本文に移動

[社説]境界と壁を越えた「ワンダフル・ミナリ」ユン・ヨジョン

登録:2021-04-27 07:23 修正:2021-04-27 09:20
25日(現地時間)、米国ロサンゼルスのユニオン・ステーションで開かれたアカデミー賞授賞式で、映画『ミナリ』の祖母役で助演女優賞を受賞した俳優のユン・ヨジョンがオスカーのトロフィーを持ちポーズを取っている=ロサンゼルス/AFP・聯合ニュース

 「私の名前はヨジョン・ユンです。多くの欧州の人たちは私を『ヨヨン』とか『ユジョン』と呼んだりしますが、今日はみんな許します」

 25日夜(現地時間)、第93回アカデミー賞授賞式で韓国人俳優として初の演技部門賞(助演女優賞)を受賞したユン・ヨジョンは、ウィットを交えた受賞の感想を述べた。西洋人には発音することさえ難しい名前の韓国人俳優が、映画というメディアを通じて全世界の人々に会い、韓国人移民家族の祖母役で人種と国籍を超えた普遍的な感動を引き出した貫禄が感じられる受賞の感想だ。

 1980年代に米国南部のアーカンソーに移住し根を下ろそうと努力する韓人家族の話を描いた映画『ミナリ』で、ユン・ヨジョンは家族のためにすべてを与えながらも、典型的な型にはまらない「おばあさんらしくないおばあさん」を演じた。彼女が演じた「スンジャ」は、孫に花札も教えプロレスにどっぷりはまっているが、どこにでも根を下ろす「ワンダフル・ミナリ」の精神を家族に伝えるおばあさんだ。『ミナリ』はこれまで全世界の映画祭や授賞式で100以上の賞を得たが、このうちユン・ヨジョンが得た賞は30を超えるほど、「スンジャ」は世界各地で共感を呼んだ。

 今年74歳のユン・ヨジョンの俳優としての人生は、それ自体が多くの境界と壁を乗りこえてきた旅路だった。1966年、19歳でタレントとして演技を始め、キム・ギヨン監督の映画『火女』(1971)でスターダムに上ったが、まもなく結婚とともに米国に渡り、10年以上の空白期を過ごした。離婚後に子どもたちを育てるための「生計型俳優」として「生きていくために命がけで演技」をした。60歳を超えた後、初めて好きな映画人たちと一緒に仕事をして作品を選んで演じる“贅沢”を味わうことができた。“高齢の女優”に対する固定観念を一つずつ崩し、新たな挑戦を続けてきた。イム・サンス監督の『浮気な家族』やイ・ジェヨン監督の『バッカス・レディ』などでは型破りの役を引きうけ、キム・チョヒ監督の自主製作映画『チャンシルさんには福が多いね』(2020)では、後輩の監督のために喜んでギャラも受けずに出演し、人生の知恵が込められた演技をみせた。最高の俳優だが君臨せず、ウィットとユーモア、人生に対する洞察をみせてくれるユン・ヨジョンの姿に、若い世代も彼女を最高のロールモデルとして尊敬する。

 米国映画芸術科学アカデミーが今年、アジア系俳優であるユン・ヨジョンに演技賞を与えたのは、新型コロナ時代に深まっていく“アジア系ヘイト”の克服という時代精神も込められていると評価できるだろう。ワシントンポストも、ユン・ヨジョンの助演女優賞受賞や『ノマドランド』でアジア系女性初の監督賞を受賞した中国系のクロエ・ジャオ監督などを例に挙げ、今年のアカデミー賞は多様性と包容性のメッセージを伝えたと分析した。ユン・ヨジョンは授賞式後の記者懇談会で「人を人種で分類したり、分けることは良くないと思います。虹のようにすべての色を組み合わせてより美しくしていかなければなりません」とし、「私たちは皆、暖かい心を持った平等な人間です。互いを理解し、包容しなければなりません」と述べた。ユン・ヨジョンの受賞が人種・国家・言語の境界と壁を越え、世界の人々が互いの気持ちをもっと理解できるようにする意味ある一歩になることを願う。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/992681.html韓国語原文入力:2021-04-26 18:39
訳M.S

関連記事