本文に移動

[寄稿]死ねないから生きる人々と企業家の死

登録:2020-10-28 02:08 修正:2020-10-28 08:27

 20代以降、私は普段、午前2時以降に寝ている。文章は午前3時から4時にかけて最も多く書いてきた。今、この原稿も午前3時半に書いている。夜間労働の問題から始まり、低賃金の長時間労働に従事する脆弱階層の性別や年齢の統計を当たり、コロナ禍開始以降の雇用動向などを調査し、これから文を書こうと思って机の前に座った。ひとまず、夜間労働に関する研究は、夜間労働は発ガン物質グループ2に相当し、少なくとも慢性的な睡眠の困難を引き起こすと述べている。人間はなるべく夜に寝た方がいい。研究結果からも証明されており、経験的にも確信している。

 コロナ禍以降、雇用そのものが減っている状況においても、夜間長時間勤務をせねばならない場所の労力はいつも不足している。それだけ大変だからだ。人間を使い捨てにしても資本は気にもとめない。機械を止めずに人間を投入し続けることで最大値の利潤を上げるのに、24時間労働ほど都合のよいものはないからだ。

 2011年に自動車製造業で働くユソン企業の労働者たちが「我々はふくろうではない」とのスローガンを掲げて闘い、夜間労働の問題を世論化するまで、長時間労働が韓国社会で問題になったことはなかった。韓国人は10代の時に10時間以上勉強し、20代からは10時間以上働く。2014年、経済協力開発機構(OECD)の国別比較で、韓国は労働時間でメキシコを抜き、世界トップに立った。年間2285時間、1日平均で9~10時間は働いているということだ。シンガポールでは韓国人について「ビシッと着こなしてとても長く働く人たち」というのだという話を聞いたことがある。なぜせっかく買い物に来たのに同じような出勤用の服を選ぶのかと聞いたら、「会社に行く時以外は着る時間がない」と答えたという話も話題になったという。

 最近の一番良い“成功を祈る言葉”は、「生きている間は、仕事は少なくして、たくさん稼いでください」だ。長く働いて、少なく稼ぐ社会が作り出した風景だ。

 韓国労働研究院のイ・ジョンヒ研究委員は、夜間労働を利潤追求型夜間労働と公共サービス型夜間労働に分類し、前者は最大限制限して規制し、後者は人材を拡充して昼間交代制などの適切な交代制度により最大限保護して支援すべきだと提案する。このような提案に最も激しく反対してきたのは関連企業だった。このような規制が結局は企業を倒産させ、雇用をなくしてしまったというのだ。しかし、そもそも大手スーパーマーケットが最高の営業利益を記録したのは「人間を取り換えながら」利潤を最大化する方式をとった時だった。2008年に米国発の経済危機が襲ったにも関わらず、大手スーパーは2009年から攻撃的な365日24時間営業を開始し、成長を続けた。2012年に流通産業発展法が施行されたことで月2回の休業が義務付けられ、午前0時から午前10時までの営業時間が制限されたことが、成長の勢いを削いだといわれている。影響がなくはないだろうが、当時、世界的に大手スーパー各社はソーシャルコマースとの競争で劣勢に立たされつつあった。経営危機に直面した大手スーパーは、無人セルフ計算機を積極的に導入し、その結果、スーパーのレジ係の女性労働者がまず消えた。彼女たちはどこへ行き、今はどのような状況に置かれているのだろうか。大手スーパーの構造調整後も、50代女性の経済活動への参加率は増加し続けたが、指標を見れば、宿泊業や飲食店、療養保護士などの保健福祉サービス業などに就職したとみられる。主に対面型雇用、すなわち新型コロナで最も直接的な打撃を受けた業種だ。非対面型の雇用も同様に、コールセンターなどの「室内密集型」勤務形態であり、このような場所は集団感染に非常に脆弱であることがあらわになった。

 2020年上半期を分析した「OECD雇用展望レポート」によると、低所得の非正規労働者であればあるほど在宅勤務が難しく、失業の可能性が高く、今後数カ月間は収入の見通しが悲観的だ。さらに、女性はコロナ時代に男性より無給労働に平均して2時間多く使用されていることが明らかとなっている。今年9月の韓国の雇用動向をみると、女性就業者数の減少幅は男性の3倍だった。性別格差が示す現実は次のとおりだ。配達、宅配、運輸労働などに従事する人たちは主に20代と55歳以上の男性労働者だ。彼らは死ぬ直前まで働き、実際に過労死している。女性労働者たちは感染症の危険性の高い場所で働いたり、働き口が消えたり、無賃金で働いており、生存の崖っぷちに立たされている。イ・ゴンヒ氏の死亡を哀悼する波の中で、死ねないから生きている人々についての文章をぜひ書きたかった。紙面が少ないのがとりわけ残念だ。

//ハンギョレ新聞社

クォン・キム・ヒョニョン|女性学研究者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/967443.html韓国語原文入力:2020-10-27 17:35
訳D.K

関連記事