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[コラム]幼い兄弟の火災事故の悲劇、韓国の不幸はなぜ似ているのか

登録:2020-09-30 03:16 修正:2020-10-03 12:17
今月14日、仁川市弥鄒忽区の住宅で火災が発生し、兄弟が大けがをした/聯合ニュース

 仁川市弥鄒忽区(インチョンシ・ミチュホルグ)の集合住宅で火事が発生し、10歳と8歳の兄弟が重い火傷を負った。有毒ガスを吸って倒れた兄弟は、ソウルのある病院に運ばれた。ガスレンジの近くからはラーメンの袋が発見された。母親は前日から留守だった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の再拡散により、非対面の遠隔授業が行われていたため、兄弟は学校給食の代わりに1日5000ウォン(約452円)がチャージされる児童給食カードで食事を間に合わせなければならなかった。

 兄弟は事故から11日後の25日に目を覚ましたが、完全に意識が戻ったわけではないという。一日も早い回復を願いながらも、これからこの子たちが経験するであろう長い火傷治療の苦しみと後遺症を考えると心が痛む。「大きな痛みなくこの試練を乗り越えられますように」。はかないながらも、秋夕(旧暦8月15日)の月に祈りたい気持ちだ。

 兄弟を襲った悲劇の後、この事件に垂れ込める私たちの共同体の課題を指摘する様々な議論が起こっている。兄弟の母親による放置と虐待の責任を追及するアプローチがその一つだ。子どもたちの学校では、非対面授業期間中にも給食を提供する「ケア教室」が運営されていたが、母親は一度も申請していなかったという。家族が十分に世話できなかった兄弟を社会が包容するシステムは、まともに作動していなかった。

 「非対面」環境の不平等な余波にも注目が集まった。学校ではこの兄弟も他の子どもたちと同じ授業と給食の提供を受けていた。しかし、遠隔授業環境では育児の格差に対する緩衝装置がない。この空白のせいで一部の子どもたちは脱落する。

 個人的には、養育者による放置、非対面の不均質な影響を貫く貧困と断絶の破壊的な力がまずに頭に浮かぶ。今回の事件に接して、チョン・テチュンの歌『私たちの死』を思い浮かべた人も少なくなかっただろう。この曲は、1990年3月にソウル望遠洞(マンウォンドン)で起きた火災を扱った本紙の記事の朗読から始まる。

 「共働きの零細庶民夫婦が部屋の鍵を閉めて仕事に出ていた間に、地下の借家で火災が発生し、部屋の中で遊んでいた幼い子どもたちが外に出られず窒息死した。火事発生時、父親のKさんは京畿道富川市(プチョンシ)の職場で、母親のLさんは合井洞(ハプチョンドン)で家政婦として働いており、子どもたちが部屋から出ないようにドアに外から鍵をかけ、玄関のドアも施錠していた。(…)5歳のヘヨンちゃんは床に伏せたまま、3歳のヨンチョル君は積み重なった服の中に鼻を埋めたまま死亡していた。(…)母親のLさんは警察の調べに対し、『普段、仕事に行く時は、台所に包丁と練炭の火があって危ないし、外に出ると道に迷ったり誘拐されたりすると思って、部屋に鍵をかけるしかなかった』と言いながら涙を流した」

 チョン・テチュンは記事に加えて、息が出来ずに苦しむ子どもたちの思いを歌詞に描いている。

 「爪から血が出るほど部屋の床をかきむしる前に/弟がまず息が詰まって倒れる前に/あの時、母さん、父さんが一緒にいてさえくれたなら/いや、ここが私たちのように貧しい人々も祝福してくれる/そんな国であったなら」

 子どもを預ける安い保育施設があったなら、田舎から上京せず、近くに妻や夫の実家さえあったなら、夫婦が姉弟を置いたまま部屋のドアに外から施錠することはなかっただろう。いや、子どもたちがせめて小学生であったなら…。

 その後も親のいない家や部屋に子どもたちだけが残され、犠牲になる悲劇は繰り返されている。本紙の企画副局長クォン・テホが2017年に書いたコラム「私たちの死、27年後」には、1990年4月にソウル江東区(カンドング)で3歳の子どもが一人で家にいたところ火事になり死亡した事件、2005年10月にソウル・ケナリマウルのビニールハウスの借家で、6歳と4歳の兄弟がパン工場で夜通し働く母親を待っている時に火事となり死亡した事件、2017年10月にソウル九老区(クログ)の集合住宅で一人でいた7歳の子どもが火災により死亡した事件が列挙されている。

 2010年2月、慶尚南道馬山市(マサンシ)の住宅の一間で、母親が飲食店で働いている間に火事が起きた。6歳の双子の兄弟が集中治療室に運ばれたが、有毒ガスを大量に吸い込んでおり、5日後と6日後に死亡した。時として幸福より不幸の方が似通うものだ。仁川の兄弟には、どうか違う運命が宿りますように。

 悲劇の後であっても、教訓を求めて実行する時、世の中は変わる。仁川での事故以降、政界ではさまざまな対策が出ている。ひとり親家族児童養育費支援法案が24日、国会で可決され、共に民主党のホ・ジョンシク議員は児童福祉法改正案を発議した。早急に隙間を埋め、子どもたちを助けることこそ政治の責務だ。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ウォンジェ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/964104.html韓国語原文入力:2020-09-29 17:07
訳D.K

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