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[コラム]米日中ロの強圧外交に対処する姿勢

登録:2019-07-29 07:01 修正:2019-07-29 07:26

 米国のニッキー・ヘイリー元国連大使は、昨年末の退任を控えて行なったインタビューで、米国の外交術の秘密を一つ公開した。「何かを交渉しようとするときは、まず相手の観点で見なければならない。相手が恐れているのは何か、何を利益だと思っているのかなど。そうしてから、彼らから私たちが求めていることを取り、それが彼ら自身の決定によるものだと信じさせなければならない」。米国の国益を徹底して守りながらも、いざリスクを抱える相手国はそれが自国のためだと信じこませるとは、実に魔法の杖ような技術だ。州知事出身で外交は専門外だった彼女にとっても不思議だったのか、彼女はとても誇らしげに話した。しかし、このような手法は覇権的地位を持った米国だけが取れる方式だろう。

 THAAD(高高度防衛ミサイル)の韓国配置も、このような外交術の代表的な事例ではないだろうか。2015年にTHAAD配置が北東アジアで米中間の戦略的バランスを破るという論争が浮上したとき、米国はこれを否定した。その代わり「北朝鮮の核・ミサイルに対応する防御的なもの」と主張した。当時ワシントンで会ったホワイトハウス・国務省の高官たちも、ここから一歩も抜け出なかった。韓国にとって良いことだから受け入れろという無言の圧力だった。韓国には彼らの主張を拡声器で流す親米性向の保守的メディアや政治家らがいたので、彼らの目標達成はいっそう容易だった。結局、「朴槿恵(パク・クネ)大統領府」はこれをあっさり受け入れた。

 代価は大きかった。中国は自国の戦略的利害がかかった問題には情け容赦なかった。THAAD配置の損益計算書を追求すると、韓国が利益はあまり得られないまま、地政学的なリスクばかりが大きくなり、莫大な経済的損失まで被ったものと明らかになった。25日の北朝鮮の新型短距離弾道ミサイルの試験発射の成功で、「北朝鮮の核・ミサイル防御用」といわれていたTHAADは事実上無用の長物となった。このミサイルがTHAADの迎撃を回避できる性能を見せたためだ。すべからく、軍需会社だけが腹を肥やし、安保リスクだけが増えるのが軍備競争の属性だ。

 北東アジアで米中の覇権競争は、日ロが加勢することでそのリスクがさらに大きくなっている状況だ。日本は米国の中国に対する牽制の中核パートナーとして自任し、平和憲法の改正によって「普通の国」になるという目標に向かって疾走している。これを達成しようと韓国を新たな脅威要因に浮上させるため輸出規制という無理筋まで使っている。中ロが前例になく東海で南シナ海まで合同哨戒飛行を行なったのは、2010年頃から浮き彫りになった日米対中ロ間の北東アジア覇権競争が本格化したことを象徴する。

 それならば、大国のこのような強圧外交にどう対応すればいいのか。第一に、主要な国家利益や主権がかかっている問題には、我々の原則を立てて積極的に説得しなければならない。ただし、大国に同じ原則と物差しを適用しなければならない。そうすれば、いくら大国とはいえ非合理的に反発したり無視するのは簡単ではないだろう。シンガポールやスイスのような小国が大国の間で生存する秘法だ。初期に決定を先送りにしてぐずぐずし、怒りを煽ったTHAAD配置は代表的な失敗事例だ。

パク・ヒョン 朝鮮半島国際エディター//ハンギョレ新聞社

 第二に、大国に背を見せてはならない。日本の「誠意ある先の措置」を要求して対立し、2015年に性格も不明な10億円を受け取る条件で慰安婦問題が「最終的、不可逆的」に解決されたということに署名してしまった「12・28合意」がそのケースだ。安倍首相が韓国を見下す契機になったかもしれない。米国のTHAAD配置とこれに対する中国の経済報復措置に対応できなかった点も、韓国政府の弱さを見せた。これと違って、ロシア軍用機の領空侵犯に対する警告射撃は、韓国の断固たる意志を示した行動とみられる。

 第三に、最近、韓日対立の端緒となった強制徴用被害者に対する賠償・補償問題を政府が主導的に出て解決する必要がある。韓国企業と政府が基金を作りまず被害者に支給することで、日本に対する道徳的優位を確保し、日本に求償権を請求できるだろう。中長期的には日朝国交正常化を念頭に置き、北朝鮮と協力することによって、拙速に締結された1965年の韓日協定の改正にも乗り出すべきだ。

パク・ヒョン 新聞コンテンツ部門長・朝鮮半島国際エディター (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/903657.html韓国語原文入力:2019-07-28 19:17
訳M.C

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