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[コラム]野党大統領選候補の落とし穴?「20~30代」対「老人の力」

登録:2021-11-20 07:24 修正:2021-11-20 10:05
野党「国民の力」の第20代大統領候補に指名されたユン・ソクヨル前検察総長=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 ユン・ソクヨル前検察総長がホン・ジュンピョ議員を破った野党「国民の力」の大統領候補予備選は、「党心」(党内での支持)が「民心」(国民人気)を押さえた結果だと分析された。その後に展開した状況は、よりいっそう意味深長だ。ユン候補が選出されてからの3日間で党員約6500人が離党したが、そのうち20~30代が75%だった。民心を押しつぶした党内からも破裂音が生じたのだ。

 これらの20~30代は、国民の力を「老人の力」「旧態の力」と呼び、「60~70代の年配者を引き連れて政権交替を実現してみろ」という別れのあいさつを残し去って行った。国民の力の主流は、逆選択を狙った勢力の離脱でしかないと非難している。ユン候補が予備選の終盤に「偽装党員が多く加入した」と言ったことの延長線上だ。

 しかしそのような認識では、若者世代と高齢者世代の主導権争いという韓国保守政党が初めて経験する政治的な事件の意味を十分に読みとることはできない。「世代投票」の傾向の変化がうごめく今回の大統領選の流れをとらえるのは難しい。

 世代投票は、2002年以降の大統領選の行方を左右する変数として定着している。しかし、今回の大統領選はいつにもまして複雑な様相を帯びている。20~30代の動きが過去のパターンと確実に違うからだ。

 20~30代は、総じて現在の40~50代と同調する流れを示してきた。2002年には彼ら自身が20~30代として盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補に票を集めた。2012年には30~40代になった彼らと当時の20代の支持は文在寅(ムン・ジェイン)候補に傾いたが、高齢者層がさらに圧倒的に朴槿恵(パク・クネ)候補を支持したため、108万票差で負けた。

 2017年の大統領選まで有効だった「20~30代・40~50代連合」対「60代以上」の世代競争の構図は、「コロナ変数」が支配した昨年4月15日の総選挙を例外とすると、今年4月7日の再・補欠選で大きく揺らいだ。前職市長のセクハラ問題で20~30代の女性の与党からの離脱が可視化され、国民の力が20~30代の男性への攻略に集中したことも一役買った。

 もし、20~30代が60代以上の世代の強固な支持を得ている国民の力に心を開いたとすれば、今回の大統領選の結果は見るまでもない。しかし、国民の力の選挙戦の結果は、この新たな可能性にいったん灰をばらまいた形になった。

 もちろん、最近になり国民の力に入党した20~30代の党員の多数が離党したのではない。世論調査でも、20~30代の一部はユン候補支持に乗り換えたことが明らかになっている。ユン候補は予備選当時、「398候補」(世代別支持率で20代3%、30代9%、40代8%)だと嘲笑された。今では20~30代の支持率も20%前後にまで上がっている。

 しかし、コンベンション効果を越え、大統領選での勝利を導く若者・高齢者連合の構図に進められるかについては懐疑的だ。基本的に、60代以上と20~30代は、情緒と価値観がすべて衝突する。しかも、この両者を束ねる可能性を示した候補を、60代以上が固く団結して落とした。「新世代戦争」の序幕を自ら開いたのかもしれない。ならば、今回の選挙戦での勝利は、むしろ「ユン・ソクヨルの落とし穴」になる可能性が高い。

 20~30代は、経済と民主主義のどちらでも「先進国」として生まれ育った世代だ。「中進国」を経験し民主化を成し遂げた40~50代も、彼らとは話が通じない「コンデ(権威的な年長者)」だ。60代以上は想像の領域に属しているだろう。それでも、ホン・ジュンピョ候補はストレートな言葉とユーモア、ユーチューブを通じてこつこつと図ったコミュニケーションで、20~30代男性の一部の熱狂的な支持を引きだしたが、ユン・ソクヨル候補は、権威主義的な態度と時代錯誤な認識をつねに示し無視された。

 保守メディアは、「586」(現在50代で1980年代の民主化運動に関わった1960年代生まれの世代)の独走と、20~30代との対立を執拗に指摘してきた。しかし、実は60代以上こそ、長きにわたり強い政治的な影響力を行使してきた世代であることを見逃してはならない。1987年の民主化以降、ほとんどすべての選挙で、現在の60代以上は圧倒的に保守を支持してきた。地域的な変数を除くと、保守優位の世代特性はよりいっそう確固となる。高齢化の進展により、彼らの政治的な退場は、先延ばしにされ続けている。61歳のユン候補が3月に101歳の哲学教授に会ったことは象徴的だ。40年の年齢差を越え、成人するまでの二人の政治的な経験は、類似性が極めて強い。「後進国」型の権威主義と抵抗の不在が、共通の時代的な空気だった。60代以上を「60100世代」と呼んだとしても、過度な単純化として退けるのが難しい理由だ。

 「老人の力」がリセットボタンを押し、世代投票競争はふたたび原点に立った。ユン候補の支持率の高止まりは、もしかすると最大値の早期漏洩なのかもしれない。世代論の観点からは、競争者に機会の扉が閉じられたのではないという話だ。本当の実力とビジョンを示す側が勝つだろう。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ウォンジェ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1019838.html韓国語原文入力:2021-11-19 02:34
訳M.S

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