの発見記録は北朝鮮の東北部の高地帯でのもののみで、当時の韓国で発見されたキタサンショウウオは明らかに希少な例だったはずだ。その後、自然環境調査でキタサンショウウオが発見されたという記録は見当たらない。

 全国の植物、哺乳類、鳥類、両生類、昆虫に至るまで、毎年調査することは容易ではないだろうが、この36年間の各地域の生物多様性の現状、増減が確認できないというのは残念だった。韓国環境研究院のイ・フスン博士は、海外では生物多様性の現状および種の豊富さを地図で提供し、政策決定に生かしているが、韓国は基礎的な生物多様性の現状の提供さえ不十分だと指摘する。結局、生物多様性の観点から心証は得られるものの、ソウル消滅論を確認することはできなかった。

 多様な生命の保護と保存は、見栄えのする宣言のみに終わるでべきではない。国際社会は今年8月、「ポスト2020、グローバル生物多様性フレームワーク」を採択する予定だ。そうなれば韓国を含む主要先進国は、2030年まで毎年少なくとも2千億ドルを開発途上国に援助しなければならない。それだけではない。生物多様性にとって有害なすべての補助金を毎年5千億ドル削減しなければならない。すべての事業体は生物多様性に及ぼす否定的な影響を50%減らさなければならず、損なわれた淡水、海、陸地の生態系も少なくとも20%復元しなければならない。高麗大学吾丁レジリエンズ研究院のパク・フン研究教授は、「自然生態系を破壊しないことだけでも、生物多様性保存だけでなく温室効果ガス排出量の低減に大きく役立ちうる」と強調する。

 生物が消滅しつつある場所では、生活の持続可能性は低い。一例として、ソウルの合計特殊出生率は全国最下位を記録し続けている。韓国より先に地域の消滅を心配している日本も、東京の合計特殊出生率が最も低い。ソウル消滅論は、人口の消滅ばかりを心配するのではなく、人と関係を結んでいる多様な生命の消滅にも関心を持つべきだという主張として読み取らなければならない。共に生存する方法を探らなければならない。

//ハンギョレ新聞社

パク・ソンウォン|国会未来研究院研究委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1040180.html韓国語原文入力:2022-04-24 18:05
訳D.K

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