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[キル・ユンヒョンの新冷戦韓日戦2]安倍-文、和解できない二つの情念の衝突

登録:2020-09-30 11:43 修正:2021-01-28 08:50
北朝鮮の核の脅威による韓日の「奇妙な蜜月」は、2017年12月に入って破綻に至る。まず、日本が懸念していた韓国の「日本軍『慰安婦』TF(タスクフォース)」の結論が12月27日に公開された。TFは報告書で、12・28合意について「被害者の意見を反映していない政治的合意であり、日本に一方的に有利な不均衡な合意だった」と結論付けた。
文在寅大統領が、政権につく前の2017年1月、釜山東区の日本領事館の前にある「平和の少女像」を訪れ少女像の手を握っている。文大統領は大統領選挙期間中に出した本『運命から希望へ』で、日本軍「慰安婦」問題について「この問題を含めた歴史問題は、我々としてはとにかく継続的に日本に要求しなければならない内容」と述べた=釜山/聯合ニュース

 日本軍「慰安婦」問題解決に向けた2015年末の12・28合意が公開された後、日本の市民社会の立場は鋭く二つに分かれた。一群の学者や活動家らは韓国の韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協、現正義記憶連帯)の主張に呼応し、「白紙撤回論」を掲げたのに対し、東京大学の和田春樹名誉教授などは日本政府の追加措置を通じて合意を忠実に進めようという「補完論」で対抗した。彼らは日本政府が被害者に「謝罪の手紙」など追加措置を取るべきだと要求したが、安倍晋三首相にはそのような意思はまるでなかった。安倍首相は2015年8月、敗戦(終戦)70周年を迎えて発表した「安倍談話」で「子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と述べた。2016年10月初めには、謝罪の手紙を送ってほしいという野党議員の質疑に「毛頭考えていない」と冷ややかに反応した。

 「昭和の妖怪」と呼ばれていた岸信介の孫で1954年に生まれた安倍首相が、戦後最長寿の首相になることができたのは、朝鮮半島と日本列島の間で発生した「二つの悲劇」である慰安婦問題と日本人拉致問題に対する強硬な態度のためだった。この二つの問題は、安倍首相が1993年に初めて政界に進出した後、「右翼の希望」として注目される政治的原点だった。韓国人がみるとき、12・28合意は朴槿恵(パク・クネ)外交の無能さを象徴する「屈辱合意」だったが、安倍首相には半世紀以上日本を苦しめた韓日歴史問題を総決算し、韓国を韓米日3カ国同盟の枠組みの中に引き入れるために下した「難しい決断」だった。安倍首相は12・28合意を通じて慰安婦問題に対する日本政府の責任を認め、その延長線上で、政府予算で10億円を出した(これは村山・鳩山政権もできなかったことだ)。この決定をめぐり、日本の右翼内部では深刻な葛藤が続いた。安倍首相はこの対立を収拾できるのは自分だけだと思っていたし、だからこそ合意直後の2016年1月、慰安婦問題は「自分の手で必ず解決しなければならないと思った」と言うことができた。

 しかし、韓国人が安倍首相の「深い情念」を理解するのは難しいことだった。12・28合意は2016年秋に始まったろうそく集会によって事実上否定された。3年後に正義記憶連帯に対する厳しい攻撃に出ることになるイ・ヨンスさんは、演壇に立って「新しい大統領に変わり、大韓民国をしっかり守ってくださるようひざまずいて祈る」と話した。

 和田名誉教授は2016年末、ハンギョレのインタビューで、ろうそく集会に対する自身の微妙な感想を吐露した。「韓国のろうそく集会を見て多くの日本人が感銘を受け、敬意を表している。この運動の延長線上で新しい大統領が誕生する。新しい大統領が12・28合意をなくせば、韓国のとてつもない国民的な力が日本に向かうように見えることになる。新しい大統領は安定して地域を発展させる方向で周辺国との関係を推進すべきだ」

 しかし、1953年に「興南(フンナム)の避難民」の息子として生まれ、ろうそく集会の念願を背負ってトップの座についた文在寅(ムン・ジェイン)大統領にも、「歴史を正しく立てなければならない」という沸き立つ情念があった。文大統領は共に民主党代表時代の2015年12月、「(慰安婦)合意は国民の権利を放棄する条約や協約に当たるため、国会の同意を得なければならないが、同意がなかったので無効であることを宣言する」と述べ、大統領選公約集には「再交渉などを通じて被害者が認め国民が同意できる水準の合意を導出」(234ページ)するつもりだと明らかにしている。

 当初からぎくしゃくする運命だった両首脳が初めて接触したのは、大統領選挙翌日の2017年5月11日の電話会談を通じてだった。この結果を伝える日本外務省の文書からは、妙な切迫さが感じられる。安倍首相は文大統領に「韓国は日本と『戦略的利害』を共有する重要な隣国だ。日韓関係は長い間、両国の関係者が努力を積み上げて構築してきた。文大統領とともに未来志向的な日韓関係を構築したい」と述べた。12・28合意で歴史問題を収拾し、友好関係を築いていこうという提案だった。

