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[寄稿]北朝鮮の経済発展と核放棄

登録:2019-06-17 00:10 修正:2019-06-17 07:13
金正恩北朝鮮国務委員長の妹の金与正労働党宣伝煽動部第1副部長(左)が12日午後、板門店の統一閣でチョン・ウイヨン大統領府国家安保室長と挨拶している=統一部提供//ハンギョレ新聞社

 40数年前、中国が文化大革命を終わらせた時、米国は中国が改革・開放に進むことを願った。その底辺には、経済発展で中国の“民主化”を図るという、いわゆる“平和的移行”の期待があった。ところが、中国は驚異的な経済発展を成し遂げながらも、米国が望んだ“民主社会”には進まなかった。米国の一部では、中国が独裁社会としてよみがえると言っている。結局、米国が中国の改革・開放を支持して得た結果が、米国の覇権を脅かす競争国であり、過去への回帰だということだ。同様の論理が北朝鮮にも適用されている。核を持つ北朝鮮の経済発展を支持すれば、虎に翼をつけることになるということだ。

 改革・開放の初期に、米国が中国を物心両面で支持したのは事実だ。米国は経済発展を通じて中国に米国式の民主主義を移植できると信じた。そのような中国が、米国式“民主国家”となるのではなく、日本を追い越し世界2位の経済大国に躍進し、米国は封鎖政策を持ち出して中国を牽制し始めた。オバマ行政府の「アジア回帰戦略」、トランプ行政府の「インド-太平洋戦略」に続き、最近では米中貿易戦争でその極限状態にのぼりつめている。

 それでは、中国の経済発展は経済だけを発展させたのだろうか?1950年代末に数千万人が餓死したという「3年自然災害」、「10年動乱」と呼ばれる文化大革命を振り返ってみれば、中国社会には途方もない変化が起きた。中国の国民は歴史的に今日ほどの豊かさと“民主”、“自由”を享受したことはないだろう。国内総生産(GDP)は、1980年の3015億ドルから昨年には13兆6000億ドルになり、38年間で何と45倍に増加した。それだけ社会、文化、教育、人権のあらゆる分野で天地開闢の変化が伴ったことを物語る。

 北朝鮮は昨年、経済発展を新しい戦略路線として掲げた。路線がすべてを左右する北朝鮮だ。すべての国力が全方向的にこの戦略路線に投入されている。前例のない制裁局面で、すさまじくもがいている。

 北朝鮮が中国のように45倍を超える経済成長を成し遂げるならば、どんな国になるのだろうか?天地開闢に他ならないだろう。その過程で北朝鮮は、単純社会から複雑な社会システムに移行するだろう。社会の変遷が急速になされ、利益構図が分化して、貧富格差が拡大し社会秩序にも変化が起きるだろう。社会的競争が日増しに激しくなり、人材の流動と世代交代がなされるだろう。市場経済の要素が拡張され、価値観が変わり、自我意識が高まるだろう。経済が持続的に発展してこそ、増幅される社会の葛藤を継続的に解いていけるはずだ。そのような北朝鮮は、もはや今日の北朝鮮ではないだろう。その北朝鮮が、例え核を持つ北朝鮮だとしても、その天地開闢の激変は核に対する執着を弱体化させるか断絶させられるに違いない。

 ところが韓米の一部では、核を放棄しない北朝鮮に制裁緩和と経済発展を容認すれば、今よりはるかに大きな脅威となってブーメランになると考えられている。唯一の方法は、最後まで制裁と圧迫で北朝鮮を屈服させることだという。経済発展が途方もない波及効果で北朝鮮を変化させうるということは見逃してしまう。別の見方をすれば、そのような北朝鮮よりもお手上げした北朝鮮の方が見たいということかもしれない。そこにあたかも中国の発展が災難として迫ったかのように、いわゆる中国の経験を反面教師のように登場させる。今日の中国と40余年前の中国、世界はどちらを好むだろうか。

 同じように最大限の制裁と圧迫で北朝鮮の安保不安を増幅させ、北朝鮮を窮地に追いつめ核を放棄させようとすることと、段階別核放棄にともなう制裁緩和と経済発展で北朝鮮の変化を誘導し北朝鮮核問題の解決を推進することのどちらがより有効だろうか。

金景一北京大学教授//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮は、すでに途方もない変化を成し遂げるエネルギーを蓄積している。制裁が解けただけでも爆発的な成長が可能だ。北朝鮮核問題への接近は、北朝鮮の核放棄と制裁緩和、経済発展を段階的に同時に進めて成し遂げるべきではないだろうか。

金景一北京大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/898101.html韓国語原文入力:2019-06-16 19:42
訳J.S

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