ソ・ウク国防部長官がある番組で、「来年、未来韓米連合司令部の完全運用能力(FOC)の評価を行うことを決めた」と述べた。多くのメディア報道を総合すると、韓国側は現政権の任期中の来年3月に、米国側は次期政権の任期となる来年8月に評価することを希望しているとみられる。戦時作戦統制権(戦作権を米国から韓国に移管するには、韓国軍が主導する未来連合司令部が、第1段階の基本運用能力(IOC)、第2段階の完全運用能力(FOC)、第3段階の完全任務遂行能力(FMC)を備えているかを検証しなければならない。国防長官が今になって第2段階を評価すると言うからには、最終段階を経て戦作権を韓国に移管する時期はいつになるのか。ロバート・エイブラムス前在韓米軍司令官がメディアのインタビューで明らかにしたところによると、早くても2028年だ。それでさえ段階ごとに設定された厳しい細部課題を全て満たさなければならないという前提がついている。だとすれば、現政権が国政課題として掲げ、「文在寅(ムン・ジェイン)政権の任期中に移管する」と解釈されていた「速やかな移管」は、当初から現実性のないスローガンだったというわけだ。
多くの事情を考慮しても、戦作権移管がさらに先延ばしになるのは理解しがたい。前政権が戦作権移管を延期しようとして米国と協議した「条件にもとづく戦作権移管」というフレームに、現政権が依然として閉じ込められているからだろう。様々な厳しい条件を掲げて移管を推進しているのだから、うまくいくわけがない。内部事情を見ると、さらに複雑だ。韓国軍が主導することになる未来連合司令部は、現在米軍が運用しているシステムである「韓米連合情報管理体系(CENTRIX-K)」を韓国軍が開発した「連合指揮統制体系(AKJCCS)」に置き換える。しかし米軍は、このシステムは不安定でセキュリティも脆弱だとして使用を拒否している。この問題があらわになって2年経つが、いまだに未来韓米連合指揮統制システムが何になるのかははっきりしない。
たとえこの問題を解決したとしても、有事の際に韓国に増員される米軍の戦力の種類と規模も明確ではない。どのような米軍戦力を、どのような目的で指揮、統制するのか、韓国には何の主導権もない。そのため、将来の韓国軍の将軍の連合作戦能力というものは曖昧この上ない。韓国に増員される米軍戦力はインド太平洋軍司令部が構成を決めることになるはずだが、その手続きも複雑であるうえ、米国の国内政治が介入することになれば、韓国としてはいかなる統制権限もなく、ただただ待たされるばかりとなる。さらに、2019年に検証を完了したという基本運用能力も、たった一度しか検証されていないといういい加減なものだ。一言で言って、この4年間に進展はなく、足踏み状態だったということだ。戦作権移管の担当部署は、連合作戦を十分に知る専門家が課題リストと遂行計画を練ったわけでもなく、進級すればいなくなってしまう将軍の職にすぎなかった。大統領府の安保関連の職位は南北関係のみを管理するものだと思っており、韓国の主権を堅固にし、大韓民国の品格を高めるという信念もなく、能力を発揮する術も持っていなかった。だから、米国の対中国牽制戦略に十分に対応しうるだけの戦略的見識も持てず、韓国の安保政策をなおいっそう米国に従属させる結果のみを招いたのだ。
これまで南北関係を犠牲にするという高い対価を支払って実施されてきた韓米合同軍事演習で何も得たものがないのなら、その演習はなぜ実施したのか。しかも55兆ウォン(約5兆3000億円)もの国防予算を投じて軽空母と韓国型戦闘機を作る国が、肝心な作戦運用能力システムの現代化には足踏み状態から抜け出せずにいるという現実には、もどかしいばかりでなく怒りすらわいてくる。連合作戦を主導するハードウェアとソフトウェアを準備することなく、より多くの戦闘機、潜水艦、ミサイルを誇示するのは一種の虚勢であって、戦略家のすべきことではない。韓国は何が何でも戦作権移管をしっかりと準備し、国家の自律性をできる限り高め、運命を自ら開拓しうる未来の獲得に挑戦すべきだった。しかし、見栄えのいい兵器がまるで我々を守ってくれるかのように国防予算を湯水のごとく使いながら、肝心の我々の地で起こる戦争で自ら作戦を主導する力量がないというのは、歴史的に審判を受けるべきものだ。韓国は、米軍がすべてを行い金だけを払う日本のように生きていくつもりはないと言うのなら、このような軍事的無能力は早急に清算しなければならない。堅固な主権の土台の上で、平和と統一の道へとためらうことなく向かう大韓民国の生存戦略を具現する新たな戦略家たちが登場すべき時期に来ている。
キム・ジョンデ|延世大学統一研究院客員教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )