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[寄稿]南北軍事合意3周年と欧州の教訓

登録:2021-09-09 06:11 修正:2021-09-09 07:51
ホン・ミン|統一研究院研究委員

 南北が「南北軍事合意」(2018年9月19日)を締結して3年を迎えつつある。これまでの成果と補完点をじっくりと振り返る時期に来ている。南北軍事合意をめぐっては、様々な観点から異なる捉え方が存在する。停戦協定を順守する意味のある合意と評価する意見がある一方、軍事的態勢の弱体化を招いたのではないかという批判的な意見もある。何が妥当かを考えるためには、主観的な感情や政略的なフレームから一定の距離を置き、客観的な事実に基づいて現実を認識する必要がある。判断の第一基準は、あくまでも南北軍事合意の趣旨と目標、履行の結果が相反せず、合目的性を持つかどうかでなければならない。

 軍事合意は、南北が相互敵対行為を中止することで偶発的な衝突を防止し、軍事的緊張を緩和することを目標にしている。さらに、非武装地帯(DMZ)の平和地帯化および西海平和水域の設定など、朝鮮半島の平和構築に向けた実践条項も盛り込んでいる。では、実践はどうだったのか。南北は境界地域での相互敵対行為の中止措置を忠実に履行してきた。このため軍事的安定性はいつに増して高まった。停戦協定の締結後から南北軍事合意が実現するまで、北朝鮮の敵対行為は3千件以上にのぼるが、この3年間、南北間の軍事的衝突は1件もなかった。衝突ゼロという数値が軍事合意の成果を物語る客観的な真実だ。

 南北軍事合意の履行レベルで、非武装地帯内で初めて遺骨発掘が行われた。対立の象徴だった共同警備区域(JSA)も完全に「非武装化」した。この状態を維持すれば、2017年の板門店(パンムンジョム)銃撃事件のような衝突が再発するのは難しいだろう。試験的に撤収したGP(監視警戒所)のうち、坡州(パジュ)、鉄原(チョルウォン)、高城(コソン)地域の3つのGPは「非武装地帯(DMZ)平和の道」区間として開放されている。ここを訪れる国民は分断以来、想像もできなかった平和を肌で感じている。むろん具体的な履行が足踏み状態にあり、今後克服しなければならない課題も残っている。しかし、軍事合意の意味と成果は現在までの状況だけでも有意義だという点は否定できない。まだ緊張緩和と信頼構築は初期段階だが、もはやその成果に対する論議よりも平和を定着させるための努力により関心を傾ける時だ。

 そのような側面で、欧州の軍備統制事例を一つの教訓として参考にできるだろう。冷戦時代、欧州は通常戦力の対決的な軍備増強と激しい軍事的緊張の現場だった。北大西洋条約機構(NATO)とワルシャワ条約機構(WTO)を両軸に、米ソ陣営の通常戦力が大規模に集中した。重武装した東西地上軍が約175万人以上配置されていた。双方はこうした安保ジレンマを打開するため、1973年に「欧州安全保障協力会議」(CSCE)を発足させた。初期は拘束力の不在という限界から、初歩的なレベルの信頼構築の合意にとどまったが、双方は情報交換や相互査察を拡大するなど検証と拘束力の強化に努めた。1995年に「欧州安保協力機構」(OSCE)を正式に制度化する成果に至った。結果的に「欧州通常兵器削減交渉」(CFE)という軍縮事例の成功に帰結することができた。

 この欧州の成功例も、初期の軍事的信頼構築のための合意から正式な機構の発足まで22年もの歳月を要した。「南北軍事合意」の履行はまだ3年に過ぎない。もはや軍事合意の是非を問う論争よりも、何をどうすべきか実質的な履行の進展について考えなければならない。最近の北朝鮮の行動に対する懸念の声もあるが、「3年の平和」がここで止まるように放置してはならない。むしろ「境界地域」での軍事的安全性を「朝鮮半島全域」の平和と信頼構築につなげるための方策を模索することが何よりも重要だ。

//ハンギョレ新聞社
ホン・ミン|統一研究院研究委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1010992.html韓国語原文入力: 2021-09-0902:33
訳H.J

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