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[特派員コラム]ハノイの「ノー・ディール」は予想できませんでしたが

登録:2019-03-15 08:10 修正:2019-03-15 10:17
北朝鮮の金正恩国務委員長とドナルド・トランプ米大統領が2月28日、ハノイのメトロポールホテルで単独首脳会談を開いている//ハンギョレ新聞社

 第2回朝米首脳会談を取材するため、ベトナムのハノイに行ってきた記者たちが、口をそろえて言うことがいくつかある。

 第一は、多くの人のように「ビッグ・ディールかスモール・ディールは考えたが、ノー・ディールは想像できなかった」ということだ。昨年シンガポールで開かれた初の首脳会談から約8カ月後、それぞれ66時間の列車の長旅と地球を半周する飛行の末、向かい合った二人が「今日は駄目かもしれない」と立ち上がるとは。「合意文を発表せず、会談がまもなく終わる」という首脳会談のニュースが世界の取材陣が集まった国際メディアセンターに伝わった後、現場は文字通りパニックに陥った。同僚の記者は、「朝鮮半島の視界がゼロではなく、私の視界がゼロだ」と嘆いた。30年近く解決されなかった北朝鮮の核問題の複雑さと、ドナルド・トランプ大統領の予測できなさをうっかり忘れ、「それでも何か出るだろう」と思い込んでいた。一部記者同士で小さな“反省会”が開かれた。

 第二に、首脳会談の決裂後に会談場所のメトロポールホテルを訪れた記者がかなり多かった点だ。昨年6月、シンガポールで開かれた第1回朝米首脳会談の取材の際は、会談後、カペラホテルに入りたいとは思わなかった。しかし、ハノイではむしろ空しい気持ちがメトロポールホテルへと足を運ばせた。会談翌日の午後、両首脳が昼食会を行う予定だった庭園では、結婚式の準備が進められていた。誰かは約束もなく別れた“決裂の場所”で、誰かが新たなスタートを切るわけだ。両首脳にとっても2回目の会談が終りではないだろう。

 「会談が結論なく終わったらから、静かだろうと思っていたが、そうでもない」というのもまた、記者たちの共通の感想だ。朝米は会談場を去った後も、合意が見送られた原因をめぐって世論戦が繰り広げられ、商業用の衛星写真を根拠に「北朝鮮が衛星やミサイルを発射しそうだ」という推測報道もさらに緊張を高めた。米国は連日「段階的非核化」ではなく「一括妥結」を主張している。いずれも対話を終わらせたくはないという意味だ。

 ハノイの首脳会談場で、正確に何が起こったのか、その前にワシントンと平壌(ピョンヤン)の執務室で、どのような論議があったのかは、後日、誰かの回顧録を通じて全貌が明らかになるかもしれない。しかし、ハノイでの“ノー・ディール”でいくつかは明確になった。

 北朝鮮は寧辺(ヨンビョン)の核施設を廃棄する見返りとして、北朝鮮に対する主な制裁の解除を望んでいるが、米国は寧辺だけでなく、その他の核施設や大量破壊兵器(WMD)の廃棄まで実行しなければ、制裁を解除できないという立場をより鮮明にした。トランプ大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と直接会って非核化の意志を疑うようになった可能性が高く、北朝鮮制裁の効果も肌で感じたのだろう。それだけ「一括妥結」に対するトランプ大統領の確信も固まったようだ。「バッド・ディールよりはノー・ディールの方がまし」という与野党共通の評価を確認したため、現在の態度を固守しようとする誘惑を強く感じるだろう。

ファン・ジュンボム・ワシントン特派員//ハンギョレ新聞社

 大胆な合意に達するには、信頼をさらに築かなければならないという点も明らかになった。北朝鮮が数十年間力を入れてきた核計画を、トランプ大統領だけを信じて一瞬にしてすべて放棄せよというのは非現実的な要求だ。制裁を解除すれば、他の兵器庫に金が流れかねないという米国の憂慮も、現在の朝米の信頼水準からすると妥当かもしれない。逆説的に、今回のノー・ディールによって、両者がより頻繁に会い、深い対話をしなければならない必要性を痛感させられた。

 幸い、朝米はまだ対話の扉を開いている。互いに落ち着きを取り戻し、新たな値段に基づく取引に備える時だ。米国が先に歩み寄りを見せる可能性は低いかもしれないが、「ゼロか100か」のアプローチでは膠着を解消できないという声もあがっている。両首脳が付けた値札が、今より柔軟なものになる日が訪れると予想する。

ワシントン/ファン・ジュンボム特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/885973.html韓国語原文入力:2019-03-14 19:39
訳H.J

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