本文に移動

[寄稿]バイデン米次期大統領は欧州にとって何を意味するのか

登録:2020-11-23 05:11 修正:2020-11-23 09:35

 世界の他の地域と同様、欧州も今回の米大統領選挙の「ドラマ」に大きな関心を寄せた。欧州の人々はテレビとスマートフォンにしがみついたまま、民主党のジョー・バイデン候補がいくつかの州で終盤に逆転し、選挙人団の過半数を確保したという知らせを待った。米国の選挙制度は独特で、全体の得票数が少ない人がホワイトハウスの主人になることもあるが、今回はそのような歴史は繰り返されなかった。バイデンとカマラ・ハリスはゴールした。

 トランプ政権と欧州は公然たる緊張関係にあった。ドイツのアンゲラ・メルケル首相のトランプ大統領に対する憂慮はよく知られている。最近の新型コロナウイルス感染症大流行の渦中にあっても、メルケル首相は外交の世界には似つかわしくない率直さで「ポピュリズムと基本的真実を否定したことの限界が赤裸々にあらわになっている」と述べている。

 欧州は、新しいドリームチームのバイデン-ハリスとともに、以前の正常な状態に戻ることを希望している。欧州の指導者たちは、新しいホワイトハウスの主人に何を期待できるだろうか。

 英国のボリス・ジョンソン首相は、「英米貿易協定」をトランプ大統領に承認してもらうことを待ち望んで、トランプとの緊密さを追求した。欧州連合(EU)脱退後、英国は切実に貿易協定を望んでいた。しかし、トランプ政権に対する英国の魅力攻勢は結局バイデンに向き合うことになった。バイデンはかつてジョンソン首相をトランプの「肉体的、精神的複製人間」と表現している。

 さらに重要なことは、バイデンは英国のEU離脱(ブレグジット)が英国と米国の利益において歴史的失敗だったという見解を強く持っているということだ。アイルランドの血統を誇るバイデンは、ジョンソン首相のブレグジット政策が北アイルランドとアイルランドの間に厳格な国境管理をもたらしうると懸念している。アイルランドに平和をもたらした1998年の「聖金曜日合意」に対するこのような裏切りは―バイデンと彼の民主党の同僚たちがこの上なく明確に述べた警告からすると―英米貿易協定をさらに不可能にすると思われる。だから当面は、英国政府は米国の新政権から大きな恩恵を受けられないだろう。

 他の欧州首脳たちは、ブレグジットのような負担なしに新しいホワイトハウスとの関係を再開することができる。メルケル首相と他の欧州指導者たちは、コロナ禍の解決に向けて米国の新大統領と協力することを心から望んでおり、米国が世界保健機関(WHO)に復帰することを期待している。

 トランプのWHO脱退決定を覆すことは、多国間主義に背を向け、NATO(北大西洋条約機構)の欧州側パートナーとの関係を緊張させたことを強く批判するものと見ることができる。もちろんバイデンが欧州諸国に防衛費増額(各国の国内総生産の2%充足)を迫ることを止めるとは期待できないが、防衛費支出はバイデンの主な関心事とはならないだろう。

 欧州はバイデンが気候変動との戦いに再び加わることを期待している。バイデンはトランプ大統領のパリ協定からの脱退決定を覆すと誓った。来年、スコットランドのグラスゴーで開かれる国連気候変動枠組条約の締約国会議は、気候変動の重要性を知る米国の新大統領と共に、新たなモメンタムとなりうる。

 貿易政策でも新たなアプローチが必要だ。欧州の指導者たちは、自国の緊急事態を優先する米国の新大統領を発見するかもしれない。バイデンはトランプ政権が課した特定の関税をなくし、冷え込んだ関係を解くための「オリーブの枝」(和解への手招き)を提案すると同時に、コロナ禍で危機に瀕する米国人の生計を保護しなければならないという課題に直面している。彼は「米国優先主義」ではないが、「バイ(Buy)アメリカン」というスローガンで選挙運動を行い、国外に雇用を移す米国企業に不利益を与えると述べている。どこかで聞いた覚えはないだろうか。

 バイデンとともに米国は、安堵させてくれる信頼できる友人となるだろう。しかし現実的である必要がある。トランプは消えても、バイデン時代にもトランプに投票した7000万の米国人は消えない。米国の分裂は、バイデン-ハリス政権にとって大きな課題となるだろうし、他国にも影響を及ぼすだろう。

//ハンギョレ新聞社

ティモ・フレッケンシュタイン|ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス社会政策学科准教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/970962.html韓国語原文入力:2020-11-22 16:08
訳D.K

関連記事