先月24日、ロシアがウクライナに侵攻した。日本でも放送や新聞、ソーシャルメディアを通じてウクライナの状況がリアルタイムで配信されている。写真や動画を通じて目にしながらも、信じがたい光景だ。ウクライナ戦争の可能性が提起された数週間前までも、周りの日本人の大半の反応は「まさか」だった。予想は無残にも破れ、戦争は1週間以上続いている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナを侵攻するために1年以上綿密に計画を立てたという英国の著名な研究所の分析も出ている。
ウクライナを見守る日本の状況はかなり複雑だ。ウクライナの戦争は「脅威」であり「不安」であり、また軍備拡張のための「名分」となっている。岸田文雄首相はウクライナ侵攻に対し「ロシアによる侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、ヨーロッパのみならず、アジアを含む国際社会の根幹を揺るがす行為」だと強く非難した。言葉だけにとどまらなかった。 日本は、先進7カ国(G7)と歩調を合わせ、プーチン大統領の資産凍結などロシアに対する制裁に素早く乗り出した。日本は、同じ東アジアの韓国よりもウクライナ事態に積極的に対処している。
日本はクリル諸島(千島列島)南端の4島(日本では北方領土と呼ぶ)問題など、ロシアと解決しなければならない懸案があるため、関係がこじれることにはこれまで慎重な態度を示してきたが、今は状況が違うと判断したようだ。クリル諸島問題に進展がみられないことも影響を及ぼしたかもしれないが、ウクライナ事態が自国の外交と安全保障に波及力が大きいと認識している。
ロシアの力による一方的な現状変更が認められると、国際秩序を揺るがし、中国にも影響を与えかねないとみているのだ。日本は、米中戦略対立の最前線である台湾海峡と中日間の領土紛争地域である尖閣列島(中国名・釣魚島)で、中国と対峙している。ロシアのウクライナ侵攻は、中国も軍事行動に乗り出しかねないという恐怖を助長する。
日本国民は不安がっている。日本経済新聞が先月25~27日に行った電話世論調査(回答者992人)の結果、回答者の77%がロシア侵攻の影響で中国が台湾に武力を行使する可能性があるとみていることが分かった。全ての年代で懸念が高かった。
こうした雰囲気に乗じて、自民党の極右議員らは「軍拡」の声を高めている。これまでタブー視されてきた「核共有」発言まで出た。安倍晋三元首相は最近フジテレビの番組に出演し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部が採択している「核共有」政策を日本も議論すべきだと述べた。核共有とは、米国の核兵器を自国領土内に配備し、共同運用することで、抑止力を拡大する戦略だ。これに同調する自民党内の一部の極右議員らもいる。一方では、ウクライナ戦争後、日本の負担増加を懸念する声もあがっている。軍事・経済分野で浮上する中国、権威主義国家である中国とロシアの緊密な協力、国際社会における米国の影響力低下で、日本が引き受けなければならない役割が多くなるということだ。
直ちに「核共有」を進めるのは容易ではないが、日本政府が今年積極的に推進している「敵基地攻撃能力」の保有と国防予算の拡大には弾みがつくものとみられる。事実上の「先制攻撃」を意味する日本の敵基地攻撃は、中国と北朝鮮を想定しており、朝鮮半島に対する軍事的緊張感は大きくならざるを得ない。東アジアにも、平和より武力衝突の可能性が一層高まっている様子だ。ウクライナ戦争が一日も早く平和に解決されることが、私たちの暮らす東アジアにとっても重要なことだ。
キム・ソヨン|東京特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)