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[社説]理念対立の克服を目指しているのに「金元鳳論争」で足を引っ張ってはならない

登録:2019-06-08 05:58 修正:2019-06-08 08:01
文在寅大統領と金正淑夫人をはじめ来賓たちが今月6日、国立ソウル顕忠院で開かれた第64回顕忠日追悼式で、国旗に礼をしている=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が顕忠日(国のために命を捧げた人の忠誠を称える日)追悼式典で、日帝強占期(日本の植民地時代)の独立運動家、若山金元鳳(キム・ウォンボン)に言及したことについて、野党が「分裂と対立の政治だ」として反発している。文大統領は、「保守対進歩の二分法を克服し、愛国で一つになろう」という趣旨を強調するため、植民地支配下の左右合作の代表的な例として、金元鳳の光復軍への合流を挙げたが、野党が「叙勲をめぐる議論」などを引っぱり出し、むしろ理念対立をあおる格好だ。いわゆる「月は見ないで月を指す指だけを見る」枝葉的かつ非理性的な態度と言わざるを得ない。

 ナ・ギョンウォン自由韓国党院内代表は7日「追悼演説が韓国社会を分裂に追い込んでいる。北朝鮮政権の樹立に寄与し、幹部まで務めた金元鳳を賞賛した」と批判した。正しい未来党のソン・ハッキュ代表も「日時と場所が顕忠日と顕忠院だった点で、適切ではなかった」と述べた。自由韓国党のキム・ヨンウ議員は「大韓民国のアイデンティティに反する」と非難した。

 文大統領は演説で、「今我々が享受している独立や民主主義、経済発展には保守と進歩の努力がともに溶け込んでいる」と述べた。保守であれ進歩であれ、あらゆる“愛国”が集って今の大韓民国がある。その一つが金元鳳であり、彼の独立運動の功績は称賛されて当然だ。文大統領は金元鳳のほかにも「ベトナム戦の英雄」チェ・ミョンシン将軍や「ノブレス・オブリージュ」の独立運動家、石洲李相龍(イ・サンリョン)と友堂李会栄(イ・ホェヨン)についても言及した。文大統領が金元鳳に勲章を与えようとしたわけでもない。 左と右を超える愛国と統合を強調しただけだ。「大韓民国のアイデンティティ」を云々して問題視するような事柄ではない。

 これを機に、金元鳳についても積極的に考えなければならない。金元鳳は、植民地支配下のほとんどすべての爆弾攻撃や要人暗殺事件の背後にある独立英雄だ。臨時政府の軍務部長と光復軍副司令官を務めたにもかかわらず、解放後に越北して北朝鮮政権の高官を務めたことで(後に粛清)、叙勲対象から除外された。韓国に残った5人の兄弟のうち、4人は軍警に虐殺され、末の弟は兄たちの無念を晴らそうとして投獄された。

 現行の規定上、金元鳳に叙勲を与えるのは難しいというが、もう時代の変化に合わせて勲章を与えられない理由はない。直ちに施行するのが難しいなら、適当な時期を選んで、叙勲を積極的に検討するべきだ。叙勲はできなくても、彼の独立運動を称える発言を問題視すべきではない。左右を超える愛国者として、金元鳳を称えることさえも反発し、アイデンティティ云々するのは、保守の器の小ささを示すだけだ。保守ももはや古い理念の物差しを捨てるべき時期だ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/897062.html韓国語原文入力:2019-06-07 18:55
訳H.J

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