 それに対する文大統領の回答は、ユン・ヨンチャン大統領府広報首席(当時)のブリーフィングで確認できる。文大統領は12・28合意の履行を要請する安倍首相に「韓国国民の大半が情緒的に合意を受け入れることができないのが現実だ。そうした国民の情緒と現実を認めながら、双方が共同で努力しよう」と答えた。安倍首相が韓国の「合意履行」を強調したのに比べ、文大統領は韓日の「共同の努力」を強調したのだ。「韓国が合意を守らなければならない」という日本と、「両国共同の努力(すなわち日本の追加措置)が必要だ」という韓国との隔たりは、その後3年余りの時間がたった現在まで“1ミリも”狭まっていない。

 しかし、2017年の韓日関係はそれなりに「管理」されていた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は2017年の新年の辞で「大陸間弾道ロケットの試験発射準備が最終段階」に達したと明らかにし、その年の晩秋まで弾道ミサイルの発射を繰り返し、核実験を強行したからだ。5月には中距離弾道ミサイル(IRBM)火星-12型、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)北極星-2を発射しており、7月には初めて大陸間弾道ミサイル(ICBM)火星-14型を打ち上げた。そのうち、8月と9月に打ち上げた火星-12型2発が日本の本州と北海道の上空を飛び、西太平洋に落ちた。その度に日本全国に「Jアラート」(全国即時警報システム)が発動された。驚いた日本は怒りを抑えられなかった。北朝鮮は9月3日には6回目の核実験を強行し、11月29日にはワシントンなどを直接攻撃できる火星-15型の打ち上げに成功する。

 その度に韓日首脳は電話会談を通じて連帯を確認し、韓日、韓米日3カ国首脳会談を開き、北朝鮮を牽制する強力なメッセージを投げた。2017年5月から同年末までの半年余りの間、韓日首脳は主要20カ国・地域(G20)首脳会議などを通じて3回直接会い、9回電話会談を行った。このような疎通の機会ごとに、安倍首相は「日韓の懸案(慰安婦問題)を適切に管理していくのが重要だ」と話し、7月末、韓国外交部傘下に設置された「韓日日本軍慰安婦被害者問題の合意検討タスクフォース(以下TF)を牽制した。しかし、9月3日の北朝鮮の6回目の核実験で危機が最高潮に達すると、4日後の7日の電話会談では「先月は3回も電話会談を行い、北朝鮮の核実験後の4日にも電話会談を行うなど、(両国の)首脳同士の意見交換が可能な関係が構築されうれしく思う」と述べた。日本では「反日」と言われている文大統領が日本の感じる安保脅威に共感し、対北朝鮮制裁に賛同する様子を見せたため、感謝の意を伝えたのだ。目前に迫った北朝鮮の核とミサイル脅威が、12・28合意をめぐる両国間の「隔たり」を覆い隠した状況だった。

 しかし、北朝鮮の核問題を見つめる韓日の視線には、深淵な「見解の差」が潜んでいた。通話の度に北朝鮮に対する軍事・経済的圧迫を最大値に引き上げなければならないと言う安倍首相に、文大統領は「制裁と圧迫が目標ではない」と繰り返し意見の違いを示した。文大統領は6月12日、首相の特使として大統領府を訪問した二階俊博自民党幹事長には「北朝鮮の完全な核廃棄のため、より強い圧迫と制裁が必要だという安倍首相の言葉に共感する」としながらも「北朝鮮を対話のテーブルに引き出してこそ、完全な核廃棄に至ることができる。北朝鮮が核を放棄すればともに助けることができるというメッセージを伝える必要がある」と述べた。

 北朝鮮の核の脅威による韓日の「奇妙な蜜月」は、12月に入って破綻に至る。まず、日本が懸念していたTFの結論が12月27日公開された。TFは報告書で12・28合意について「被害者の意見を反映していない政治的合意であり、日本に一方的に有利な不均衡な合意だった」と結論付けた。文大統領は翌日、「手続き的にも内容的にも重大な欠陷があったことが確認された。この合意で慰安婦問題が解決できないという点を改めて明確にする」と宣言した。日本は「両国の懸案を適切に管理していこう」という安倍首相の度重なるメッセージが、文大統領によって簡単に無視されたと受けとめた。

 実際、それよりもっと本質的な衝撃があった。文大統領は同月19日、米NBC放送のインタビューで、2018年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪期間中、韓米合同軍事演習の延期を米国に提案したことを明らかにした。歴史問題では難航しているが、北朝鮮の核とミサイル脅威に対しては韓日が「戦略的利害」を共有する隣国ではなかったのか。韓国の「戦線離脱」でパニックになった日本では、見せしめのためにも開幕式参加をボイコットすべきだという強硬な世論が沸き起こり始める。(続)

//ハンギョレ新聞社

キル・ユンヒョン|統一外交チーム記者。大学で政治外交学を専攻。駆け出し記者時代から強制動員の被害問題と韓日関係に関心を持ち、多くの記事を書いてきた。2013年秋から2017年春までハンギョレ東京特派員を務め、安倍政権が推進してきた様々な政策を間近で探った。韓国語著書に『私は朝鮮人カミカゼだ』、『安倍とは何者か』、『26日間の光復』など、訳書に『真実: 私は「捏造記者」ではない」(植村隆著)、『安倍三代』(青木理著)がある。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/955618.html韓国語原文入力:2020-07-30 15:54
訳C.M

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