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[特派員コラム]「慰安婦像やめろ!」その恐怖の声

登録:2021-07-02 03:04 修正:2021-07-02 08:29
キム・ソヨン|東京特派員
2019年、愛知県名古屋市の愛知県美術館。企画展「表現の不自由展・その後」に展示された「平和の少女像」の隣に置かれた椅子に日本の子どもが座っている=名古屋/チョ・ギウォン記者//ハンギョレ新聞社

 「反日展示会をやめろ!」、「慰安婦像やめろ!」

 東京新宿の住宅街にある展示場「セッションハウス・ガーデン」の周辺が先月6日から騒がしくなりはじめた。見慣れぬ人々が現われて路地を歩き回り、大声でスローガンを叫んでいたのだ。ある日などは車と拡声器まで動員された。彼らは、6月25日から7月4日までの日程で行われることが予定されていた展示会「表現の不自由展」を阻止しようとしていた右翼団体の人々だ。今回の展示に日本軍「慰安婦」被害者を象徴する「平和の少女像」などが含まれていることから、計画的に動いていたとみられる。脅迫が続いたことでギャラリーの方が白旗をあげた。町内の住民たちにこれ以上迷惑をかけることはできないとし、すでに約束してあった展示場所は貸せないと主催者に通知した。展示を企画した日本の市民団体の活動家などで組織された東京実行委員会は、他の場所を探し回ったものの見つからなかった。展示はひとまず延期された。

 大阪の「表現の不自由展」も難航している。7月16日から18日までの3日間、大阪府立労働センター「エル・おおさか」で展示が予定されていたが、最近になって場所の貸し出しが取り消された。右翼が電話や車両で抗議を始めたことから、「観覧客の安全に支障がある」として展示そのものを拒否してしまったのだ。

 日本では2年前にも似たようなことがあった。2019年に名古屋で開催された国際芸術イベント「あいちトリエンナーレ」の企画展に「平和の少女像」が出品され、右翼からの脅迫で3日目にして展示が中止されたのだ。受難は少女像だけではない。5月には右翼が韓国のドキュメンタリー映画『狼をさがして』の上映をやめよとして、日本の2つの映画館を脅している。この映画は、1970年代半ばに日本の戦犯企業に対する爆破事件を起こした日本人たちの40年あまりを扱っている。右翼はその時も車を動員して一日中「やめろ」を叫んだ。1館は結局、上映をキャンセルした。

 日本において憲法第21条に明示されている「表現の自由」が挫折する時は、まるで数学の公式のように一定のパターンがある。まず右翼団体の脅迫が始まり、展示場を貸した所が迷惑と安全を心配して自ら放棄するのだ。『ネットと愛国』を書いたジャーナリストの安田浩一氏は最近、週刊誌「AERA」のインタビューでこう語っている。「(右翼の)一連の妨害活動の背景にあるのは、『反日』をキーワードとしたレイシズムであり排外主義。そうした排他的な者に対し毅然と対応できていない、私たち社会の脆弱性を突いたものだと思います」

 

 右翼の「やめろ」が恐いのは執拗な脅迫のせいばかりではない。安田氏の言うように、日本軍「慰安婦」などに「反日」の烙印を押して、民主主義国家なら当然保障すべき「表現の自由」を無視しても構わないという雰囲気を作ることの方が危険だ。日本政府からして、外国に少女像が建てられたり、あるいは展示されるだけでも、外交力を総動員して阻止している。

 このような日本には問題があるとして闘っている人たちがいる。「表現の不自由展」東京実行委員の岡本有佳氏は記者会見で「暴力的な攻撃で表現の自由を奪おうとする行為には強く抗議する」とし「場所を見つけ次第、展示会を開催する」と明らかにした。大阪実行委員会も会場の貸し出しを取り消した「エル・おおさか」を相手取って執行停止などの法的対応に乗り出した。

 彼らを応援する市民もいる。東京展示は前売りで600枚のチケットが売れた。応援のメッセージも届いている。「警備のボランティアが必要なら、私も行けます。人権を度外視する人々の嫌がらせがあるでしょうが、ここで後退すれば、彼らの望む通りに検閲社会になってしまう。頑張ってください」。日本で早く「平和の少女像」の展示が見られるよう応援する。

//ハンギョレ新聞社

キム・ソヨン|東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1001768.html韓国語原文入力:2021-07-01 15:50
訳D.K

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