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[社説]災い招く「AI軍拡競争」に反対する

登録:2021-03-03 01:48 修正:2021-03-03 07:02
殺人ロボットを扱った映画『ターミネーター:新起動/ジェニシス』の1シーン。パラマウント・ピクチャーズ提供//ハンギョレ新聞社

 米国政府の諮問機関である「人工知能(AI)に関する国家安保委員会」は1日、「米国と同盟国は、AIで作動する自律型兵器システムに対する世界的な禁止要求を拒否すべきだ」とする報告書をジョー・バイデン大統領と米国議会に提出した。人間の操作なしに自ら人を殺せる「キラーロボット(殺人ロボット)」に対する懸念が全世界的に大きい中、「中国脅威論」を大義名分としてAI兵器の開発と軍拡競争を正当化しようとする試みには、断固反対する。

 同委員会が全会一致で可決した報告書は、AIで作動する兵器が決定にかかる時間を縮め、人間が迅速になしえない軍事的対応を可能にし、米国が軍事的優位を維持するために必要不可欠だと主張する。「設計ミスによるAIシステムは戦争のリスクを高める」ことは認めながらも、「AIを用いずにAI能力を持つ敵を防ぐことは災厄」と主張する。750ページにのぼる膨大な報告書のかなりの部分が、AIで世界トップになろうとしている中国の野望をどのように阻止するかに焦点が当てられている。中国に対する米国の軍事的優位を維持するために、大規模な予算をAI開発と半導体生産能力の強化に投資することが核となっている。

 遠隔で操縦するドローンを用いた攻撃が普遍化したのに続き、各国政府は、人間の判断や操作に頼らず、自ら判断して攻撃するAI兵器の開発に乗り出している。「殺人ロボット」と呼ばれる「自律型殺傷武器システム(LAWS)」の開発に参加する先端企業は莫大な収益を上げている。今回の報告書を作成した委員会にも、委員長であるグーグルの元最高経営責任者エリック・シュミットをはじめ、アマゾンやマイクロソフト、オラクルなど、米国防総省から巨額のAI開発事業を受注してきた企業経営者らが参加している。

 これまで全世界の科学者と市民はAI兵器開発の危険性を警告し、これを規制するために力を注いできた。2013年にはAI兵器全面禁止を目指す国際的な非政府組織「キラーロボット禁止キャンペーン」が発足し、2015年には物理学者スティーブン・ホーキング、アップル共同設立者スティーブ・ウォズニアック、テスラ最高経営責任者イーロン・マスクなど、1000人あまりがAI軍拡競争の危険性を警告する書簡に署名している。2018年には国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、殺人ロボットを国際法で禁止すべきだと訴えている。同じ年、韓国科学技術院(KAIST)とハンファシステムによるAI兵器の研究に抗議し、外国のロボット学者50人がKAISTとの共同研究のボイコットを宣言してもいる。

 米国や中国などの大国が、専門家や市民の懸念に背を向け、人類を災厄に陥れる危険性の高いAI軍拡競争へと突き進む状況を、国際社会は阻止しなければならない。今や「機械が人を殺す時代」の倫理的・法的責任を明確にするための国際的規範を作らねばならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/985127.html韓国語原文入力:2021-03-02 18:16
訳D.K

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