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[寄稿]日帝に抵抗した3・1運動宣言文が今日の我々に与える教訓

登録:2022-02-23 03:22 修正:2022-02-23 07:28
コロナ・パンデミックによって国粋主義的な傾向が強まっているのは、もちろん韓国だけの問題ではないだろう。しかし、植民地という状況においても祖先たちは「真の理解と共感」を強調した。我々の選択が、植民地でもない世の中において再び文化的暗黒期を招く恐れもあるだろう。これこそ今、3・1宣言文が韓国に与える最も大きな教訓だ。 
 
パク・テギュン|ソウル大学国際大学院長
昨年の3・1節102周年。ソウル市役所に「3・1運動は1日では終わりませんでした」と記された横断幕が掲げられている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 3・1運動宣言文は朝鮮人が日本帝国主義の支配から脱すべき理由を説明している。「今後迫りくる脅威をなくすとともに、抑圧された民族の良心と消え去った国家正義を打ち立てること」がその第1の理由であり、「本来持つ自由権を守り、豊かな暮らしの喜びを存分に享受すること」がその第2の理由だった。

 そもそもすべての人間は自由と繁栄を享受する権利があり、これは大韓民国憲法第10条にも明示されている。ある地域において生活共同体と文化共同体にもとづいて作られた国は、その地域に住んでいる人々のそのような権利を守る役割を果たさなければならない。しかし、弱小国の国民は大国によってそのような権利を剥奪されていた。

 また、朝鮮の植民地化は単に朝鮮の人々にのみ不幸をもたらしたのではないということも強調している。朝鮮が日本の中国侵略に向けた足場になっていることから、「朝鮮の独立は中国と日本の紛争に勝ち、東洋平和の足場を構築するもの」となる。これはすなわち「仲良く生きる新たな世を切り開くもの」であり、「災いを避けて幸福を得る近道」となるだろう。

 地政学的に重要な地域に住む朝鮮の人々の宿命だったと言うべきか。1945年の解放直後、米国は4カ国による信託統治を構想しつつ、20世紀初め以来、朝鮮半島が不義の大国によって独占的に統制された時には、東アジア全体が不安定だったということに注目した。もしかしたら、朝鮮戦争を前後して米国が韓国の中立国化を進めたのも、そのためかもしれない。

 ところで、3・1運動の中で最も目立つ部分がある。国を取り戻すべき理由として「新たな技術と独創性によって世界の文化に貢献する機会を失ったこと」をあげている点だ。知らない人が見れば、「血でもって独立を訴えてもなかなか達成し得ないのに、文化を語るとはなにごとか」と嘆くかもしれない。しかしこの一節は、我々の祖先が持っていた文化的自負と気概を示してくれている。そしてこの点こそまさに、我々が植民地化されてはならない理由だった。1919年の我々の祖先は、2000年代に韓国の大衆文化が世界へと広がることを予見していたのだろうか。先人たちが予見したように、映画『パラサイト』と『イカゲーム』は防弾少年団(BTS)に続いて韓国の大衆文化のグローバル化に大きな役割を果たしている。韓国の独立と発展は、このように文化的にも大きな意味を持つものだ。

 さらに3・1宣言文は、韓流が継続しうる条件を提示している。「真の理解と共感を基礎として仲の良い新たな世を切り開くこと」がその第1の条件だ。これは、我々の文化に対する愛情と同等に、他の文化に対する尊重が必要だということだ。他国の文化を尊重せずして、我々の文化が世界に広がっていくことを望むことはできない。韓国に居住する外国人が増えるにつれ、他文化に対する理解と尊敬はより重要な条件となっている。そのため宣言文では「自ら絶えず鞭打たねばならない我々には、他者を恨む余裕はない」と強調している。

 第2に「人道的精神こそ、今や新たな文明の明けゆく光」となるというものだ。韓流は、人道的精神にもとづいた民主化を通じて作られた自由で創造的な雰囲気によって可能となった。文化界のブラックリストの下で韓国文化が暗黒期を歩んだ時期には、世界的に注目される韓国の大衆文化は見られなかった。創意あふれる批判的な意識にもとづいた作品も出にくかった。これは韓流に影響を与えた香港ノワールや日本の大衆文化の世界的な影響力が低迷している理由でもある。香港と日本での民主主義の後退と国家主義の拡大は、優れた作品が生まれる空間を自ら塞いでいる。

 韓国社会は今、もう一度重要な選択をすべき時にある。我々の選択は、もしかすると韓流が継続するか否かを決定する重要な分水嶺を作り出すかもしれない。時代の「人道的精神」こそが「新たな文明」を作り出すべき現実においては、人種憎悪、女性憎悪などの排他的な認識によって再び「新たな技術と独創性によって世界の文化に貢献する機会」を失う恐れもあるからだ。

 コロナ・パンデミックによって国粋主義的な傾向が強まっているのは、もちろん韓国だけの問題ではないだろう。しかし、植民地という状況においても祖先たちは「真の理解と共感」を強調した。我々の選択が、植民地でもない世の中において再び文化的暗黒期を招く恐れもあるだろう。これこそ今、3・1宣言文が韓国に与える最も大きな教訓だ。

//ハンギョレ新聞社

パク・テギュン|ソウル大学国際大学院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1032071.html韓国語原文入力:2022-02-22 14:45
訳D.K

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