昨年1月、米軍の無人機がイラン革命守備隊クドゥス部隊のガセム・ソレイマニ司令官を攻撃し殺害した。イランは「暗殺」(assassination)だと糾弾した。当時、米国のドナルド・トランプ大統領は彼を「除去」(terminate)したと主張し、米国の官僚は「標的殺害」(targeted killing)という表現を用いた。ソレイマニ爆殺は政治的動機が裏にある攻撃と暗殺であることが明白であるにもかかわらず、米国は暗殺という単語を努めて避けた。1970年代に米国中央情報局(CIA)がキューバのフィデル・カストロなどの外国要人の暗殺工作を試みていたのが発覚した後、米国では暗殺が違法になったからだ。
2001年の「9・11テロ」以後、CIAは秘密監獄でテロ容疑者を拷問した。2014年に米国上院が公開した拷問実態報告書には、水拷問、性拷問の威嚇、殴打、手を頭上で縛った後に吊るなどのむごたらしい拷問が登場する。CIAは拷問(torture)ではなく「強化審問」(enhanced interrogation)だと言い張った。
米国がイラクやアフガニスタンで戦争をした際、子どもなどの罪のない民間人も多く死んだ。米国は民間人の被害は意図しなかったという点を強調し、「付随的被害」(collateral damage)だと主張した。残忍な民間人殺傷を隠そうとする言葉遊びだ。
バラク・オバマ政権の対北朝鮮政策は「戦略的忍耐」(strategic patience)だった。実際には戦略も忍耐もなかった。北朝鮮が先に頭を下げにやって来るまで待ち、米国は何もしなかった。結局、北朝鮮に核とミサイルの能力を強化する時間だけを稼がせた。「待てば良くなるだろう」といいながら腕組みして見守る態度は、戦略的忍耐ではなく単なる無能だ。
バイデン政権の対北朝鮮政策は、トランプ政権の「一括妥結」とオバマ政権の「戦略的忍耐」の中間地点だという。バイデン政権は朝米対話の再開のボールを北朝鮮側に渡した。米国の日刊紙「ワシントン・ポスト」の外交安全保障コラムニストであるジョシュ・ロギン氏が5日のコラムで「(バイデン政権が)結局は言葉にはしないだけで、オバマ政権の戦略的忍耐に戻るのではないか」と指摘した。バイデン政権は“無能”を繰り返さないことを願う。